ゲーム世界の外と中｜リアクション

ゲーム世界の外と中

●驚かす楽しさ

　響タルトは見知らぬ屋敷のなかに気づけば立っていた。
　しかし寝子島でこういった事態に巻き込まれるのは慣れている。不気味な空間を観察するうちに、ゲームの中だとすぐに気づいた。

「この感じはホラーゲームかな？　それなら驚かす側に回るほうが楽しそう！」

　最初は人に声を掛けようと屋敷のなかを歩き回る。しかし屋敷が広大で、なかなか遭遇しない。すると、廊下の向こう側からこちらにやってくる人影が見えた。

（おっ、誰かきたかな？）

　タルトはそのまま歩き続け、その人物――アランと出会った。

「キミ、名前は？」
「アラン……です」
「こんにちは、アランくん。僕はタルト、よろしくね♪　ところで、どんなカップリングが好き？」
「え……カップリング……？」
「うん、そう。ねぇねぇどんなのが好き？」

　アランは返答に困っていた。
　アランを通じて会話をしているアイランも、この予想外な質問に困惑しているかもしれない。

「よく、分からないかな」
「そっかー。まぁまぁ、色々調べていこう！」

　アランと一緒になって怪しそうな箱や扉をどんどん開ける。罠があるかもしれない。化け物が飛び出すかもしれない。だけど、そんなことはお構いなしにどんどん開けて、どんどん進む。

（何かあったらアランくんを盾にしよう♪）

　なかなかすごいことを思いながら、タルトの進行は止まらない。アランからしたら、敵か味方かよく分からない。それでもゲームはゴールへ近づいていく。
　しかし最後まで順調に進むほど甘くなかった。とある部屋のパズルを勢いに任せて解こうとしたところ失敗して、罠が発動した。突然部屋の中からゴーストが現れて２人に襲い掛かる。
　２人は猛ダッシュで部屋を飛び出して、長い廊下を突き進む。

（やっちゃったー！）

　しかしこれもチャンスと思い、うまくアランとは別の道へ入った。ここからは驚かす側に回ろうと考えたのだ。化け猫の姿に変わったタルトは、人々を驚かそうと物陰に隠れる。
　まずは一旦はぐれたアランをびっくりさせようと、様子をうかがう。さっきのゴーストでアランの警戒心が強まっているのを感じる。

「にゃー！！」
「うわっ！？」

　警戒の不意を突くようにタルトは叫んだ。アランは腰が抜けるほど驚いたようで、尻もちをついた。タルトはすぐにその場から離れる。

（大成功！　よーし、この調子でじゃんじゃん驚かすぞー！）

　タルトと同じようにこの屋敷に迷い込んだ人々も脱出のために色々なものを調べているようだ。ある人には背中側から大きく鳴きながら迫って追いかけたり。また、別の人には宝箱の後ろから突然飛び出したり。
　皆がそれぞれの驚き方を見せるのをタルトは楽しんでいた。時には攻撃されそうになったが、その前にうまく逃げる。

　こうして出会う人々を驚かして楽しんだ。

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