抜き打ち！　持ち物検査｜リアクション

抜き打ち！　持ち物検査

「持ち物検査……？」

　登校中、校庭の様子を見回して、嘉渡洲稀跡は首をかしげる。

　校庭の内外や、あちこちで抜き打ちの持ち物検査が開始されている。

　ただ……。

（風紀委員会以外にも、躍起になっている人がいるみたい）

　あの「下手人をしょっ引くぜ」とかいっているサンマやマンボウは何なのだろう。

　かなり乱暴に、持ち物を没収されてしまう人もいるようだ。

（おかしいわ）

　彼女の勘が燦めいた。

　皆を守らなくてはならない。

　だが、彼女の戦い方は一味違う。
　
　自分の立場を利用し、状況を観察する。そして一気に、自分の有利な方に持ち込む。

「私も、検査担当に回るわ」

　生徒会会計の立場を利用。すぐさま腕章を巻いて、ほいほいと検査を始める。

　桐島先生も、何もツッコミを入れることはできない。

「……そちらの方は大丈夫？」

　いまだ凝固しているぴりりを指で示す。

　ぴりりの手にした萌々子のスケッチを取り上げ、

「見られては困るもの？」

　萌々子に尋ねる。

　彼女が頷くと、稀跡は不透明の袋を取り出し、その中にスケッチを入れる。

　素早く、手際よく、それでいて美術品としてスケッチに最大級の敬意を払う、稀跡の見事な手際に、思わず周囲から拍手が起こる。

　半透明の袋を使って、回収を効率アップ。

　これなら、生徒の尊厳を守ることも出来る。

　メモを工夫して、個人情報を守れるように書くことができれば、よりプライバシーは確固たるものとなる。

「成程」

　桐島先生が、納得したように頷く。

「し、しかし、それじゃですぜ、きっちりお縄につけるって仕事が……」

「お縄につける？」

　サンマの一言に、稀跡が鋭い目を向ける。

「信頼関係を損ねてしまうのなら、検査の意義がなくなってしまうのでは？」

「あ……いえ……その……」

　しどろもどろになるサンマ。

　持ちなれぬ権力を手にして、ちょっと調子になってしまった彼への痛烈な一打だった。

　その時。

「きゃー」

　悲鳴が上がった。

　一同は、そちらに向かう。

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