エブリデイ☆パンプキンナイト！｜リアクション

エブリデイ☆パンプキンナイト！

★ケンカ、そしてパニック！？

　カフェを出てから、程なくして広場に辿り着いたレオンとあやめ。
　野次馬の群れを掻き分けるようにして、レオンは騒ぎの元凶の元へと進む。
　そのすぐあとに、恐々と身体を小さくしながらも、あやめも続いた。
　そして。

「……そうかもしれねえとは思ったが、やっぱりケンカか」
「……そうみたい、ですね……」

　騒ぎの中心にいたのは、互いに掴み掛らんばかりの勢いで怒鳴り合っているゴーレムと狼男。
　アルコールの強い臭いに、あやめは鼻と口元を手で覆った。

「まだ昼前なのに酔っ払いか。……おい、大丈夫か、えっと……」
「その……あやめと、言います。平気です、すみません……」
「あやめだな。俺はレオンだ。すぐ終わらせるから、無理しないで待ってろ」

　あやめの顔を一瞥してそう告げ、レオンは、危なっかしい２人組の方へと歩を進める。

「おっさんたち、ケンカはやめ……」

　言葉での静止を試みようとするも、頭に血が上った２人には、レオンの声は届かず。
　返事の代わりに、ゴーレムが勢いに任せて振り回した手が、レオンの頬を掠めた。
　血の赤が一筋頬を走り、途端――プツリ、レオンの頭の中に怒りが弾ける。

「……いい加減に……しろぉ！」

　父の形見たる大鎌をくるりと回して、石畳を軽く突く。
　見る間に、地面からうねうねと生えてきた蔦が、酔っ払い達に絡みつき、その動きを奪った。

「ひっ、な、何だ！？」
「んな騒がなくても、魔法なんて別に珍しくもねえだろ。おい、少しは頭が冷えたか」

　飲むのはいいけどほどほどにしろ！　と叱りつければ、「すいません……」と項垂れる男達。
　すっかり酔いも冷めたらしく、術を解いてやると、２人は揃って、レオンに何度も頭を下げた。

「ったく……あやめ。具合はもう平気か？」
「は、はい……。……レオンさん、その、怪我は……？」
「ん？　ああ、掠っただけだ。そんな顔しなくたって、本当に大したことねえよ」

　あやめが、ほう、と息を吐いた、その刹那。

　――ぴーぴー！　ぴりりりり！

　笛の音が、うるさいほど高らかに辺りに響き、野次馬達が、波が引くように広場から離れていく。

「この笛の音は……」

　げっ、という顔をレオンがした時には、ぴりりはもう、自慢の羽で広場に到着していた、

「レオンさん、“また”揉め事ですか！？」
「違うっ！　俺は、ケンカを仲裁しただけで……」

　同意を求めようと辺りを見回すが、喧嘩をしていた男達も、既に逃げ遂せたあとだった。

「くそっ、あいつら……」
「パンプキンナイトの平和を乱す者は、このぴりりが許さないのです！」
「だから、“今回も”俺じゃねえんだって！」

　レオンとぴりりが言い合う中、あやめはそっと、やっとぴりりに追いついたシスター萌々子に近付いた。
　そして、勇気を尽くして声をかける。

「……あ、あの……。……その十字架、『のの教』の礼拝堂の管理者の方、ですよね……？」
「へっ？」
「ひっ」
「あ、ごめんなさい！　少し、驚いてしまって」
「は、外れ、でしたか……？　……すみません……」
「いえ、大正解ですよ。これを管理者の目印だと知っている人に会うのは、久しぶりですが」
「その……以前、劇の脚本を書いた時に……『のの教』について調べたので……」

　劇の脚本？　と、萌々子の瞳が煌めく。

「観ましたよ、その劇！　とても素晴らしかったです！」
「あ、ありがとうございます……？」
「何せ、ローカルでゆるーい宗教なので、劇の題材になったのなんて、私が知る限り初めてで……」

　特に、のの神様関連のシーンは台詞も演出も最高だった……と、熱く語る萌々子。
　頬を紅潮させて、興奮しきり、スラスラと熱弁を振るう萌々子に向かって、

「あ、あの、それで……！」

　と、あやめは、精一杯声を振り絞った。

「『のの教』の教えには、『賑やかなのは素敵だけど、楽しい賑やかが一番！』とあります、よね……？」
「はい、まさにその通りです！」
「……今の状況は、後者ではない、と、思います……。それに彼は、本当にケンカを止めた側で……」
「ああ、その件なら大丈夫ですよ。元々、ぴりりさんが止まらなくなったら、何とかするつもりでした」

　お任せくださいと、あやめにふわりと微笑んで、レオン達の元へと萌々子は進む。

「ぴりりさん、先ずは、レオンさんのお話も聞きましょう……」

　萌々子の穏やかな仲裁の声を耳に、あやめは胸元に手を当て、再び深く息を吐いた。

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エブリデイ☆パンプキンナイト！

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