ゲーム世界の外と中｜リアクション

ゲーム世界の外と中

●協力プレイ

　仙藤紫と仙藤蒼は自宅で寝ていたはずが、気づけば見知らぬ場所に飛ばされていた。蒼は落ち着いた青色を基調にした服で、水玉模様が描かれている。紫は体を包むような温かい赤色の服に、うすくグラデーションが掛かっている。
　２人は、はじめは夢のなかではないかと思った。

　蒼は自分たちのいる場所をよく観察すると、どうやら古い屋敷のようだ。何年も誰も住んでいないのか、暗くてひんやりしている。紫も不気味な雰囲気を感じ取っていた。
　ここが夢でないと判断するには十分だったし、神魂の影響でここへ飛ばされたのも容易に想像がついた。

「お姉ちゃん、どうしようか」
「そうね……」

　２人はできるだけ冷静に自分たちの置かれている状況を考える。
　しかし薄暗い部屋が明るくなる気配は無く、このままでは埒があかない。とりあえず屋敷の中を調べることにした。

　部屋を出ると、長い廊下が続いており、他にも部屋があるのが分かる。紫は蒼の手を取ると、はぐれないように気を付けながら歩き出す。
　ギギギと、鈍い板の音が不気味さに拍車をかける。時折、バキッと何かを踏んだ音が響くと蒼は驚いた反応を示す。紫も驚いているのだが、表面上は動じる様子を見せない。
　そうして進むうちに、蒼はどうもここがゲームの中のように思えてきた。

（この雰囲気からして、ジャンルは多分ホラーアドベンチャー。驚かす側に回るのもそれはそれで良さそうな気がするけど、ここはやはり脱出するのをリアルで体験したい）

　リアル体験型ゲームだと捉えると、蒼はだいぶ気が楽になった。
　紫は蒼がゲームの中だと悟ったようで、なんだかうれしそうになってくるのがわかる。ただずっと２人で怯えて進むよりも遥かにいいだろう。
　そんなわけで蒼は、クローゼットや机の引き出し、額縁の裏など色々と探してみる。そういったところに脱出に必要なアイテムとかが隠されているだろう。
　トラップや魔物が潜んでいてもおかしくないが、行動しなければ脱出の手掛かりは見つけられない。じつにゲーマーらしい判断で情報を集める。もちろん紫も一緒になって、鏡台や本棚の中などを調べる。
　すると蒼は何かメッセージのようなものを見つけた。しかし少しの言葉と大量の記号が並んでいて、何を意味するのか分からない。

（これはたぶん……暗号かな）

「ねぇお姉ちゃん、これ見て」
「……暗号かしら」

　２人で頭を回転させて、この紙の意味を考える。しばらく考えてどうにか解読すると、ある種の文字列を手にいれた。おそらくどこかで使うパスワードだろう。いつ役に立つかは分からないが、一応控えておくことにした。
　その後も探索を続けるが、順調とはいかなかった。床の崩落トラップに掛かって、あやうく落ちかけたり。正体不明の化け物に見つかって必死に逃亡したり。

「はぁ……はぁ……」

　２人とも肩で息をしながら、安全と思われる場所で休息を取る。

「お姉ちゃん、大丈夫？」
「ええ……。蒼は？」
「なんとか大丈夫」

　十分に休んだ２人はゆっくり立ち上がって探索を再開した。
　その後も罠に遭遇したり、化け物をやり過ごしたりしながら、屋敷の主人が居そうな部屋を見つけた。おそらくゲームの中ではかなり攻略が難しい部屋なのだろう。数々の罠をかいくぐり、先ほど解いたパスワードを使って黄金の鍵を手に入れた。
　
　今まで見てきた鍵とは明らかに雰囲気が異なる。直感的にこれが脱出用の鍵だと２人は思った。
　さっそく玄関へ向かうと、その鍵を使って屋敷の外へと出た。

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