あそぼう、アニマルの森｜リアクション

あそぼう、アニマルの森

【家づくりの章】

　小山内海と桜庭円は、友人のブリジット・アーチャー宅に集まり、3人で一緒に遊ぶことになった。
　3人はそれぞれにゴーグルを装着し、同じ島で一緒に遊ぶことになる。
「よし、先ずは武器を回収しよう、火力こそすべて！」
　クロネコのアニマルになった円が開始早々に物騒なことを言った。
「随分とデフォルメされちゃったけど、やるべきことは一緒！　みんな生き残るためには準備がすべてさ！　時間との勝負だ！」
　羊のアニマルになった海と猫（アメショ）になったブリジットは「まったくわけがわからないよ」という顔で互いに顔を見合わせていた。
　しかし、円がギターを作りながら「で、食人鬼はいつ襲ってくるんだい？」と訊いたあたりで、ようやく状況が掴めてきた。
「円、それは森は森でも森違いよ」
「円ちゃん……それ、別のゲーム」
　海とブリジットの二人に同時に突っ込まれ、円は猫の目を丸くしてギターを作る手を止めた。
　ちなみに、この世界ではテキストチャットが使えるので、海もほぼ自由にチャットで会話に参加することができている。
「えー、アニマルのもりぃ？」
　円は思わず頓狂な声をあげた。VRゴーグル越しに声が聞こえてくるぐらい、円は驚いているようだった。
「闘争は無いんですか！？」
「ないわ」「ないよ」
　またも同時に突っ込まれ、ガックリと肩を落とす円。
　VRのキャラクターには存在感があり、肩を落とした円のクロネコにも妙な哀愁が漂っているのだった。

　佐藤瀬莉は体験版をプレイしてアニ森に興味を持ち、製品版をDL購入して島にやってきた。
「思ってたより安かったなぁ……」
　まだ小学生の瀬莉であるが、親がお金持ちであるために、お小遣いには余裕があった。
　すでに体験版はプレイ済であったので、瀬莉はチュートリアル的な要素をサクサクとクリアし、早速本格的な家づくりに取り掛かった。
　ちなみに自キャラとして選択したアニマルはリスで、すでに服も揃えている（ゴシックななドレス）。
「せっかくの無人島だから、家具も木材で統一したいよね。『きのイス』と『きのテーブル』、それから『きのタンス』もつくらなくっちゃ」
　手慣れた様子で瀬莉は『のこぎり』で『まるた』を細工し、理想の家づくりに励むのだった。

　卵城秘月は雨崎楓香の家にお呼ばれし、一緒に『アニ森』をすることになった。
　VRゴーグルをつけての二人プレイはぶつかる危険もあるため、二人は別の部屋でそれぞれにゴーグルをつけてプレイするという形を取った。
「わー！　花も木もどうぶつたちもかーわいー！」
　目の前に広がる光景に、楓香は感動の声をあげた。
　実際、デフォルメされたどうぶつたちは可愛い。
　そして、かくいう楓香自身もまたデフォルメされたネコの姿になっている。
「楓香君のアバターも可愛いし素敵だね」
　秘月は、VRの風景に目を奪われている楓香の横に立ち、そっと手を伸ばしながら言った。
　が、伸ばした手はもちろん空を切る。
（ああ、そうか。これはゲームだったね）
　と、秘月は我に返り苦笑する。
「えー、そんなことないですよー。先輩のオオカミさんの方こそとってもカワイイですよー」
　楓香が少し照れたようにパタパタと手を振る。
　それに、秘月は少しドキリとする。
（……オオカミ、か。これは犬なんだけどね）
　まるで、楓香に触れたいという内心の欲求を見透かされたようで、少しばかり驚いた。
　が、そんなことはおくびにも出さずに、秘月は楓香に促す。
「さあ、早速だけれど、家づくりを始めようか。道具や材料の調達の仕方は前に教えてあるよね？」
「はーい！　よーし！　素敵なおうちをつくるぞー！」
　元気良く挙手して島を駆け出す楓香の後ろ姿は、やはりとてもとても可愛らしく秘月の目に映った。

このページにイラストを設定する