鍵を開いて｜リアクション

鍵を開いて

　授業も終わり、愛猫萌々子はさぁ帰ろうと立ち上がった。そこでふとポケットを探ると普段そこにある筈の鍵を入れているカードケースがない事に気付いた。

「……え？」

　そして、他のポケットや鞄の中、机の中等思いつくところを確かめるがやはりない。
　記憶を遡ってみると、最後にカードケースの存在を確認したのは朝、教室についた時だ。つまりそこまではあったわけだから、通学の途中に落としたわけではない。そうなると必然的に学校のどこかに落としたという事になる。
　まずは職員室に落とし物がなかったかの確認にいくが生憎と届けられていなかった。

「そうなると見つかり難いところに落ちているんでしょうか？」

　どこで落としたのかの検討はつかないので、仕方なく萌々子は廊下を探し始める。
　すると、その途中で風紀委員の笛吹ぴりりと出会った。実のところ、とある一件があってから萌々子はぴりりの事を苦手としていた。
　その一件とはののこ様親衛隊として活動している時にぴりりに追われた件だ。

　萌々子は野々ののこの日常を見守る活動をしている有志で集まったののこ様親衛隊の親衛隊長をしており、その活動をする時だけ法被姿に仮面という恰好をしているのだ。
　はっきり言ってとても怪しい。とんでもなく怪しい。風紀委員であるぴりりからすれば話を聞く為に追いかけるのは何ら不思議ではない事だ。
　幸いな事にその追いかけた親衛隊長が萌々子である事には気付いていないので、普通の恰好をしている時に何か言われる事はないが、それ以来苦手なのだ。
　その為、ぴりりに会った時には少しびくびくしてしまっていたが、ぴりりは気付かずに萌々子に何をしているのか尋ねる。

「こんなところでどうしたのです？」
「あ……。そ、それが、どうやら家の鍵を落としてしまったみたいで……」
「そうなのですか？　分かりました、ぴりりも一緒に探すのです！」

　そうして始まる共同作戦。しかし、それでも事は簡単にはいかない。
　できるだけ今日の行動範囲を思い出し、通ったと思われる廊下や入った教室にも入り隅々まで探すものの見つからない。
　ここまで見つからないとなるともしかしたら学校ではないのだろうか。こうなると錠ごとの交換をするしか手はないが、最新式の鍵である為に一体どれだけの費用がかかる事か、と既に萌々子は諦めが入っていた。
　そうして、ぴりりにもう止めようと告げようとしたところで、顔を床につけて棚の下までじっくりと探しているぴりりの姿が目に入った。

「そ、そこまでしなくても……顔が汚れますよ！」
「でも、鍵がないと愛猫さんが困るのです！」
「笛吹さん……」
「あ、何か奥にあったのです！」

　と、棚の下からぴりりが取り出したのは萌々子が見覚えのあるカードケースだった。

「あ……。でも、これは鍵じゃないのです」
「いえ、それです！　それが私が落としたカードケースです！」
「え？　でも、鍵じゃないですけど」
「あ、カードキーって言ってませんでしたっけ？」

　こうして二人は無事に共同作戦を完了する事に成功した。

「本当にありがとうございました」
「これくらい風紀委員として当然の事なのです」

　誇る事もなくそう言うぴりり。それを見て萌々子は思う。ここまで人助けに一生懸命になれるぴりりは本当に優しい人なのだと。

「笛吹さんには風紀委員ってぴったりですね！」
「当然なのです」

　少しだけぴりりの事が知る事ができた、そんな一日であった。

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あとがき

担当マスター：昂祈
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昂祈です。
鍵を開いてのリアクションをお届けいたします。

鍵というと、小学校や中学校の教室の鍵が普通の鍵より随分と長い鍵だったのを覚えています。
教室の扉自体が普通の扉とは違うので、鍵もまた違う形状なのは分かるんですがあそこまで長い必要はあるのだろうかと今でも気になっています。
それとも生徒が使う事もあるので、あれは紛失し難いようにあんなに長くなっていたりするんでしょうか。

さて、今回はここまでという事で。
それでは、この度のシナリオにご参加頂きありがとうございました！

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