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雪空に憂う
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【移ろい巡る】
痛いほどの寒風に全身をあおられ、
森篠 琳子
は踵を返す。このまま玄関に佇んでいたところで、空が晴れるまではずいぶんと待たされることになるだろう。
(すぐにバイトへ行くつもりだったけれど)
気持ちがすっかり仕事へ向いていたところに肩透かしを食らい、なんだか胸に隙間風を感じつつ、図書室へ向かう。浮いた時間を潰すにはぴったりだ。
(なんだか……ツイてないわね)
下校を吹雪に妨げられたことを除けば特段何か不運に見舞われたわけでもないが、琳子は状況をそう評した。
冷えているのは身体ばかりではない。
図書室に利用者はおらず、勤勉な図書委員だけがカウンターで忙しなくペンを動かしている。
足は自然と図書室へ向いたものの、読みたい本があったわけでもない。何冊か取り出し、表紙を眺めてからぱらぱらとページを繰ってみるも興味はそそられず、すぐに意識は窓の向こうの寒空へと移ってしまった。
几帳面に本を戻してから、吸い込まれそうに厚い雲を飽くまで眺める。
まるで今の琳子を象徴するような、この深い灰空よ。
進学をあきらめた。
琳子の胸に重くのしかかっているのは、それだろう。無論決めたからには後悔しないつもりだが、その決意はいささか虚ろである自覚もあった。
家族へ何も残していってくれなかった父への想いも複雑であり、琳子の心的活動へたびたび混乱をもたらす要因ではあったろう。
言わずもがな、18と9つの姉妹を擁する母子家庭の生活は困窮した。自分はなんとか耐えられるとしても、まだ幼い妹を思うたび琳子の胸は締め付けられる。保険外交員として勤める母も体が丈夫なほうとは言えず、この先状況がどう転ぶか分からない。
事ほど左様に、琳子がバイトに勤しむのは経済的な逼迫によるものが大きい。のっぴきならないこの状況でなんとか家族が食いつなぐため、必死の毎日だ。泣きたいこともあるし、実際に人目はばからず泣いたことだってあった。
決して琳子自身の落ち度ではないことが、胸に暗く靄を立ち込めさせていた。
この春からは、琳子も社会人だ。卒業後は寝子島信用金庫への就職が既に決まっている。
成績優秀で責任感も強く、人当たりの良い琳子は重宝されるだろう。時おりうっかり顔を覗かせてしまう神経質は、なんとか折り合いをつけていきたいところだ。
なんとかなる。きっとやっていけるだろう。母は心配してくれるが、きっと大丈夫。
ちょっと自由をあきらめるだけだ。たったのそれだけで、母も妹も、自分も真っすぐに暮らしていける。何の問題もない。
(……っ、ダメ……)
ぎゅっとまぶたを閉じた。気を緩めればこぼれ落ちてしまいそうだったので。
納得したつもりだ、そのつもりだが、18歳の琳子の精神は真に成熟したとは言い難く、決断を疑わずにはいられない。そうだろう。仕方のないことだ、どうしようもないことだが、だからといってすんなりと割り切れるだろうか。18歳の琳子が……。
「やあ。これは綺麗な晴れ間だね」
「っ、あ」
いつの間にやら没入していたらしい。隣に人が立っていることにも気づかなかった。
司書教諭の
早川 珪
だった。
生徒の数も少ないこの部屋の中、どこか堪えるような琳子の様子を気にしていただろうはずの彼は、大丈夫かい? とは尋ねなかった。代わりに、
「あたたかい夏もいいけれど、僕は冬も好きなんだ。優れた文学作品の降雪描写の巧みさには舌を巻くし、僕自身もね、日の光をはらんで淡く光る雪雲を仰ぎながら歩くのは、思いのほか気分がいいものだよ」
そんなことを言った。先生の意図が分からず、琳子は思わず小首を傾げる。
彼はやわらかく笑んだ。
「もっとも、僕は案外節操がないんだ。春になれば春の楽しみを探すし、桜並木を見事に表現した小説を読みたくなる。夏にはトロピカルなリゾートが舞台の推理作品なんてのもいいし、秋には……焼き芋が食べたくなるよね」
「……ふふ」
つい、頬が緩んだ。彼の言葉に共感したかというと、そうとも言い切れない。ただ少なからず、肩の重みは軽くなった。
「季節は巡る、ですね」
「そうだね。良いことも、悪いことも、流れて移ろうものだから」
そして全てが思い出になってゆくんだよ、と彼は言った。
そろそろバイトの時間なので、と早川先生に一礼して図書室を出ると、玄関へ。靴を履き替え外気へ身をさらすと、ようやくにして琳子は息を吸い込んだ。大きく、深く。
天を仰ぐと、淡く光をはらんで輝く雪雲から切れ間が覗き、くっきりと目にまぶしい光が降りそそぎ、街を包み込んでいた。
物思わず、無心に。今だけは憂いなく、見つめ続けた。
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あとがき
担当マスター:
墨谷幽
ファンレターはマスターページから!
墨谷幽です。『雪空に憂う』のリアクションをお届けいたします。
墨谷は雪国に住んでおりますので、雪というのはごく日常的に接する普遍的な存在です。
なもので、普段は雪に対して特別の感慨を抱くことは無かったりしますけれど……なんというかこう、ふとした瞬間に、雪降る光景が妙に愛おしく思えることもあったりします。最近は特にそう感じることが多くなったかもしれません。
というのも、一昔前の北海道の冬、特に都会の雪景色というのは、あまり綺麗なものではなかったのですよね。スパイクタイヤがアスファルトを削ってしまうことで粉塵が舞い、路肩に積まれた雪は常に黒く汚れていました。今ほどペットに対する意識が高くなかった時代でもあり、雪道にはワンちゃんのあれやこれやが染みてたり転がってたり踏まれてたり……食事時に読まれている方がいらっしゃいましたら、汚い話でたいへん申し訳ありません! ともかく、子ども心に愛着を持てるような光景ではなかったわけです。
今ではスパイクタイヤは原則禁止となりスタッドレスが主流になりましたし、ワンちゃんのお散歩ではきちんと後始末をする方が増えて、雪道も比較的綺麗になりました。
雪、いいなぁ。とようやくにして思えるようになり、今回このようなシナリオも出させていただいたという次第です。
皆さまも、雪に対しての想いやスタンスなどは様々であろうことと思います。
アクションからもそれぞれ違った見方が伝わってきて、興味深かったです。
雪を通じて皆さまのキャラクターを掘り下げるという試みとなりましたけれど、お楽しみいただけましたら幸いです。
それでは、今回もご参加いただきまして、ありがとうございました!
次の機会にもまたお目にかかれますことを、心よりお待ちしております。
お疲れさまでした~!
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
墨谷幽
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
日常
オールジャンル
定員
5人
参加キャラクター数
5人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2020年05月30日
参加申し込みの期限
2020年06月06日 11時00分
アクション投稿の期限
2020年06月06日 11時00分
参加キャラクター一覧
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