ウィンター☆ 部活動のお時間です！～文化部編～｜リアクション

ウィンター☆ 部活動のお時間です！～文化部編～

「そういうことなら、家庭科同好会の得意技、あるじゃないですかー？」
　絽紗は、裁縫箱から針と糸を取り出しました。
　飛び出た道具を、縫い付けて動けなくしてみます。
「よし、この調子で……あら？」
　しかし、今度は裁縫道具まで動き出してしまいました。
「待ちなさ～いっ　あ、糸がたりなーい？」
　ふわふわ動き出してしまった糸に慌てつつも。
「私ので、よければー。えいっ！」
　絽紗はろっこん『玉繭の紡ぎ手』を発動しました。
　組んだ絽紗の両手薬指から、しゅるしゅると繭糸が生じます。
「すごい」
　あおいが驚いて見つめつつ、助太刀しようと繭糸を手にしました。
　絹糸を手で紡ぐこともできる絽紗は、あおいと共に繭糸でなんとか道具をつなぎとめようとしたり、縛ってみたり。
「裁縫箱が開くとたーいへーん～針が飛び出たら拾うのも難しいですからね。しっかり封をしないと、ですねー？」
　まさに開こうとしていた裁縫箱を、見事に繭糸でぴぴっと締めました。

　その間に彩は、棚の隙間に入ってしまった道具たちをじっと見つめて、つぶやいていました。
「……怖い、のかしら」
「えっ？」
　桜が聞き返すと、彩は言いました。
「私、人見知りで臆病で、この同好会に入ったときもこわかった……。でも、私の大切なおともだち……同好会の皆さんは、私がこわくて立ちすくんでしまっていても、そっと待っていてくれた。だから追いついて、一緒に歩くことができた」
「そうなんですね……」
　桜は、彩の言いたいことがわかった気がしました。
　彩は棚から少し離れた場所にしゃがみ、小さい声で、優しく道具たちに語り掛けました。
「……あのう、……もし、よかったら……い、一緒に……遊びましょう……？　あなたなら……きっと、すきなものに……なれる、から」
　すぐには反応はありませんでした。
　けれど待っていたら、編み針や毛糸玉がそっと顔をのぞかせるように、棚の隙間から出てきました。
　桜が見守っていると、毛糸玉やかぎ針は「遊ぼうよ」というかのようにすり寄ってきました。
（敵対する気はないみたいね……なんとなくかわいいな）
　桜は、神魂現象が終わるまでの間、毛糸やかぎ針と戯れようと思いました。
（たまにはこんな風に過ごすのも悪くないよね）
　そう思う桜の隣では、彩が毛糸と編み針に手本を見せるべく編みぐるみを編んでいました。
　すると編み針は毛糸と共に頑張って動き、自分たちの作品を作り始めたのです。
「待つのって、大事なんですね」
　編み針たちの様子を見て、あおいが微笑みました。

「道具さん道具さん、こちらですよー」
　絽紗は、おとなしくなった道具たちを誘導していました。
　片付けのためにあちこち開けていると、いろんなものが見つかりました。
「あっ、私が入った頃の配置ですねー。これは、当時使ってた鍋？　なつかしー……」
　絽紗は優しく道具たちを撫でながら、あるべき場所に戻していきました。
「私たち、もう卒業なんですよねー。後片付けついでに、なんか昔を思い出して、切なくなってきましたー」
　彩も頷いて、噛みしめるように言いました。
「もうすぐ、この場所ともお別れなんですね……」
「次の部員さん達にも、大事に使っていただけると、良いですね～」
　絽紗の言葉に、桜とあおいが答えました。
「はい、大切に使います」

　最後に小さな編みぐるみを完成させると、編み針は、くるりと回って裁縫箱に入り、動かなくなりました。
「上手にできましたね……」
　彩はいとおしそうに編みぐるみを手に取り、皆は出来上がった作品を見せ合うのでした。

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