２月の☆ハッピーバースデー｜リアクション

２月の☆ハッピーバースデー

●誕生日プレゼント

　放課後。
　宮祀智瑜は桐島義弘先生に誕生日プレゼントを渡そうと探していた。職員室にはいなかったので、野球部のほうかもしれない。あるいは他の生徒から質問を受けている可能性もある。
　そんなことを考えながら校舎内を歩いていると、先生の声が聞こえた。

「この問題は、この公式で……」

　予想したとおり、教科書を片手に生徒の質問に答えている。
　他の生徒の前だと誕生日プレゼントを受け取ってもらえないかもしれない。智瑜はそれを避けるために、義弘先生が一人になるのを待つ。
　智瑜は義弘先生のズボンが破れてないか、ちらっと確認する。どうやら破れていないようだ。

（最近お尻が破けてないのが残念です……。いつでも縫えるように裁縫道具を持ち歩いてるけど使うことが無くて……先生の苺柄のパンツ可愛かったのに）

　ため息をつく。智瑜は裁縫道具の出番を強く願った。
　しばらく待っていると、生徒は質問が終わったようで義弘先生のもとを離れた。智瑜は先生に近づくと声をかける。

「義弘先生」
「宮祀か」

　義弘先生は智瑜のほうを向いた。

「お誕生日おめでとうございます！」
「ありがとう」
「今年も先生の疲れを癒したいと思ってプレゼントを持ってきました」

　そう言いながら鞄のなかに手を入れる。
　ちなみに去年も同じ理由でおっぱいマウスパッドをプレゼントしている。手首に優しいデザインで、智瑜と同じ大きさのものだ。義弘先生はそのプレゼントを今も持っていると思うが、使っているかは分からない。

「これです」

　智瑜が取り出したのはアイマスクだった。

「ありがとう」

　義弘先生はそう言って、アイマスクを受け取った。

「ただのアイマスクじゃないですよ？」
「そうなのか」
「１０分・２０分・３０分で目覚ましのタイマーを設定できるんです。仮眠をとりたい時にどうぞ。目覚ましは私の声で録音されてるのでばっちり起きれますよ！　なんて言ってるかは聞いてからのお楽しみ」
「そう、か……」

　義弘先生は曖昧に濁すような返事をした。なおも智瑜は話し続ける。

「職員室でタイマー使う時は要注意ですよ。びっくりされちゃいますから。タイマーオフが安心です」

　智瑜はにっこりと微笑んだ。そして最後に念を押した。

「絶対使ってくださいね」
「あ、ああ……。ありがとう」
「どういたしまして」
「じゃあ私はそろそろ職員室に戻る。また明日」
「はい」

　智瑜は義弘先生の姿が見えなくなるまで、その背中を目で追っていた。

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