双界からの試練　―鋼竜女皇フェラマ―｜リアクション

双界からの試練　―鋼竜女皇フェラマ―

承：今、激戦の時

　輝く熱風が、会場を銀色に染め上げる。

（いきなり……『闘乱の祝祭』から？）
　スピカ・フォーツは不思議に思いながらも、やる事は同じ、と『ホワイトアウト・シルエット』を発動させ粉雪を纏った。彼女の周囲の足元が凍りに変化するだけなく、吹雪による回避率上昇というのがありがたい。
　同時に出現するのは氷の盾。敵の攻撃を水属性に変え、BS諸共跳ね返す『フロスヒルデⅡ』も発動させたらしい。
　彼女は冷静にフェラマの攻撃を避けると観客席の方へと滑りあがった。銀色の中の銀色は、身を隠すのに偶然にも役に立つ。彼女はそのまま詠唱をつづけた。
「噂には聞いていたけれども……、本当にあるんですね……」
（まぁ、愚痴ってもしゃーないな）
　Rei（滝原レオン）はどうにか水属性の『アイスショット』で攻撃しつつ距離を保つ。その傍ではいきなりの大技にため息を吐く着ぐるみさん（旅鴉月詠）の姿があった。
（これは想像以上に刺激的だね）
　着ぐるみさんはそれでも冷静にギターをかき鳴らす。奏でる曲は水奏『雨雨降降』で対火付与フィールドを作成する。

( 'ㅅ')＜ハープ？　最新の人魚はロックだぞ？

　とノリノリである。着ぐるみさんは続けて水木奏『緑の雫』という弱体耐性・継続回復という効果を持つ癒しのメロディーを奏でる。
「！　オレもいくよぉ！」
　音色で我に返った曖浜瑠樹が愛らしい『ゆる小人の帽子』を揺らし、オカリナを奏でる。『精霊歌楽のオカリナ』という精霊族の歌楽士専用楽器で、攻撃力を少し上げるだけではなく歌楽士スキルの威力と効能をアップさせる。
　フェラマは恐ろしいバットステータス（以下BSと表記）を引き起こす技を持つかも、とここで奏でるは『なごみのメロディ』という思わず和むような優しいメロディー。これが味方のBS耐性を上げてくれる。
（いい感じだ）
　着ぐるみさんはそっと『反響』を発動し、スピーカーを設置。演奏範囲をぐん、と広げる。
ウサギの着ぐるみと愛らしい小人のセッションのお陰か、癒しのメロディーにより混乱し駆けた者達の心を落ち着かせた上、【鋼鉄化】のBSも付かなかった。
　だが、ダメージはそれなりに入っており、特に精霊族の仲秋薫は少し辛そうだ。
（これが、フェラマ……！）
　額に浮かんだ汗を拭いながら恵御納夏朝は杖を構える。そしてトワ・E・ライトフェロゥに言った。
「回復先が重ならないように声を掛けていこう！」
「わ、わかりましタ！」
「忍者さんの回復に回るから、弓使いの人を！」
　夏朝が顔を向けたのは、フェラマの攻撃を避けられず、刀で受け止めて倒れた戌貝二一。彼女は咄嗟に夏朝を庇ってくれたのだ。夏朝はすぐさま『ふわふわきんねこヒーリング』（以下『金猫』と表記）を二一へと放つ。
「っ、危なかったっ！　いきなり治癒士狙ってきてるし！」
　彼女の言葉に、夏朝は冷たい汗が背中を流れるのを感じる。そんな彼女は咄嗟に『商人の心得』を発動させることでこの攻撃をしのいでいた。
　一方、苦しそうな薫をトワが『フェアリーヒール』で治療する。
（油断しましたか）
　薫は十分距離を取る前に攻撃を食らっており、ゴーグルの奥で瞳を細める。まだヒットポイント（以下HPと表記）を温存しておきたかったがこれは予想外だ。

「No problem！　すぐ治るまス！」

　トワが放った治癒魔法のお陰で少々心にゆとりが出来た薫は会釈すると素早く中距離から矢を放ち始めた。

（『挑発』する隙がなかった！）
　元々ヘイトを稼ぎやすくするべく『挑発』しようとした所で『闘乱の祝祭』が発動したことに白真白は愕然とする。だが、キャンディーを花の蜜のキャンディーを口にしていたことでBSを免れる。彼女はタンクとしての役目を全うするべく、改めて『挑発』を発動させる。
「少人数でもやられるのが怖いの？　だから最大攻撃したんでしょう？」
　真白へと向けられるフェラマの拳。だが、それを真白は避けない。慣れた手つきで盾を押し出し、攻撃を受け止める。