本日はカードゲーム日和｜リアクション

本日はカードゲーム日和

【カード大会その3】
「いやー。まさか、ここで善場店長と対戦することになるとは思いませんでしたよー」
「ははは。俺もだよ、五郎八ちゃん」
　五郎八は、店長に頼んでこっそりと大会に参加し、偶然参加していた善場模型店店長の善場義春と、なごやかなムードで対戦を続けていた。
（店長に頼んで、大会に参加させてもらうことになったはいいけど、まさかここで善場さんと戦うことになるとは、ね）
　趣味を嗜む者同士の縁とは因果なものだ、と五郎八は思う。
　五郎八はこの『エレメンツ＆ドレイクス』については公式大会に欠かさず出場しているほどの熟練者である。
　もっとも公式大会ではないし、肩ひじ張らずに気楽に楽しむつもりで参加したのだが。
「ところで、善場さんは、『エレメンツ＆ドレイクス』歴はどのくらいなんですか？」
「いや、じつは恥ずかしながらカードゲームはからっきしでね。なにせカード代で出費がかさむからね」
「ああ……」
　思わず納得の息を漏らす五郎八。
　確かに、TCGというものは、往々にして金がかかる。特に『エレメンツ＆ドレイクス』のように長い歴史を持つゲームならなおさらだ。
「だから、今日は五郎八ちゃんに胸を借りるつもりで頑張るよ。お手柔らかにね」
「ふふふ」
　お手柔らかに、という言葉に五郎八は微笑で返す。是とも否ともとれる曖昧な微笑で。
　ターンは進む。
「ところで、善場さんは知ってます？」
「うん？」
「このゲームのクリーチャーは皆、姿はどうあれ機械でも人でも虫や動物でも『ドレイク』……つまりは『竜』って呼ばれてる設定という設定があるんですよー」
　和やかに話しつつ、五郎八はマナ・イベントカード・クリーチャーを迷いなく場に出しながらターンを進める。
「へぇ、そうなのか。そういった『設定』って、玩具を楽しむうえで重要だよなぁ」
　善場はうんうんと頷く。
　彼もまた『からっきし』とは言いつつも、玩具を愛する者として、それなりの布陣を場に敷いてくる。
「……そんな『竜』の中でも……私達が良く知ってる姿の所謂『ドラゴン』は『真竜』って呼ばれてるんです」
　五郎八は続ける。
「つまり私の『相棒』はその名の通り竜の中の竜……更にその王」
　だんだんと声のトーンが変わってくる。
「……五郎八ちゃん？」
　思わず善場がそう問いかける。
「――私のターン。ドロー。地のマナを場に一枚。そして、『真竜王ドレイクザドレイク』を召喚」
「あ……」
　くすり、と五郎八は微笑んで、『真竜王』に攻撃を命じる。
「王の姿を見せてあげる……なんてね」
　五郎八の勝利が決定したのは、その瞬間のことである。

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