２月の☆ハッピーバースデー｜リアクション

２月の☆ハッピーバースデー

●特別な日

　鴻上彰尋は自宅で寛いでいた。
　台所では、母と下の双子の弟妹が晩ご飯の支度をしている。今日は彰尋の誕生日ということで、そのための料理を作っている。

（しかし母さんはともかく、２人はちゃんとお手伝いができるんだろうか……）

　こちらから何かしないほうがいいかもしれないと思いつつ、心配なので台所の様子を見ながら、３人が料理している姿を眺めてみる。

（普段は自分が作る側だから、こうして誰かが作っている姿を見るのは久しぶりかもしれない）

　今日のメニューはハンバーグがメインで、あとサラダを作っているようだ。弟妹たちがたどたどしくハンバーグをこねて、それを慣れない手つきで叩いている。

「ハンバーグはこんな感じに……」

　彰尋は慣れた様子で、手にしたハンバーグの種を両手で往復させて空気を抜く。ほどよく成形してテーブルのトレイに置く。

「真ん中が膨らんでくるから少しだけへこませるんだよ」

　それから弟妹たちにゆっくりと自分の動作を見せながら、作り方を教える。一通り伝えてから、彰尋は台所を離れて待つ。祝われる側がずっと作るわけにもいかない。
　食卓に並べられた料理はどれも美味しそうだ。ハンバーグは彰尋の分だけ、他のに比べて大きめのサイズだった。しかしちょっと形が崩れてしまっている。どうやら彰尋が台所を離れた後、弟が彰尋の分を大きく作ろうと張り切ったらしい。ただ生地が大きいと綺麗に焼きあがるのが難しいのか、形を保てなかったようだ。
　弟はしょげてしまって、表情も沈み気味。彰尋はハンバーグをすっと口に運んだ。

「とても美味しいよ。ありがとう」

　そういって弟を慰める。母と妹にも感謝を伝えると、皆で晩ご飯を食べ始める。雑談しながら食事は進み、ハンバーグもサラダもあっという間に食べ終わった。
　ちょうどその頃に兄が帰ってきた。その手には彰尋が好きなケーキ屋の箱があった。箱を開けると、中身はチョコレートのバーズデーケーキだった。彰尋はチョコケーキが好きだから、すごく嬉しくなった。
　兄もそれを知って、このケーキを選んだのだろう。それを切り分けて、全員で楽しむ。そして兄も加わり、会話は弾んだ。あっという間にケーキも食べ終わり、すっかり気持ちが満たされていた。

（特別な日って感じがする）

　そう思っていると、弟妹たちに声を掛けられた。その手にはラッピングされた箱があり、リボンが綺麗に結ばれている。

「お誕生日おめでとう！」

　手渡されたプレゼントを彰尋は受け取った。
　一言断ってから、その中身を確かめようとラッピングを丁寧にはがす。中に入っていたのはエプロンだった。

「エプロン……すごく嬉しいよ。ありがとう」

　今までエプロンは母と共用で使っていたので自分だけのエプロンは持っていなかった。それだけにこのプレゼントは心の底から嬉しかった。

（母さんからは好きなものをって言われたから、ちょっと考えてからあとで欲しいものを伝えようか）

　母と弟妹たちが作ってくれた晩ご飯。兄が買ってきたバースデーケーキ。そして誕生日プレゼント。そのどれもが眩しかった。

（とても幸せな気分だ、祝ってくれたことを感謝しよう）

　彰尋は語りつくせない思いを胸に、家族との時間を過ごした。

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