双界からの試練　―鋼竜女皇フェラマ―｜リアクション

双界からの試練　―鋼竜女皇フェラマ―

　すると、彼の声に反応したのだろう。トワが夏朝と共に２人のところにやってきた。
「リューキ！　リューキもレイドバトル来たです？」
「……レイドバトル？！」
　驚いた様子から、参加したことがないらしい、と感じ取った夏朝と着ぐるみさん。夏朝はこくり、と頷いて少年に一つアドバイスをする。それを聞いた瑠樹の顔が、ぱっ、とやる気に輝いた。
「うんっ！　オレもがんばるよぉ～！」
　とても元気で可愛らしい声が響き、着ぐるみさんはしみじみと思う。

( ‐ㅅ‐)＜思えば、僕も最初はこうだったのかな。

（その分、ステージは広め。道具やスキルで観客席にも上れる、と）
　心地よいメロディーに気分を良くしながら色々考察を重ねる黒兎都は大きな剣を手にため息を吐いた。
「しかし、重戦士かー…あまり扱ったことはないのよねー。タンクとか責任重大すぎるんじゃないかな？」
最初は「久々のSOCレイド招集だワァイ♪」とわくわくしていた都だが、現状に真面目に考え込む。だが、その表情もすぐに柔らかくなった。
「よし、タンクであってタンクでない大剣スタイルで行くことにしようっと」
　気合を入れると都はスキルを並び替え、装備を整える。その様子を見ていたのは、戌貝二一と仲秋薫の軽戦士コンビ。
「ホホー、これはレイドバトル！　しかもまた忍者じゃん♪　やったね～」
　と、忍装束に身を包んだ二一はその上に纏った『風姫のローブ』の裾を揺らし、「疾風に踊る千代紙、参るっ！」とポーズを決める。
　一方、弓を扱うエルフのような出で立ちの薫は、その姿に満足げな様子。
（装いも私にふさわしいものですね。頑張って協力して楽しみましょう！）
　気合も十分入っているようで、二一と都も「がんばろうね」と互いに頷き合う。
　レイドの経験が浅い薫は都を振り返る。
「よかったらいろいろ教えてくださらない？　黒兎先輩♪　私、初心者だからって日和りたくないんです」
　ふふ、と柔らかく笑う薫に都が「わかった」と言ってほほ笑む。都は軽戦士で参戦した事もあるので、何かとアドバイスできることはあった。
「ねぇ、そこの重騎士さーん！」
　と、都に声を掛ける者が近づいてくる。彼女と同じ重騎士の白真白は前回のレイドの後、ビルドを変えたそうな。
「私はタンクでいくけど、どうする？」
「うちはタンクじゃないよ。攻撃主体になるかも」
「そうなんだ。ま、人数少ないし工夫してお互い頑張ろうね」
　真白の言葉に、都は１つ頷いた。

　……え？　レイド……？？
（聞いていない聞いていない）
　ちらほら聞こえる単語に硬直するのはRei。正体は、滝原レオンである。急に景色が鮮明になったかと思えばイベントニュースで見たかもしれないレイドボスの姿。
「ちょっと待って！　お……私、まだ初めて一週間経ってないんだけど……？！」
「たぶん、レイドバトル」
　そういったのは、傍にいたスピカ・フォーツ。彼女は慣れているのか、手早く道具のチェックなどを行う。
「で、できるかしら……」
「みんなで、頑張る。……それだけ」
　不安に戦くレオン……ではなくRei。スピカはそんな彼女にこくり、と頷き、手にした眠月のロッドをフェラマに向けた。
　マッチングが終わったのだろう。それまでウサギさんが奏でていたギターのメロディーに合わせ踊っていたフェラマが、その舞を止める。ウサギさんが奏でるメロディーだけが、張り詰めた空気の中自由に踊っていた。
「ほぉ……。少数精鋭か……」
（！）
　フェラマの声に反応したレオンは、嫌な予感を覚えながらもフェラマを見上げる。威圧感と美しさを湛える彼女は、悠然とほほ笑んだ。
「汝らよ、この私を、その数で打ち倒そうというのか……？　ふっ、面白い」
（空気が……一気にピリピリしていく）
　彼女がただ感想を漏らしただけで、身体が強張るのを覚えるスピカ。だが、フェラマは気にせず翼を広げる。

　――このモーション、見たことない。

　既にゲームとしてフェラマ戦を楽しんだことがある者がいたならば、そう思っただろう。フェラマは１つ頷くと……その身を竜に変えた。

「なっ？！」
「どうみても『闘乱の祝祭』だよ！！」
　困惑する二一の手を引き、都が立ちはだかる。フェラマは竜の姿のまま銀色に輝く熱波をまき散らし、ステージを縦横無尽に飛び上がった！！

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