私がいっぱい！　コレクション｜リアクション

私がいっぱい！　コレクション

●大切なものと夏の日の思い出

　壊れてしまった妹のおもちゃのブレスレットを直すため、鴻上彰尋は街へと急いで出かけた。
　これは妹にとっても、彰尋にとっても思い出の品なので、できれば直してあげたい。
　おもちゃのブレスレットが壊れたのは妹が頻繁に身に着けていたので、多分ゴムが劣化し、切れてしまったのだろう。
　自分で直せない。
　ビーズの一部も失くしてしまったので、妹は、すごく落ち込んでいた。
「俺がどうにかして直すから」

落ち込んでいる妹の笑顔を取り戻したい。
　思い出の品を直せば元気が出るだろうと思った彰尋は、妹を慰めた後にキャットロードへ。
　手芸屋があるだろうと、ここに行くことに。

　キャットロードを長い時間歩き回って、ようやく手芸屋を見つけた。
　中に入るなり、ゴムが売られているコーナーへ。切れたゴムの代わりは、すぐに見つかった。
　問題なのはビーズだ。

　壊れたブレスレットと売り物のビーズを見比べ、なるべく同じようなものを使おうと真剣に品定めを。

　じっくりと時間をかけて選んだ同じような色、かたちのビーズをいくつか買い、レジで会計を。
　その際、壊れてしまったブレスレットを急いで直したいので、作業スペースがあったら借りたいと店員に頼んでみた。
　彰尋が持っていた壊れたブレスレットを見て、妹さんか好きな女の子のために直すのかと思った店員はバックヤードで良ければ使ってもいいと言ってくれた。
「ありがとうございます」
　お言葉に甘え、バックヤードに案内してもらう。

　バックヤードで作業スペースを確保すると、手芸屋の店員が貸してくれた道具を使い、さっそく修理に取り掛かる。
　新しいゴムに壊れたブレスレットのビーズと、買ったばかりのビーズを通していく。
（このブレスレットはたしか、七夕祭りに遊びに行った時に俺が妹にお土産として持って帰ったものだったな）

そのことを思い出しながら、楽しい雰囲気の七夕祭りのことを思い出す。
　お土産のブレスレットは、妹にすごく喜んでもらえたので買ってよかった、と安心した。
　七夕祭りの時に一緒にいた七夜あおいにも、２つあるからと手渡したものだったなぁと思い出しながらブレスレットを直す。
　そうしたら、七夕の日のことを色々と思い出した。
（彼女と出会ったのは高校1年生の秋だったから、2年生の7月、初めて誕生日をお祝い出来たんだよな）
　なんて振り返ったりして、時折、修理の手を止める。

「楽しい時間は、あっという間に過ぎていったな」
　あおいにブレスレットを腕にはめてもらった時は、心臓が止まるほど驚いた。
　その時の彼女の笑顔は、今でも忘れられない。

　ブレスレットが直し終わると、バックヤードを貸してくれた店員にお礼を言い、手芸屋を後にした。
　早く帰って妹にこれを手渡そうと足早に歩いていると、買い物帰りらしいあおいに出会った。
「こんにちは、あおいさん。買い物の帰り？」
「友達と買い物に行った帰りなの。彰尋君も買い物の帰り？」
　これを直しに行っていたんだ、と修理したてのブレスレットをあおいに見せる。
「これ、七夕ゆかた祭りの時に買った妹さんとお揃いのブレスレットだよね」
「あの日のこと、覚えていてくれていたんだね。そうだよ」
　妹がいつも身に着けているから劣化したのか、壊れて……と修理をした経緯を話した。
　直せて良かったね、と、あおいはあの日と同じ笑顔で言った。
　それから、あおいと今までの思い出を色々と思い返して、その時のことを楽しく話した。