本日はカードゲーム日和｜リアクション

本日はカードゲーム日和

【カード大会その2】

　落合まゆらは、ちょっとした興味から、『エレメンツ』の大会を見物していくことにした。
「こっちはアニメ絵じゃなくて、リアル寄りなイラストなのね」
　ニャンジュとイラストの雰囲気の違いこそあったが、様々な種類のカードがあり、レア度の違いがあるなどの部分は同じようだった。
（皆、真剣な表情してるわね）
　非公式とはいえ、勝負は勝負。
　まゆらは、プレイヤー達の気迫に気おされつつも、その様子を見守ることにした。

　円の次の対戦相手は月詠だった。
「初心者だが、ルールは一通り理解したつもりだ。よろしく頼むよ」
　購入・作成したばかりのデッキを手に、月詠は小さく微笑む。
「うん。こちらこそよろしく」
　円も笑顔で応じて挨拶を交わし、二人は早速バトルをスタートする。
　数ターンが経過。
　場にいくらかマナが出そろい、戦況が動き出す。
「私のターンだね。場に水のマナを一枚。水属性の『リヴァイアサン』を召喚。冥土龍田中を攻撃。ターンエンド」
「ああ！　人事課長！」
『冥土龍田中』が『リヴァイアサン』の手で墓場に送られ、円が悲鳴を上げる。
（……人事課長？）
　まだスキルの把握が進んでいない月詠には意味がわからないが、とりあえず手ごたえはあった。
（私のデッキは水と木がメイン。『リヴァイアサン』は本命ではないが、早期に出せたのは運が良かったと思うべきかな）
　しかし、月詠の切り札は強固なタフネスを持つ水属性の『プリン』と木属性の『黄金の林檎園』のコンボだった。
（『黄金の林檎園』は任意のクリーチャを生贄に捧げることで、そのタフネスと同じ数だけのクリーチャー『アップルドラゴン』を召喚できる。大量のタフネスを持つ『プリン』を贄にして、数多のアップルドラゴンを召喚できれば――初心者の私にも勝機はある、かもね）
　もとより体験の気分で参加した大会ではあったが、どうせなら勝ちたいと思うのも人の性である。
「ボクのターン！　ドロー！　土属性のマナを一枚。そしてここで冥土龍中西を召喚――」
「あ、すまない。そのカード、バウンスで」
「なんだとぉおおおー！」
　月詠は厄介なカードを水属性の得意とするバウンス（相手の出したカードを山札に戻させる）で対応することも忘れない。
　しかし、その次の円のターンで戦況が変わった。
「ボクのターン！　ドロー！　火のマナを一枚。そして『嬢龍カテリーナ』のスキル――『FXで稼ぐわ』を発動！　コイントス！　成功！」
　その効果により、円は今度こそ『冥土龍中西』を召喚。ターンを終える。
「私のターン。ドロー。木のマナを一枚。『リヴァイアサン』と『ポイズンスライム』で『嬢龍カテリーナ』と『冥土龍中西』を攻撃――」
　と、そこで円がスキルの発動を宣言。
「『冥土龍中西』のスキルを発動。カテリーナへのダメージも中西が全て引きうける！」
「ほう」
　すると、中西は墓場送りとなり、また円のターンになる。
「ボクのターン！　ドロー！　水のマナを配置。『冥土龍田中』を召喚。田中のスキル『人事配置』で『冥土龍中西』を復活！　嬢龍カテリーナでポイズンスライムを攻撃！」
「おお」
　流れるような一連のコンボに月詠は感嘆の声を上げた。
「中西を生贄に冥土とお嬢の被害を中西が受ける！　そして！　田中の効果により中西を復活！　これぞ！　田中、中西ラインよ！」
　狙っていたコンボが決まった円が快活の声を上げる。
　そこからは、終始、円のペースでバトルは進んだ。
　月詠もアップルドラゴンを召喚するところまでは持ちこたえたものの、先に形成された田中中西ラインを突破することはできずに、先にライフをゼロにする結果となった。
「私の負け、だね。いやはや見事なコンボだったよ」
「ふふふ。ボクの方こそここぞというときにバウンスされたときはめちゃ焦ったよ。月詠ちゃん。キミ、ほんとに初めて？」
　楽しそうに問いかけてくる円に、月詠も微笑で返す。
「もちろん。ただ、先生が良かったからね」
　カード教室で、きわめてわかりやすく指導してくれた五郎八の授業を月詠は思い出す。
　さて、その五郎八は今に何をしているのかというと――。