本日はカードゲーム日和｜リアクション

本日はカードゲーム日和

【カード大会その1】

　いよいよ大会が始まろうとしていた。
「ふっふっふ、私のデッキが火を噴くよ」
　自慢のデッキを手に、白真白は意気揚々とテーブルに着いた。
　大会といっても、公式なものではなく、参加者は適当な席に着いて、各々にバトルを楽しむスタイルだ。
　そして、真白のテーブルの正面に座ったのは――。
「あれ？　真白ちゃんだ」
「あ、円ちゃん！」
　なんと友人の桜庭円であった。
「円ちゃんも「エレメンツ＆ドレイクス」やってたんだね」
「うん。といっても、昔、イラストが可愛かったら集めてたってぐらいなんだけど」
　思いも寄らぬところに同好の士がいたものだ。
　二人はさっそくバトルを開始する。

　その少し離れたテーブルでは、蒼が「野々ののこ」と一回戦を進めていた。
　初心者とはいえ、まさに鎧袖一触の秒殺で、蒼はののこに勝利した。
「負けちゃったー。でも、楽しかった！」
　負けても笑顔を忘れないののこに、蒼も思わず笑顔にさせられつつ、次の対戦相手を探す。
「おや、可愛らしいお嬢さんだね。僕は零式まさと。一つお手合わせ願えるかな」
　声をかけてきたのは、熟練者の余裕をにじませた、零式と名乗る20代の男だった。
「ええ、もちろん」
　二人はテーブルに着き、バトルを開始。
　最初の数ターンが経過した時点で、蒼は零式の実力を悟る。
「僕のターン。ドロー。フィールドに木のマナを一枚。そして、木属性の『モリゴブリン』で攻撃。ターンエンド」
　零式は、低コストのモリゴブリンを序盤から複数配置し、数に物を言わせてゴリゴリとライフを削ってくる。
（速攻型ね。でも、何か強力なカードが控えている気配もある。さすがに隙がないわね）
　だからといって、あっさりと負けてやるつもりは蒼にはない。
「私のターン。ドロー。土のマナを一枚場に。土属性のゴーレムキングを召喚。『モリゴブリン』を攻撃。ターンエンド」
　ようやく場に出せた中コストのクリーチャーで、低コストの敵を瞬殺。
「ほう」
　と、感心したような零式の声。
　しかし、蒼の耳には届いていない。彼女は今次の一手を考えることに全神経を集中していたからだ。
（さあ、ここから巻き返しよ！）
「私のターン。ドロー。火のマナを一枚場に。そして――」
　戦いは続く。

　その頃、真白と円のバトルは進んでいた。
「ボクのターン！　『ドラゴン屋敷』の効果発動！　手持ちの冥土龍二体を生贄に捧げて、『嬢龍カテリーヌ』を召喚！」
　円は水と土の『冥土龍』をベースに、さらに火の『嬢龍カテリーヌ』を組み込んだデッキを作っていた。
「そして、『嬢龍カテリーヌ』のスキル『手料理』を発動！　コイントス！」
　宣言し、円は用意されたコインを指で弾き上げる。
「失敗！　カテリーヌはステーキでなく屋敷を焼いてしまい、『ドラゴン屋敷』は消失！　ターンエンド！」
　円は屋敷を墓場に送り、ターンを終える。
　このデッキ、運に依るところが非常に多いのである。
「私のターン！　ふっふっふ。ごめんね、円ちゃん。私、揃っちゃった」
　にやり、と微笑んだ真白が効果を発動させたのは『一時的記憶喪失』。
　これは、任意のカードを山札の一番上に戻す――という効果を持つカード。
「そして、金属製の『ガチャゴン』のスキル発動！」
　スキルの効果は、山札の上から5枚のカードを引き、任意の一枚をカウンターを消費してマナを消費せずに発動できるもの。
「これで、さっき戻した高コストカードの効果『ヤヴァい彗星』を無条件で発動するよ！　効果は場に出ているクリーチャーのパワーを通常の3倍！」
「……にゃんだって？」
　その強力すぎる効果に円は耳を疑う。
　次の瞬間、パワーが3倍になった真白のクリーチャーが次々と円の召喚した龍達に襲い掛かる。
　結果、瞬く間に円のライフはゼロになり、戦いは真白の勝利に終わった。
「あー、負けちゃったかー。やっぱり真白ちゃん強いねぇ」
「ふっふっふ。ありがとう。でも、勝負は時の運だよ。このデッキは特に、ね」
　こうしてバトルは終わり、二人は握手をして次の相手を探し始めた。

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