双界からの試練　―鋼竜女皇フェラマ―｜リアクション

双界からの試練　―鋼竜女皇フェラマ―

結：その勝利は、どちらの手に……。

　竜の姿となったフェラマは、悠然と浮かび上がる。

――臆するな、勇気ある冒険者達よ。闘志挫けぬ限り勝機はある。

　――そして始まる、めくるめく地獄の一時。

　吹きあがる溶けた金属、暴れる竜、阿鼻叫喚と化すアリーナ。溶けた金属の直撃を受けた白真白と曖浜瑠樹がBS『火傷』に苦しむ。着ぐるみさん（旅鴉月詠）は冷静に水奏『雨雨降降』に変化させ熱風を緩和させようとするが治癒士の少なさは看過できなかった。大半の面々がHPを半分以上減らしている状態だ。スピカに至っては風前の灯火である。
　銀の熱風にさらされた恵御納夏朝が痛みに苦しむ姿のまま『鋼鉄』と化し、トワもまた大ダメージに膝をつく。
　フェラマの攻撃が直撃した黒兎都と稲積柚春、羽生碧南が、虹色のシャボン玉となってはじけ飛び、突然の事に戸惑ったRei（滝原レオン）は仲秋薫の矢で我に帰らなければ回避することができなかった。
（フェラマの体力ケージものこり３分の１。粘れば勝てる筈だ）
　いつになく熱くなっている事を感じながら、夜海霧楓は襲い掛かってくるフェラマの攻撃にカウンターを放つ。しかし、フェラマも『熱風の愛撫』で起こした熱い強風で身を包み、BS『火傷』を負ってしまう。
「これ飲んで！」
　戌貝二一がすかさず『忍びの丸薬』を楓に与えるが、HPが心もとない。ちらり、と後方を見れば動けない夏朝のBSを解除するか、仲間のHPを回復するかで悩むトワ・E・ライトフェロゥの姿が……。
「歌楽士を！」
　楓の叫びに、トワは慌てて歌楽士をも含めた状態で『フェアリーライト』を使い、続けざまに真白と瑠樹を含め『フェアリーサークル』を発動させる。

　そこに轟くは雷鳴。

　よく見れば、『鋼鉄化』した夏朝に電気が走り、フェラマへと射出されていた。『磁像の弓矢』という、BS『黄金化』か『鋼鉄化』中のみ使用可能な雷属性のスキルである。これはジョブ関係なく使用できる。
（奥の手の一撃、食らええええっ！）
　鈍い音を立てて体勢を崩すフェラマと、七色の泡となって散る夏朝。その姿に悲鳴を挙げそうになるトワだが、ぐっ、と堪える。
（みんな、余裕がない。それに……フェラマも？）
　真白は竜の姿のままのフェラマにふっ、と笑う。

「こんな時こそ、笑うのよ」

　彼女は自分にダメージカットスキル『鋼鉄の意思』と受けたダメージの１割を反射するスキル『鋼薔薇の棘』を交互にかけていた。そのお陰でここまで立ってこれたのだ。もう一度大技が来ると睨んだ彼女は己の武器をフェラマに向けた。
　攻撃に移ろうとしたフェラマの動きが止まる。真白は身動きが取れないまま叫んだ。
「みんな、ここで決着付けて！！」
　自分と対象、お互いの移動を封じるスキル『グレイプニル』を使ったのだ。同時に一定時間HPが０になっても戦闘不能にならない『生存本能』を発動させる。
「これがトワのYellでス！」
　トワは持てるだけの力とアイテムをもって仲間のMPを回復させ、チャンスにつなげる。
　Reiはここだ、と思い思いっきり『アイスショット』連発し空気を冷やす。同時に、スピカが杖を掲げた。

「この勝負、勝つのは私たち」

　瞬時に世界は白に染まり、熱をかき消す冷気に包まれる。氷のジャンプ台を『ホワイトアウト・シルエット』で滑り、おもいっきり高々と舞い上がる。

　――アストラル・ヒーリング！

　視界に仲間たち全員を納め、お守りを握り念じたと同時に、冒険者たちを水色の淡い光が包み込む。星を思わせるそれに癒された冒険者たちから歓声が上がった。
（よかった……）
　スピカの身体が、落ちていく。だが、MPを使いきったスピカの身体が、徐々に七色のシャボン玉となって弾けていく。
「フォーツ！！」
　楓が落ちるスピカの身体を受け止めたとたん、彼女の身体は消えた。