ねことねずみと魔法の街｜リアクション

ねことねずみと魔法の街

●Epilogue.動く花火大会
　何かが弾けるような音に遠海はハッと目を覚ました。
「あ、花火……」
　見上げた空には無数の花火が上がっている。
　魔法を練り込んだ火薬玉は複雑な軌跡を描きながら、夜空に無数の鮮やかな花を咲かせた。
「すごい……！　色とりどりできれい！」
　いつもは花より団子の遠海でさえ、このときばかりはしばらく夜空の花火にしばしの間ただ茫然と見惚れてしまっていた。

「ふわー。動くチーズの花火とは、あちしもびっくりでちゅ」
　パティもまた、夜空の花火の動きに、目を丸く見開いていた。
　最初に三角のチーズが浮かび、そこに無数の穴が開いて、穴あきチーズができるというアニメーションの花火だった。
「……なんだか、お腹が減る花火でちゅね」
　ふと気づくと、会場では残り物のチーズとワインを配っている。
　パティは、それらを片手に、花火酒（ワイン？）を決め込むことにした。

「きれいだなぁ」
「うん。僕、こんな派手な花火を観るのは初めてだよ」
　円盤レースを終えた瀬莉とタルトも花火を見ていた。
　ここにも、例のおもちゃ会社が噛んでいるらしく、円盤が動きまわるアニメの花火が終わったかと思うと、社名のロゴが夜空に浮かんだ。
「……そこまでする……？」
「あはは、商魂たくましいねー」
　瀬莉は唖然とし、タルトがあっけらかんと笑っている。
　と、そのとき。
「あ、さっきのねずみさん！」
　おもちゃ市のあの店員の声が瀬莉とタルトを目ざとく見つけた。
　瀬莉とタルトが互いの目を見るや否や、脱兎のごとく逃げ出したのは言うまでもない。

　拓郎は、彩葉の助力を得て、いつもより少し早くその日の配達を終えた。
「……ありがとう、魔女さん……おかげで凄く助かった……」
　彩葉が箒に乗って、拓郎の配達を手伝ってくれたのだった。
「いえいえ。困ったときはお互いさまだよー」
　頭を下げる拓郎に、彩葉ははにかむように手をぱたぱたと振った。
　と、そのとき、「ドンドンドン！」と大地が震えるような音が響き、空に無数の花火が上がる。
「わあ、きれい……！」
　彩葉が感嘆の吐息を漏らす。
「……だね」
　拓郎も頷き、そこで「あ」と声を上げて、バッグをがさごそと探り始める。
「……これ……どうぞ……」
　そう言って拓郎がバッグから取り出したのは、二人分のお菓子とジュースだった。
「え、いいの？　ありがとう！　あ、じゃあハンコを押さなくちゃだね」
「あ、いや……はんこはいいです……これは自分からの差し入れです……！」
「え……？」
「……あの……だから、というわけじゃないんだけど……もう少しこのまま一緒に花火を見ませんか……？」
　拓郎の言葉に、彩葉はしばらく驚いたような顔をした後、にっこり笑って「……うん」と頷いた。
　それから、しばらく拓郎と彩葉は二人並んで静かに夜空の花火を見上げ続ける。
　そして、最後の花火は――。
「「あ……」」
　マジカルタウンを陰で支える「配達員」と「魔女」への感謝のメッセージが綴られた、とても心温まる美しい花火だった。

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あとがき

担当マスター：水月鏡花
ファンレターはマスターページから！

というわけで、ご参加いただいた皆様、お疲れ様でした。
MSの水月鏡花です。

そんな感じで、今回は魔法の街でした。

「ねこ」と「ねずみ」というと、某カートゥーンアニメの主題歌を思い出してしまう水月ですが、マジカルタウンでは特にケンカもせずに普通に仲良く遊べているようで何よりです。

現在、リアルワールドでは色々と大変な状況が続いていますが、せめて寝子島の中でだけでも、楽しい夢と魔法の世界の雰囲気を味わって頂けたなら幸いです。

では、最後になりましたが、ご参加いただいたPCの皆様と「らっかみ！」に関わる全ての方々に感謝を。

それでは、また次のあとがきでお会いできることを祈って。

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