氷のホテル☆星ヶ丘クリスタルガーデン｜リアクション

氷のホテル☆星ヶ丘クリスタルガーデン

●氷のお姫様

　ある日の夜。
　八神修は自室で寛いでいた。
　その手には期間限定イベント『星ヶ丘クリスタルガーデン』への無料招待券が握られている。しかもペアの宿泊券だ。修は七夜あおいと一緒に行きたいと思い、スマホでメッセージを送る。

『こんばんは。今度の休みは空いてる？』
『こんばんは。空いてるよ』
『星ヶ丘クリスタルガーデンの招待券が抽選で当たったんだ』
『修君も！？　じつは私もなんだ』
『２人とも当選なんて素敵な偶然だね』
『うん！』

　これほど嬉しい偶然は無い。
　待ち合わせの時間などを決めると、やりとりを終えた。今から会う日が楽しみだった。

　そして当日。
　修は予定時刻よりも少し早くホテル前に着いた。
　なんとも幻想的な氷のホテル。なかなか来られるものではない。

「来てよかった。今日は楽しもう」

　修がそう思っていると、あおいがやってきた。

「おまたせ」
「大丈夫だよ。それじゃ、いこうか」
「うん！」

　あおいもホテルの外観を見て、テンションがあがっているようだ。部屋に通されると、そこは全面が氷でできていた。壁や柱には美しいレリーフが掘られていて、ぼんやりとした、青や白の間接照明でとても幻想的だった。

「わぁ……すごい……」
「うん、雰囲気がいいね」

　荷物を置くと２人はちょっとした探検気分で部屋を後にした。
　敷地内にはさまざまな施設があり、どれも面白そうだ。散歩をして氷の世界を眺めたり、スケートリンクに降り立って、シューズから伝わる氷の感触や滑る感覚を楽しむ。他にもスキーなどを２人で目一杯遊んだ。

　さすがに動き回って疲れたので、かまくらで休憩をとることに。スープと小さめのパンをスタッフから頂いて、なかに入る。雪でできているけれど、意外と温かい。あおいは着込んでいた服を少し脱いで、くつろぐ。修も上着を一枚脱いで、あおいの隣に座った。

「スープあったまるね」
「そうだね。パンもおいしい」

　すると、なにやらもこっと温かい感触があった。
　不思議に思って確認すると、そこには猫がいた。宿泊客のくれるオヤツが目当てだろうか、猫が何匹か集まっている。

「かわいい！」
「たくさん来たね。猫も寒いのかな」
「そうかもしれないね」

　修はスープと一緒に受け取ったパンを分ける。　　
　猫たちは人に慣れているようで、パンをすぐに口に入れた。　あおいと２人で猫を可愛がりながら、かまくらでの時間を楽しむ。

（あ、そうだ）

　修はデジカメを取り出して猫たちを写真に収める。氷世界にいる猫たちの写真はきっと今しか撮れないだろう。休憩したあと、まだやっていない遊びを満喫してからホテルに戻る。
　レストランで食事をする前に、あおいはドレスをレンタルした。折角なのでスタッフから許可をもらって記念撮影をする。
　キラキラした階段の踊り場やバルコニーで、美しいドレスをまとった彼女の姿を撮影する。

「お姫様みたいだ。美しいよ」
「あ、ありがとう……」

　あおいは恥ずかしそうに俯いた。

（まるで映画のワンシーンだ）

　修は心を奪われながらも、その美しさを残そうとシャッターを切る。
　するとスタッフが２人で並ぶところを撮ってくれるという。修はあおいの隣に行くと、カメラのほうを向いた。

「特別な１枚だね。夢みたいだ……」
「うん……」
「どうしたのあおい？　顔が赤いよ」
「な、なんでもないよ！」

　照れた様子に修も思わずドキドキしてしまう。きっとあおいも同じなんだろう。
　撮影が終わり、これからレストランへ向かう。修は自然に手をあおいに差し出した。

「お嬢様、お手をどうぞ」
「……ありがとう」

　頬を赤らめながら、あおいはその手を取った。

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