【期末テスト】満点？留年？？早春、四日間の死線＜物語編＞｜リアクション

【期末テスト】満点？留年？？早春、四日間の死線＜物語編＞

〇夜食の買い物で

　テスト前のある日の夜、鴻上彰尋は買い物に出かけようとして思いついた。
（今回は夜食の準備をしようかな）
　年度末の試験だから、いつも以上に気合を入れたい。
（今回のテスト勉強は時間をかけたいから、夜食を取りながら頑張ろう）
　母と兄が働いているので家事を引き受けている彰尋は、普段から食事用の買い物に行くのが習慣になっている。
　シーサイドタウンの行きつけのスーパーで、彰尋は何を買おうか考える。
　夜食用に、ココアとナッツにチョコなんかもあるといいだろうか。
（おかゆやみそ汁、おにぎりなんかは夕飯の残りを使ってもいいし家に具材があるからそんなに買い足さなくてもいいかもしれない。あ、でも味噌玉の為の乾燥具材を買ってもいいかもな……）
　味噌玉とは、好みの具材と味噌を合わせて玉状に丸めたもので、お湯を注ぐだけで忙しいときでも簡単に味噌汁が作れるものだ。
　そんな風に家にある食材を思い出しながらあれこれ買い物をしていると。
「彰尋くん？」
　聞き覚えのある声に顔を上げれば、七夜あおいが立っていた。
「あおいさん。こんばんは」
　桜花寮からも近いこの店では、以前にも彼女と遭遇したことがある。
「お弁当用の買い物かな？」
　顔が緩んでいないか気になりながら、彰尋はあおいに話しかけた。
「うん、テスト勉強しなきゃと思ってるんだけど、ちょっとやる気がわかなくて気分転換に……」
「ああ……わかる気がする。苦手な教科とかどうしてもエンジンがかからなくて、つい他のことを始めたりしちゃうよね」
　彰尋は頷いた。
「そうだよね。彰尋くんはご飯のお買い物？」
「うん、普段の買い出しの他にテスト勉強の夜食の買い出しもしようかと思って」
「夜食？　いいね！」
　あおいが興味を示したので、彰尋は夜食を勧めてみることにした。
「あおいさんも、もしがっつり勉強したいっていう日には夜食とまではいかなくてもココアが温まってお供にいいんじゃないかな」　
「遅くまで勉強してるとお腹すくよね。夜遅く食べると太るってわかってはいるけど……」
「おにぎりとかお味噌汁がいいんじゃないかな。カロリーが気になるなら、おかゆなんかでもいいかもね。寮で用意するならレトルトのほうがいいのかな？」「そうだね。ありがとう、参考になった。彰尋くんはテスト勉強は順調？」
「うーん、年度末だから気合を入れて頑張りたいと思ってるよ。これから本腰を入れる感じだけど。あおいさんは？」
「うん、同じだね。私も頑張らなきゃと思ってる」
　笑顔を向けられ、心が温かくなる。
「長い時間勉強したい日もあるだろうから、頑張りたい時によかったら夜食を試してみるといいよ」
「うん、そうする。それじゃまたね」
　おかげでやる気が湧いてきた気がする。
　きっと今夜は頑張れるだろう。

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