御代金は課題です｜リアクション

御代金は課題です

「こちらどうぞー！」
「うわっ、びっくりしたっ」

　仙藤蒼が学校からの帰り道を歩いていると、突然誰かに声をかけられる。
　ビクッと蒼が驚くがそれも当然だろう。何故なら周囲には蒼以外誰もいなかった筈なのだから。だけど、声をかけられた方を向けばそこには一人の少女がいるのだ。

「……え、いつのまに？」
「ゲームセンター『ターゲット』やってまーす！」

　しかし、少女は蒼の問いには答えずに代わりにビラを渡してくる。

「え？　ゲームセンター？」

　蒼はジャンルを問わないゲーム好きであり、ゲームセンターにもそれなりに通っている。だから、近くのゲームセンターの事ならば知っているのだが『ターゲット』なんて言うゲームセンターには聞き覚えがなかった。

「新しくできたのかなぁ……」

　けど、そこでこのビラの不可思議な点に気付いた。このビラには店がどこにあるかという情報が何もないのだ。これでは例え興味があっても行く事なんてできやしない。
　ミスなのかなと蒼は考えるが、それにしたって何もないのは不自然だ。まるで意図的にそうしているとしか思えない。

「ねぇ。この店って……あれ？」

　仕方なくビラ配りの少女に尋ねようと考えて蒼が顔を上げればそこには誰もいない。代わりにゲームセンターらしき店の入り口があった。

「ゲームセンター『ターゲット』……」

　店先に出ている看板にはそう描かれている。どうやらこのビラの店のようだが、一体何がどうなっているのか解らない。
　だけど、蒼はすっかりゲームがしたくなってしまっている自分に気付いている。元々がゲーム好きなのだ。その衝動に逆らうという選択肢はなく、そのまま店の中へと消えていった。

「ふぅん。プレイするには店の中に隠されている二つの宝箱を見つける必要があるわけね」

　そして、その宝箱がある場所のヒントが『腕と穴があるところ』『銃とゾンビ』『船と女の子』『空気と円盤』『お金とメダル』だ。

「よし。じゃあ、まずは腕と穴のところに行こう」

　どうやら蒼はヒントから既に大体の場所を把握しているようだ。伊達にゲームセンターでも様々なゲームをプレイしていないという事だろうか。
　最初に蒼が向かったのはUFOキャッチャー。このゲームセンターで腕と穴があるところと言えばこれだろうと判断したのだ。つまり、景品を掴む為のクレーンアームと景品を入れる為の穴の事だと。
　そして、その予想は見事に当たり、景品の中に宝箱を見つける事ができたので早速回収してゲットをする。

「次は『お金とメダル』。ゲームセンターでメダルと言えば……やはりメダルゲームよねぇ」

　そう呟き視線を巡らせればメダルゲームの区画を発見したようだ。
　早速そちらに歩いていって幾つかあるメダルゲームを確認していくと目当てのものを見つける事に成功する。

「ルーレットの景品に宝箱ってあるわね」

　ルーレットとなると運も絡んでくるが運にも勝ってこそのゲーマー。臆することなく椅子に座りルーレットへの挑戦を開始する。
　結果として多少手こずりはしたものの交換に必要なメダルをゲットして宝箱と無事交換完了だ。

「これで条件自体はクリアしたけど……うん。折角だから他の三つもクリアしちゃおう」

　ただクリアをするのではない。パーフェクトに条件を達成してこそだと蒼は考えたようだ。その拘りこそがゲーマーである証だろうか。

「まずは銃とゾンビ。もうこの組み合わせならアレしかあり得ないでしょ」

　ゲームセンターに来たら蒼も良くプレイするゲーム。銃型のコントローラーでゾンビを撃つシューティングゲームの事だ。

「よーし。今日はもう時間いっぱいまでここで遊び尽くすぞー！」

　この言葉通りに蒼がこのゲームセンターを去ったのはそれからかなりの時間が経っての事であった。

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