新雪とともに日が昇る｜リアクション

新雪とともに日が昇る

☆自宅にて

（やっぱり我が家は落ち着くなー）
　始業式が終わってアパートに戻った万条幸次はしみじみ思う。
「ニャー」
　飼い猫の花遊(かゆう）がすり寄って、膝に乗ってくる。
　ペットOKの学生アパートがなかなか見つからなくて、入学式前の３月中も必死に探したものだった。
　ピンポーン♪
　そんなことを考えてたらチャイムが鳴った。

「はーい……ごめん、ちょっと降りて」
　不満げな花遊に謝りつつ玄関に出ると、宅配便屋さんだった。
　届いたのは大きなダンボールが3箱。
「何だろう？　誰から……」
　と首をひねったが、送り主の欄に『万条楽々子』と書かれているのを見て納得する。
「母さんだ」
　実家には正月に帰省したばかりなのだが。
（３学期が来て早々に仕送りなんてするのか……）
　と思いつつ、とりあえず開封してみることにした。

　箱を開けると、一番上に見覚えのある服が載っていた。
「あ、これ持って帰り忘れたウインドブレーカー！」
　寝子島まで持って帰るのもかさばるから、どうしようかと思ってひとまず置いて、そのまま忘れてきてしまったのだ。
「他にも暖かい服類がいろいろ入ってる……これ送ってなんて頼まなかったのに」
　母親のカンなのかな、と感心しつつありがたいな、と思う。
　入っていたのはそれだけではなかった。
「あとはレンジで温めるごはんとか、お菓子……カンヅメとささみ……は、花遊の猫用おやつだ」
　花遊はさっそく箱に入り込んで遊んでいる。

「これはお礼のメールだけでも送っておいた方がいいかな。でも文面はどうしよう」
　欲しかったもの全部入ってて嬉しかったありがとう……なんて恥ずかしいし。
「うーん……うーん……」
　素直になれないお年頃の幸次は、スマホ画面をじっと見ながら固まるのだった。

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