双界からの試練　―鋼竜女皇フェラマ―｜リアクション

双界からの試練　―鋼竜女皇フェラマ―

無駄にはしないよ

　静かに、祈るように呟いたのは『雨雨降降』続行の着ぐるみさん。その横、瑠樹が痛む身体をおして奏で続ける。そのメロディは冒険者たちを勇気づける『おうえんマーチ』だ。

　その上、とどめとばかりに着ぐるみさんをみてほっこりとした笑顔をむけ、フェラマも和んで欲しい、と祈る。
「着ぐるみさん、かわいいなぁ～」
　そう、瑠樹のろっこん『ゆるゆる和みと恩恵の輪』進化能力である。真白の『グレイプニル』で身動きを封じられ、尚且つ戦意を彼のろっこんにより削られるフェラマ。
（これで終わらせます！）
　薫が続けざまに『強矢』を放ち、楓も強力な一撃を叩き込む。真白とスピカ、瑠樹が作った徹底的な瞬間なのだ。
「いっけえっ！」
　忍びなれど忍ばない、とばかりに二一がクナイで切り付ける。楓がもう一度打ち付ければ、真白がうめき声をあげて体勢を崩す。どうやら『グレイプニル』の効果が切れたようだ。しかし、フェラマのHPもよく削れている。
（出し惜しみはしない！）
　楓は『鴉の武器飾り』をアリーナに叩きつけ破壊すれば、同時に夏朝が復活する。彼女は状況を鑑み、『金猫』を複数名に手早く施す。

　――そろそろ決着をつけようか、冒険者！

　全身から荘厳なオーラを漂わせ『竜女王の威厳』を放つフェラマ。彼女はそのまま冒険者達へ攻撃する。三度吹きあがる熱い金属の液体の中、楓が、二一が、真白が、薫が総攻撃をかけた。
　降り注ぐ矢の中、クナイと棍がフェラマの身体を討つ。そして、冷たい飛沫が飛び散ったかと思えば、その視線の先、『アクアウェーブ』を放ったReiの姿があった。
　フェラマとて油断しない。彼女は荘厳なオーラのまま身を奮い、彼らを弾き飛ばす。が、着ぐるみさんと瑠樹が奏でるメロディーが、トワと夏朝のエールが、彼らを支える。
　真白が攻撃を『シールドバッシュ』で弾き、二一は蒔菱を溢し、薫が矢で、Reiが『アクアウェーブ』でフェラマの気を逸らす。しかし、全員がもどかしい何かを感じている。やがて、フェラマが口を開いた。

　――見込み通り強者ぞろい、然れど突き立てる牙を失えば蹂躙されるのみぞ。

　フェラマの声が朗々と響く。この時、動ける者全員に、BS『躊躇』が添付されていたのだ。だが、ここでフェラマは言葉を閉ざす。

　――何……？

　蹂躙しようと動かそうとした体は動かない。彼女は戸惑った。だが、真白が、二一が笑う。
「甘く見ていると痛い目をみるでござるよ」
　まだBS『躊躇』が添付される前に溢した巻き菱が、真白の一撃が、きっちりフェラマのHPを０にしていたのである。

　――なるほど。実に天晴だ。

　フェラマはそれだけ言うと天に向けて溶けた金属を花火のように打ち上げる。そして、高らかに笑った。

　――皇の我が言うのだから誇るがよい。ふふ、敗北、悔しさか。よもや他種族に教わるとは、思わなんだ。だが、悪い気もせぬな。

　そういうと彼女は楓が壊した武器飾りに触れ、それを復元させる。
「え？」
「汝の判断への褒美だ。受け取れ」
　その武器飾りに、トワを思わせる星のチャームが加わる。楓は不思議な気持ちで鴉と星の武器飾りに触れた。
　フェラマは倒れた者たちを含め冒険者たちを回復させる。と、いままで見ていた者達に冒険者たちの勝利を称えるよう、翼を広げて示し、たくさんの拍手に包まれた。

　――マシロ、といったな。そなたの質問に答えよう。

「え？　本当？」
　真白に、フェラマはこくん、と頷いた。

　――そなたの言う者達は、『混霊界』と『ゲームの世界』の間にいる。我が知るのは、それだけだ。

「……世界と世界の間……？」
　真白の言葉に、フェラマは１つだけ頷いた。

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