本日はカードゲーム日和｜リアクション

本日はカードゲーム日和

【TCGの世界へようこそ】

（へー。カード教室って、結構本格的なのね）
　仙藤蒼は、思わずといったふうに、率直な感想を漏らした。
　店員に案内された小学校の教室程度の広さの一室では、すでに何人かの受講生が座っており、用意されたテキストを興味深そうにめくっていた
（無料だし、もっとテキトーな感じだと思ってたんだけど）
　隣の席には、どこか芸術家然とした少女が、まるで芸術作品を鑑賞するかのような横顔でテキストをめくっている姿があった。
（この人も、TCGは初めてみたいだけど、なんか強そう……。大会とか参加するのかしら。私も出てみようかな）
　そんなことを思いつつ、蒼もテキストをめくり始める。
　大会の開催まで、まだいくばくの時間があった。
（……やるからには、いけるところまでいかなくちゃ、よね）
　すっかりゲーマーの心に火を点けられたことに、そのときの蒼はまだ気づいていなかった。

　旅鴉月詠は、ふと思い立って、TCG教室に飛び入りで参加してみることにした。
（……『飛び入り参加歓迎』とあるしね）
　誰にとでもなく心の中で呟きながら、テキストのページをめくっていく。
「ほう……」
　思わず感嘆の吐息が漏れた。
（解説に無駄がなく、それでいて、平易な言葉で初心者にもわかりやすく書かれている。素晴らしい）
　ゲームでは、何をするにも、マナと呼ばれる5種類のエネルギーが必要になる。
　強力なクリーチャーや魔法ほど、消費するマナの量も大きく、また特定の属性のマナを必要とするクリーチャーや魔法も多いため、ある程度属性を絞ったデッキを組むのが常套手段だということらしい。
　気がつけば、最後まで読み終えていることに月詠は驚く。
（属性相性はなんとなくわかる。陰陽五行だろう？）
　とりあえず五つの属性を星形に並べて、その相関関係を頭の片隅においておく。
（私がデッキを組むとしたら――）
　まっさらな状態から自分だけの世界（デッキ）を構築するこの感覚を、その喜びを月詠はよく知っている。
（これは真っ白なキャンバスに絵を描くのと少し似ているね）
　そう考えると、デッキの理想のイメージは思ったよりも早く組み上がった。
　ほどなく登壇した、長い黒髪の教師役のスタッフ――八重崎五郎八の授業が終わると、月詠はやおら挙手をする。
「先生」
「はい。なんですか？」
「この後、大会があると聞いているが、そちらに参加するために必要なスターターパックとやらはどこかな？」
　その問いに、五郎八は我が意を得たりとばかりに微笑し、
「もちろん、この後、すぐにご案内させて頂きますね。受講して頂いた方には、このあと30分間、各種パックの特別割引もさせて頂きますよ♪」
　と、会心の笑みを浮かべて言った。
　かくして、また一人、「エレメンツ＆ドレイクス」の世界に新たな召喚者が誕生したことになる。

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