10年前の私から10年後の私へ｜リアクション

10年前の私から10年後の私へ

●取扱注意な10年後の手紙

「10年後の私へ、と」
　シオ・レイゼルオークが書いているのは、10年後の自分に宛てた手紙だ。
「未来の私がこれを読むことは無いでしょう。何故なら発見次第、自分ならやばい処分しよう！」
　これは時限爆弾となるはずだからです。というのは本人談。
　選択と重圧。
　色々あるけれど無理のない範囲で、けれど本当の望みに向き合えますように、と願いながら書いている。
　
『はい、鼻で笑った人アウトー！
　罰として同じように１０年後の手紙を書くまで
　ちょっとした何かが続くアレ、プレゼント。
　
　以上お手紙あるあるでした』

　そういったおふざけ要素が入っている内容も。
　シオが書いているのは、手紙を装いつつ、近況の覚え書き。
　普段接点の無い野々ののこの見解、開封されない前提のオフレコ風の手紙だ。
「ただの手紙ではなく、こういったものを含めた手紙が面白いでしょう」
　10年後の自分、あるいは誰かがこれを見た時の反応が楽しみですねー、とシオは続きを書いていく。

『一年ぶりの秋祭りでお三夜さまは変わらずお元気そうでした。
　若干物騒でしたが。落ち着いたらゆっくりご挨拶したい所。

　最近学校のイベントへ幾つか参加しました。
　神様と言えばもう一柱こちらにも居るとか。
　期末試験、家庭の成績振るわなかったとか。
　家庭科の白沢先生には学祭イベント繋がりの
　お料理教室お世話になったのでちょっと気になり。

　進級、卒業。門出にどんな道を模索するのか。
　進学なら大学、専門。
　就職なら地元、島外、実家を手伝う。
　可能性と重圧
　沢山の選択に押しつぶされないよう程々に
　とりあえず毎日を出来る範囲で機嫌良く過ごしたいものですね。
　すっごい幸運がありますように。健やかであれますように。

　では互いにご武運を』

　これで終わりかと思いきや。

『追伸
　この先を読みますか？　この先はただの日々の覚え書きです』

　行間をかなり開け、こう締めくくった。
　手紙の最後にと、その一文の後に暦を記入し、厳重に封をすれば10年後の自分宛ての手紙が完成。
「できましたー。手紙だと時限爆弾化しやすい不思議ですよー」
　時限爆弾化とは、随分と物騒な手紙ですね。大丈夫でしょうか？
「記録も大概、過去からの刺客だけど」
　10年後の自分が手紙を見たら書くかもしれないが、それ以外の人が見た場合はどうなるのだろうか。
　知人、友人、赤の他人がこれを見たら、手紙を書いた人は何を伝えたかったのだろうかと不思議に思うかもしれない。
「それはそれで面白いかもしれませんねー」
　ドッキリを仕掛けたようで楽しくなりそうです、とシオはクスリと笑う。
　
　手紙を書き終えた後の問題は、これをどこに保管しようかということだった。
　自宅のどこかにしておくか。
　手紙を封じた地図を書いてから寝子島のどこかに隠すか。
「どうしようか悩みますねー」
　手紙の内容以上に、どうしようか考えるシオだった。

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