ゲーム世界の外と中｜リアクション

ゲーム世界の外と中

●想定外の恐怖

　白真白は気が付いた時にはどこかに飛ばされていた。
　寝子島の景色から一変、周囲は薄暗い雰囲気に包まれている。
　視界が悪く、自分がどこにいるのか分からない。

「ここはどこだろう？　っていうか暗っ！」

　今いるところは明かりが無く、周囲の状況を掴めない。

「何故か携帯も無いし……なにか灯になりそうなものないかな」

　真白はそれを探そうと暗い中を慎重に移動する。だんだん目が慣れてくると、うっすらと物の形が分かってきた。すると、ランタンのようなものを見つけたので手に取ってみる。

「これ、ランタンよね？　よく見えないけど」

　表面をなぞるように手を動かし、その形を想像する。

「あ、たぶん電池式だわ。それならスイッチが……あった」

　カチッという音とともに真白の周囲を照らす。
　先ほどまで気づかなかったが、かなり荒廃した部屋だった。ランタンで注意深く見てみると、家具や壁がボロボロなのが分かる。しかし、なぜか既視感があった。

「んー、この部屋、なんだか見覚えがあるような気が……」

　頭の中に、もやがかかっているような感覚に陥る。真白はそれを解消しようと部屋をさらに観察する。

「あ、そっか！」

　そうする内に、あることを思い出した。

「どこかで見たことあると思ったら『漆黒屋敷の迷宮』だ。あのゲームの中にこんな感じの部屋があったはず」

　謎が解けて納得するも、新たな疑問が生まれる。

「……え、てことはここはそのゲームを再現した場所ってこと？　それともゲームの中そのものとか……神魂絡みならそれもあり得るよね」

　確信は無いが、可能性は十分ある。

「どちらにせよ脱出を目指した方がいいかな。ゲーム中にせよ再現した場所にせよ、ね」

　ランタンがあるとはいえ、見えるのは狭い範囲だけ。
　不気味な雰囲気も相変わらず。早く出るに越したことは無い。真白はドアに向かうが、鍵がかかっていて出られない。

「えーと、ゲーム通りならこの辺に鍵が……あったあった」

　明かりを頼りに引き出しを開けると、見たことのある鍵が出てきた。

「やっぱりゲームの通りなんだね」

　それを改めて確認すると少し安心した。鍵をドアに差し込むと、カチッという音で開いた。

「これなら何とかなりそうかな」

　ゲームの内容を思い出しながら移動する。
　ランタンの光は遠くまで届かないが、やったことのあるゲームなので、おおよそ進むべき方向は分かっている。ドアを開けて、情報を集めて、謎を解いて。そうして順調に進んでいく。
　しかし、次に入った部屋で違和感に遭遇する。

「確かこの部屋は、タンスの中に鍵が……あれ？」

　調べようと思ってタンスに近づくと、既に誰かが触れた形跡がある。鍵で開けるはずだったドアも誰かが通った後のようだ。

「ど、どういうこと！？　だれか私の他にもいるの？　で、でもこのゲームって１人用だったよね……？」

　困惑する真白。
　じつは真白が来る前に、水守流が先にここへ訪れていた。
　彼は鍵をすぐに発見して次の部屋へと向かっていったが、真白がそれを知るはずもない。

『ギャアアアア！？』

「な、なに今の声！？」

　追い打ちをかけるようにアイランの悲鳴が聞こえた。しかし真白には誰の声か分からない。

（ゲームだとこんな声なかったはず……え、これゲームじゃないの？　再現だって普通はそういうところは抑えるよね）

『イヤアアアアア！！』

「ひいっ！？」

　さらに続く絶叫。思わず変な声が出てしまった。

「もー！　一体何なの！？」

　思わず頭を抱えてしまう。
　その後もどうにか探索を続けるものの、疑念と困惑が拭えない。
　早く出たいという一心で先へ進み続けて、ようやく金の鍵を手に入れるとなんとか屋敷から脱出した。

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