ゲーム世界の外と中｜リアクション

ゲーム世界の外と中

●タイムアタックの如し

「うへぇ、このいかにもホラーな雰囲気……また面倒ごとに巻き込まれちまったようだな」

　水守流は深々とため息を吐いた。
　気が付いた時には、どこかの屋敷に飛ばされていたようだ。全体的に薄暗く、何が起こっても不思議ではない空気が漂っている。

（おいおい、俺はただの男子高校生だぜ？　幽霊退治とか専門外だっつーの……）

　びくびくしながら、それでも歩いてここがどこなのか探る。自分の足音がやけに大きく感じられた。

「と、とりあえず怪物に会わないように気を付けながら探索をしていくか」

　どんな怪物が潜んでいるか分からない。この屋敷にはそんな風に思わせるものがあった。しかし、流は探索しながら奇妙な感覚を抱いていた。

（この屋敷……何かで見たことがあるような気がするんだよな……デジャブってやつか？）

　屋敷のなかがどうなっているのか、少しずつ明らかになるにつれて、流の既視感は増していく。この屋敷に来た覚えはないのに、なぜか知っているように感じる。

（謎だ……）

　そんなことを思いながら歩を進めると、鍵の掛かっているドアを見つけた。ただ鍵穴もドアノブも無いので、どうやって開けるのか分からない。

「ここのドアは鍵がかかってるみてぇだな。……でも鍵穴がないっていうか、ドアノブすら無い。ってことはどっかに開けるための仕掛けでもあるのか？」

　なにか手掛かりを探そうとその周辺を確認する。そのとき、なにかを引きずるような音が聞こえた気がした。

「ん？　なにか聞こえたような？」

　音がしたのは通路の曲がり角。
　その音はだんだん大きくなり、その姿を現した。人の形をしているが、腕が異様に長く、手には斧を持っている。

「……うおお！？　怪物が！？　やばい！！　にげろー！！」

　即座に反対側へ逃げる。
　怪物は咆哮をあげながら流を追いかける。流は後ろを振り返る余裕もなく、必死に逃げる。

「ぜぇ……ぜぇ……」

　どうにか撒いたようで、壁に手をつけて肩で息をする。どのくらい走ったのか皆目見当もつかない。

「ふう、逃げ回ってたら、また違う場所についてしまったぜ……」

　地道に探索したエリアから随分離れてしまったようだ。
　しかし逃げている最中、聞こえてきた声や通路の様子で流はあることに気づいた。

「これゲームの世界だ！　確か前にこんなゲームやったことあるぜ！」

　さっきの怪物も思い返せば、そのゲームに居た気がする。
　ここがゲームの世界なら必ず攻略法が存在する。流はそう確信した。

「ゲームとわかれば話が変わってくるぜ」

　彼の目がキランと光った気がした。

「怪物たちのルーチンを予想して動きながら、ギミック解いてけば脱出もいけるってわけだな！　そんじゃ早速さっきの扉の仕掛けからやってくとすっか」

　その後の行動は早かった。
　ゲーム攻略に必要なものは感覚で分かっている。部屋を調べて、アイテムを回収。それを活用して次の場所へ。いちどプレイしたことがあるはずのゲームなので、おおよその見当もつく。落とし穴を回避したり、隠し扉を通ったり。

　しかし、予想外は起こるもの。
　クローゼットを開いた途端に中からぬいぐるみの山がなだれ込んできた。

「おわっ！？」

　その波に押されるように後退し、流はぬいぐるみに埋もれてしまった。

「びっくりしたー……！　ゲームをやった時はこんな仕掛けなかったぞ！？　どうなってるんだ……」

　ここにはパズルのヒントがあるだけ。混乱しながらもそれを確認し、先へ進む。
　その後も見知らぬ罠に驚きつつも、タイムアタックのように進み続ける。
　そして脱出に必要な金の鍵を入手すると、玄関の鍵を開けて外へ出た。

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