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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
寮生の日常 ～猫～
昼時。黒角 湖陰の部屋――。
湖陰は農家の祖父から届いた段ボールを前にして腕を組んで悩んでいた。段ボールの中身は大量の野菜である。バトミントン部への出費は掛け持ちしているアルバイトでどうにかしていると言ったからだろう。バイト先と寮の皆で食べてくれ、と言うことらしい。
「ジャガイモ、ニンジン、玉ねぎ、ナス、トマト……俺じゃカレーくらいしか思いつかないな」
段ボール箱から調理の分の野菜を取り出すと湖陰は台所に向かった。昼時は台所が混む。ひとりくらい料理に明るいやつがいるだろうし……と思ったが。
「やあ、黒角さん。冷蔵庫使うのー？」
台所にいたのは初島 優だけ。優は首から愛用の黒いゴーグルをかけて冷蔵庫を修理していた。先ほどまでは屋根の修理をしていたのに働き者である。
「いや、常温で十分。じっちゃんが野菜送ってくれたからカレーでも作ろうかと思って」
「ほんとー？ 俺、お腹減ってるんだー」
「俺の作ったやつで良ければ食ってくれ。ひとりじゃ食い切れないしな」
「ありがとー。俺は冷蔵庫修理してるねー。終わったら教えてー」
「おう」
優は背後で湖陰が包丁を使うのを聞きながら、冷蔵庫の修理に戻る。工学部の人に手伝ってもらったのでおそらく大丈夫とは思うが、修理後にうっかりミスで冷凍庫化したことがあった。同じ失敗は繰り返したくない。技術者として手抜きはしない主義である。
作業用のゴーグルをつけて冷蔵庫に触れる。優のろっこん・技術者の目で冷蔵庫の状態を確認して……うん、おそらく大丈夫。普通の冷蔵庫と同じように使えそうだ。
「こっちは終わったよー。そっちは……」
優の目がカレー鍋に吸い寄せられる。皮をむいただけの野菜がぷかぷかと浮いていた。
「わーぉ」
トマトとか……生で食べられる野菜はまだいい。でも、ジャガイモや玉ねぎは厳しそうだ。
なぜ、この状況をおかしいと思わない？ カレー……食べたこと、あるよね？
「もしかして、黒角さん料理はあんまりしないー？」
「まあな。でも、カレーって煮込み料理だろ。ルー入れて煮込めばそれっぽくなるんじゃねえか」
ご飯を貰う約束をした手前、優は何も言えなかった。
そしてしばらく時間が経ち……においだけはそれらしくなった頃。
「作りすぎた……」
「う、うんー」
味見をしないままの肉無しカレーが鍋いっぱいにできあがった。
一方、暦 草司の部屋――。
草司はカップ麺に熱湯を注ぎ『３分待ってやる』と見下ろしながら呟き、だらしない姿勢で３分経つのを待っていた。暇だからカップめんの成分表示を見てみる。１０秒で飽きた。それでも成分表示を見続けてゲシュタルト崩壊を起こしかけたころ、ドアを叩く音がして我に返った。
「おや、黒角君と初島君か。どうしたん？」
「カレー作りすぎたんでわけに来た」
「黒角君……君はいいお嫁さんになれるよ」
「ほ、褒めても何も出ないからな……」
湖陰が照れたように顔をそむける。湖陰の後ろにいる優は何かをあきらめたかのように微笑んでいた。
「ご飯は持ってきたよー」
「ありがとな、初島君。さて、カレーはどんなかなー。甘口？ 辛口？ 種類は？」
草司が期待を込めたまなざしを優に向ける。おいしいカレーを想像していた。
「えっとねー。野菜カレーで、たぶん甘口ー？」
「いいねー。じゃ、お鍋拝見」
皿にご飯をよそってスプーンも準備し、後は食べるだけ。草司は鍋の蓋を開け、中身を確認するとそっと蓋を戻して優に微笑みかけた。
「これはよいものだ」
「だよねー」
再び鍋の蓋を開けてみたが中身は同じだった。それぞれの皿に野菜を３つずつくらい乗せる。スプーンからはみ出る大きさの具材。これが肉なら狂喜乱舞は確実なのだが……。いや、野菜も大好きだけどね。けちをつけたいわけじゃないんだ。
「俺、浮いた金でラケット買うんだ。チタン製の軽いやつ。いやそれよりガットのが先かな」
湖陰の弾んだ声を聞きながら草司は覚悟を決める。フォークでジャガイモをぶっさすと、ちょうど真ん中あたりで止まった。うん、生だ。
「普段からカップ麺多くて野菜あまり食べてないからこれはありがたい。早速いただきます」
シャリシャリと音を立てながら草司がジャガイモを胃の中におさめていく。優はそんな彼の姿を美しいと感じた。
「生、だな……」
「そう、だねー……」
湖陰は火が通っていないことにやっと気付いたが、暦が食べているのを見て無表情でシャリシャリと食べ始めた。
