喫茶「セピア」営業日誌：「猫の日」展覧会｜リアクション

喫茶「セピア」営業日誌：「猫の日」展覧会

　大正浪漫な喫茶店に、猫の展示が沢山。その空間は恵御納夏朝の猫グッズのお店『そこにいるねこ』に近しい物があり、ほっこりと胸に温かさを連れてくる。
　（仮想空間とはいえどもお店を持ってるわけだし……僕も猫の月のプチイベントでも考えようかな）
　しかし、今から考えると2月はすぐに終わってしまう。うーんと唸っていると、背後から聞き慣れた声が聞こえてきた。
「恵御納、良かったら相席しないか？」
　知人の声に安堵して振り返ると、そこには卵に猫の顔、お皿に肉球描いた『オムニャイス』を撮っていたのだろう修がいて、猫好きの彼らしいと夏朝は笑みをこぼした。
「僕で良ければ。八神君も写真を展示してるの？」
「いいや、今日はただの客だよ。展示できる写真はいっぱい持ってるけどね」
　ひらひらとスマホをかざすので、夏朝はまるで猫が耳をピンッとたてるように彼のスマホを注視した。
　修はクスクスと笑いながらも夏朝がメニューを見やすいように向かいの席に並べ、一番上には今日の特別メニューを置いた。
「ネコパフェって、白猫と黒猫とキジトラがいるんだ……ねこパンケーキもかわいい」
　目移りしながらも胃と相談してキジトラのネコパフェに決めた夏朝は、苦渋の決断をした後のようにほっと一息ついている。
「それで、さっきは何に悩んでいたんだ？」
「え？」
「俺が声をかける前だよ。何か考え込んでなかった？」
　かわるがわるの猫の誘惑に、少し頭から離れていたようだ。夏朝はぱちぱちと瞬きをして、そうだと自嘲気味に苦笑した。
「ああ、うん……せっかく猫さんの日だから、キャットアイランドのお店でも何かイベントが出来ればと思ったんだけど」
　いくらプチイベントとはいえ、宣伝期間もなく開催するのは盛り上がりに欠けるだろうし、けれども入念に準備をしている時間もない。夏朝は諦めきれない思いを抱えてまた考えこんでしまった。
「猫の月、というなら来月はロシアに猫の日があるし、動物愛護団体が定めたのは8月……それからアメリカは10月に猫の日があるから、年に数回イベントをしてもいいんじゃないか？」
「えっ、猫の日ってそんなにあったの？」
「ヨーロッパは日本と同じ2月みたいだけど、そもそも日本の2月22日も日本語の語呂合わせだしな」
　他に猫の日を制定していた国は、と考え込んだ修に尊敬の眼差しを送りつつ、夏朝はその案ならば定期的にイベントが開催できると喜んだ。
「世界の猫さんの日を知って貰えて、猫さん好きの人と楽しめるイベントがじっくり考えられて……ありがとう八神君！　開催するときは、ぜひ僕の店に遊びに来てね」
「もちろんだよ」
　そうこうしているうちに、キャラメルアイスでできたキジトラのネコパフェが運ばれてきた。パフェの中身は通常時と同じようだが、チョコペンで猫の顔とヒゲが描かれており、耳には三角のチョコ菓子が添えられている。
「わぁあああ……っ！　かわいい！　3匹並べられなかったけど、かわいいっ！」
「3匹並べる気だったのか……」
　はしゃぐ夏朝に、パフェと一緒の写真を撮ろうかと申し出た修は、きらきらとした友人の笑顔をカメラにおさめた。

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