……アンド・ユア・バード・キャン・シング｜リアクション

……アンド・ユア・バード・キャン・シング

　海風は弱まる気配すらなく、鉛色の空もあって波打ち際はひどく寒々しい。
　ただ太陽の隠れている部分だけが、半熟卵のように朧（おぼろ）な光を投げかけていた。
　息をはずませ御剣刀は走る。
　日課のランニングだ。下手に触れれば切れそうなほどの冷気がかえって心地いい。

「……？」
　堅い音がして、砂地になにかが転がった。
　つま先が当たったようだ。薬瓶に見える。
　手にしてみれば果たして薬瓶で、ラベルは剥げ落ちて読むことができなかった。
　その一方で瓶の内側に折りたたんだ紙が入っていること、紙は濡れていないことはすぐにわかった。
　瓶入りの手紙か。
　――面白そうだな。
　瓶の口は難なく開いた。
　小学校二年生程度の学習プリントらしかった。教科は『さんすう』。
　問題はその裏だ。細かい手書き文字でびっしりとメッセージが書かれていたのだった。少なくとも小学校二年生が書いたものではあるまい。
　紙を広げて三度読み返し、思わず刀は口走っている。
「全然面白くねえよ！」
　ランニングは中止だ。

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