ねことねずみと魔法の街｜リアクション

ねことねずみと魔法の街

●おさかなさん天国
　マジカルタウンの名物の一つに、不定期で開催される『魚の大食い大会』がある。
『おさかなさん天国』と題されたそのイベントには、一度耳にすると頭から離れない独特のテーマソングがあるが、詳しくはオトナの事情で触れない。
　さておき、マジカルタウンで暮らすネコの一匹である楡宮遠海は、不定期で開催される『おさかなさん天国』を楽しみにしているネコのうちの一匹であった。
　だが、しかし。
「困ったわね」
　その日、イベントで嬉しいはずなのに、遠海の猫の額には深い皺が寄せられていた。
「今日は、巨大チーズの食べ放題イベントもあるのよね。私、ネコだけどネズミ――じゃなかったチーズも大好きなの」
　ぽそり、と「ねずみ」が聞いていたら裸足で逃げだしそうな言い間違いを正しつつ、遠海はこめかみに指を当ててどちらに参加すべきか悩んだ。
　そして――。
「困ったときは「両方参加」よね！」
　その数時間後には、食べ放題のために腹をセーブしつつ、『おさかなさん天国』に参加する遠海の姿があった。

　響タルトは、マジカルタウンで暮らす「ねずみ」の一匹だ。
　タルトは、その日の午後に開かれる『チーズ食べ放題』が開催されるまでの時間潰しに、『おさかなさん天国』に観客としてやってきていた。
「さあ、やって参りました、みにゃさまお待ちかねの『おさかなさん天国』！！　今回の最初の料理は――山盛りのイワシにぼしですにゃ！」
　司会の三毛猫のシャウトに、観客が湧いている。
「うわー、噂には聞いていたけど、本当に凄い量だなぁ」
　タルトは、用意された山のようなイワシに唖然としている。本当に食べきれるのだろうか。
「制限時間は僕のお腹がなるまでですにゃ！　それではスタート！」
　合図と当時に、遠海の両腕が閃いた。
　刹那、彼女の皿の上に乗っていたにぼしがごっそりと減り、次の瞬間には彼女の胃袋の中に消えている。
「おーっと！　一番のニレミニャ選手、すばらしい食べっぷりですニャ！　でも、最初かっらそんなに飛ばして大丈夫かニャ～～～？」
　司会の解説に、しかし、遠海は平然としている。
「まあ、この程度は軽いジャブよね」
「にゃんですよ！？」
　驚きの発言に、三毛猫の尻尾が「！」の形になっている。
「……うーん。すっごく美味しそうに食べるなぁ。なんだか僕までお腹が空いてきちゃった……」
　タルトは、遠海の食べっぷりに、ぐぅとお腹が鳴りそうになるのを感じる。
　その後も、遠海はアジ、ブリ、タイにサケなど順繰りに大きくなっていく魚を平然と食い散らかしていく。
「優勝は一番のニレミニャ選手ですにゃ！！！」
　カンカンカンとゴングがなり、遠海が表彰台に上るまで、それほど長い時間がかからなかった。

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