雨の日の探しもの｜リアクション

雨の日の探しもの

　勝負はあっさりついた。
　ぬるぬるした手触りに戸惑ったものの、士は簡単にアマタロウを寄り切った。
「やはり熊ほどじゃないな。屁の河童だ」
「サラノミズサエアレバ……」
　余裕の士に、アマタロウが悔しそうに言う。
「カッパ巻き食べるか？」
　士が買っておいたカッパ巻きを取り出すも、アマタロウは俯いている。
「水が欲しいならやろうか」
　修がミネラル水を取り出し蓋を開けて渡す。
「アリガトウ」
　たどたどしくアマタロウは言い、頭の皿に水を注ぐ。

「皿の水がないと弱くなるの？　だから雨の日に現れるんだね」
　円が言う。
「じゃあもう一回僕とやってみる？」
　俯いていたアマタロウが顔を上げた。
「イイノ？」
「大丈夫か、桜庭。皿に水がある河童は強いぞ……」
　刀が気遣うが、
「大丈夫、僕だってそう簡単にはやられないよ。川に落ちそうな時は助けてね」
　円は笑顔だ。軽くウォーミングアップする。
「試合前の礼はなしでいいよ」
　引き続き行司役をする刀が呼び出しをする。
「よし。東～桜庭川。西～アマタロウ。見合って」
　両者、土俵で向き合う。
「はっけよい、のこった！」
　円はアマタロウをよく観察していた。
　相撲では勝手が違うとはいえ伊達にボクシングをやっていない。
　相手の肩や足の体重のかけ方を見て、左右、どちらか避けやすい方を予測する。
　突っ込んできたアマタロウの勢いを利用し、背中を押しそのまま、倒そうとする！
「くっ……！」
　スピードと、小さな体に似合わぬパワーに、押し切られそうになるも。
　円はなんとかかわし、アマタロウを地面に転がした。
「スゴイ、ツヨイネ」
「桜庭川の勝ち！」
　傍目にも今回はいい勝負だった。
「面白かった！　カッパ巻きもらっていい？」
　そう言う円に釣られたように、アマタロウもカッパ巻きに手を伸ばす。
「オイシイ」　　
　　
「相撲は苦手だがあっち向いてホイとか得意だよ。やってみる？　ルール教えるけど。
勝ったら色々教えてよ。君達のこと」
　天野の言葉に、カケルとケンも近づいてきた。
「ジャンケンわかる？　水かきってチョキが出しづらいのかな？」
「それならおれたちだってできるよ、教えてやる」
「チョキは指２本……、あれ、これどうなってるんだ？」
　どうにかグーチョキパーの区別をつけ、ルールを説明する。
　アマタロウの目が輝いてきたようだ。
「よし、行くよ。ジャンケンポン！　あっち向いてホイ」
　天野の指先に釣られ、アマタロウがそちらを向いてしまう。
「やった、勝った！」
「ウーン、モウイッカイ！」
「よし、次はおれと」
　子供たちはいつの間にかアマタロウと仲良くなったようだ。
　天野は微笑みながらそれを見ていた。
（やっぱり子供と遊ぶほうが楽しいのかな。そういえば、子供のころこんな遊びもしたっけ……忘れてたよ）
「河童って他にも居るのかい？　他の怪異は？」
　天野の問いに答え、アマタロウは言う。
「ムカシハタクサンイタッテ。コノヘンニハ　トトヤカカシカ　イナイ。カイイッテ？」
「怪異って、妖怪とかおばけみたいなものかな。化け狐や猫又みたいな」
「シラナイ、オシエテ」
「僕が出会った怪異でよければ教えるよ」
　天野は狐やちえの実の話をする。
　刀もセンリの話をした。
　アマタロウや子供たちは興味深そうに話を聞いていた。
「ネコマタガワ、イッテミタイナ」

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