キャットロードでスタンプラリーin猫の日｜リアクション

キャットロードでスタンプラリーin猫の日

☆招き猫のお誘い
　2月のある日、初瀬川理緒はボケーっとしていた。
　正確にいえば、ここ数日こんな調子である。
　事務所の方も偏差値30以上の大学への進学を頑張って遂げた理緒のために仕事も減らしてくれていた。
　だが、そのことが逆に理緒を炭酸の抜けたサイダーのような日常に貶めている。
「あんなに勉強したのって小学校以来だったもんなぁ……」
　寝巻のままベッドで仰向けに寝そべり、特に目的もなくスマホでファッション雑誌を流し読みしていたら、ディスプレイに大切な人の名前が表示された。
　驚いた理緒は慌てて落としそうになるスマホを両手でつかんで深呼吸をしてから着信に答える。
「もしもし？　理緒ちゃん？　電話、今大丈夫？」
「びっくりしたけど、大丈夫だよ」
　恋人である佐和崎紗月の声を聴き、理緒は少しだけボーっとした意識がクリアになるのを感じた。
「あのね、デートのお誘いになるのかな？　キャットロードでスタンプラリーをやっているから一緒にいかない？　2月22日は空いてる？」
「うん、大丈夫。事務所も仕事を入れてくれてないし」
　カレンダーを確認してから紗月に答えた。
　声を聴いているだけで、心が少し楽になるのがわかる。
「じゃあ、その日は一緒にいこうね。ＨＰをＳＮＳで送っておくからチェックしてね」
「ん、わかった。ありがとう……紗月」
「ううん、じゃあ、2月22日の10時に場所は……」
　デートの説明をしている紗月の言葉を聞きながら、理緒は壁にかかっているカレンダーの22日にハートマークを付けた。　

☆スタンプラリーのはじまり
　2月22日、猫の日を迎えたキャットロードはにぎわっていた。
　スタンプラリーの開始から一週間もたっていればそうだろう、右も左もカップルばかりである。
　バレンタインで付き合い始めた人たちだっているはずだ。
「待たせたな！　オレ彼女いないから安心しろよ♪　実はオレも、一緒に参加したいと思ってたんだ！」
「べ、べつに！　アンタに彼女がいようがいまいが気にしない、しっ！　この間、呼びつけてくれたんだから今度はアタシの番ってだけ！」
　さらりと、一緒に参加したいと思っていたと白石龍樹に言われた飛鳥レイコは真っ赤になって、龍樹の足を蹴った。
「これカップルとかで参加するものじゃないですかね？」
「カップルが参加するもの?　そんなの気にしない気にしない、今は多様性の時代だよ」
　龍樹やアスカの姿を遠目でみていた桜庭円のつぶやきに白真白は勢いで押し切った。
　確かに、よくよく見れば親子や兄弟で参加しているペアもいる。
「目指すはフルコンプだよ! 」
「ま、ゲームのように楽しむのは賛成だね」
　鼻息荒くなりそうな真白の後に続き、円も対象店舗へと向かった。

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