湖陰は農家の祖父から届いた段ボールを前にして腕を組んで悩んでいた。段ボールの中身は大量の野菜である。バトミントン部への出費は掛け持ちしているアルバイトでどうにかしていると言ったからだろう。バイト先と寮の皆で食べてくれ、と言うことらしい。
「ジャガイモ、ニンジン、玉ねぎ、ナス、トマト……俺じゃカレーくらいしか思いつかないな」
段ボール箱から調理の分の野菜を取り出すと湖陰は台所に向かった。昼時は台所が混む。ひとりくらい料理に明るいやつがいるだろうし……と思ったが。
「やあ、黒角さん。冷蔵庫使うのー？」
台所にいたのは初島 優だけ。優は首から愛用の黒いゴーグルをかけて冷蔵庫を修理していた。先ほどまでは屋根の修理をしていたのに働き者である。
「いや、常温で十分。じっちゃんが野菜送ってくれたからカレーでも作ろうかと思って」
「ほんとー？ 俺、お腹減ってるんだー」
「俺の作ったやつで良ければ食ってくれ。ひとりじゃ食い切れないしな」
「ありがとー。俺は冷蔵庫修理してるねー。終わったら教えてー」
「おう」
優は背後で湖陰が包丁を使うのを聞きながら、冷蔵庫の修理に戻る。工学部の人に手伝ってもらったのでおそらく大丈夫とは思うが、修理後にうっかりミスで冷凍庫化したことがあった。同じ失敗は繰り返したくない。技術者として手抜きはしない主義である。
作業用のゴーグルをつけて冷蔵庫に触れる。優のろっこん・技術者の目で冷蔵庫の状態を確認して……うん、おそらく大丈夫。普通の冷蔵庫と同じように使えそうだ。
「こっちは終わったよー。そっちは……」
優の目がカレー鍋に吸い寄せられる。皮をむいただけの野菜がぷかぷかと浮いていた。
「わーぉ」
トマトとか……生で食べられる野菜はまだいい。でも、ジャガイモや玉ねぎは厳しそうだ。
なぜ、この状況をおかしいと思わない？ カレー……食べたこと、あるよね？
「もしかして、黒角さん料理はあんまりしないー？」
「まあな。でも、カレーって煮込み料理だろ。ルー入れて煮込めばそれっぽくなるんじゃねえか」
ご飯を貰う約束をした手前、優は何も言えなかった。
そしてしばらく時間が経ち……においだけはそれらしくなった頃。
「作りすぎた……」
「う、うんー」
味見をしないままの肉無しカレーが鍋いっぱいにできあがった。
一方、暦 草司の部屋――。
草司はカップ麺に熱湯を注ぎ『３分待ってやる』と見下ろしながら呟き、だらしない姿勢で３分経つのを待っていた。暇だからカップめんの成分表示を見てみる。１０秒で飽きた。それでも成分表示を見続けてゲシュタルト崩壊を起こしかけたころ、ドアを叩く音がして我に返った。
「おや、黒角君と初島君か。どうしたん？」
「カレー作りすぎたんでわけに来た」
「黒角君……君はいいお嫁さんになれるよ」
「ほ、褒めても何も出ないからな……」
湖陰が照れたように顔をそむける。湖陰の後ろにいる優は何かをあきらめたかのように微笑んでいた。
「ご飯は持ってきたよー」
「ありがとな、初島君。さて、カレーはどんなかなー。甘口？ 辛口？ 種類は？」
草司が期待を込めたまなざしを優に向ける。おいしいカレーを想像していた。
「えっとねー。野菜カレーで、たぶん甘口ー？」
「いいねー。じゃ、お鍋拝見」
皿にご飯をよそってスプーンも準備し、後は食べるだけ。草司は鍋の蓋を開け、中身を確認するとそっと蓋を戻して優に微笑みかけた。
「これはよいものだ」
「だよねー」
再び鍋の蓋を開けてみたが中身は同じだった。それぞれの皿に野菜を３つずつくらい乗せる。スプーンからはみ出る大きさの具材。これが肉なら狂喜乱舞は確実なのだが……。いや、野菜も大好きだけどね。けちをつけたいわけじゃないんだ。
「俺、浮いた金でラケット買うんだ。チタン製の軽いやつ。いやそれよりガットのが先かな」
湖陰の弾んだ声を聞きながら草司は覚悟を決める。フォークでジャガイモをぶっさすと、ちょうど真ん中あたりで止まった。うん、生だ。
「普段からカップ麺多くて野菜あまり食べてないからこれはありがたい。早速いただきます」
シャリシャリと音を立てながら草司がジャガイモを胃の中におさめていく。優はそんな彼の姿を美しいと感じた。
「生、だな……」
「そう、だねー……」
湖陰は火が通っていないことにやっと気付いたが、暦が食べているのを見て無表情でシャリシャリと食べ始めた。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2013年09月13日
- 参加申し込みの期限
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- 2013年09月20日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2013年09月20日 11時00分
