御代金は課題です｜リアクション

御代金は課題です

　楠瑠璃が街を歩いていたらつい貰った一枚のビラ。それは『白熊』という服屋のものだったのだが、どういうわけかいつの間にかその『白熊』へと来てしまっていた。

「何か良く解らない内に来ちゃったけど、随分品揃え豊富だねぇ」

　何やら不思議な服屋だが、中にお客さんは驚くほどにいない。これだけ商品が充実しているのにそんな事あるのだろうか。
　そんな疑問を抱えつつも瑠璃が店内を歩き回っていると、奥の方に何やらただの服屋にはけしてない筈のものがあった。

「え、何でステージ？」
「この店ではそこでファッションショーをして頂く事がお代なのですよ」

　いつの間に瑠璃の傍に来ていたのか、そう告げるのはこの店の店員らしき男性。

「それってつまり私もって事？」
「その通りでございます。して頂ければお好きな服を差し上げる事ができます」
「ふぅん。ちょっと恥ずかしいけど、でもまぁ、それで好きな服を選べるなら悪くはないかな」

　ファッションショーと聞いて、何かしらの衣装を着てちょっと歩くだけ。瑠璃はそんな風に考えていたが、後にそれが誤りであった事に気づく。だが、気付いた時にはもう遅いのである。

「はぁっ！？　着る衣装ってこれ！？」

　着る衣装として用意されたものを見て驚きを露わにする瑠璃。
　何と衣装とはメイド服だったのだ。しかも創作でありがちな肩や背中、そして胸部分の上半分くらいが露出しているタイプだ。瑠璃はFカップとかなりの巨乳を誇る為にこれを着ると中々に大変な事になる事だろう。

「はぁ、仕方ない……」

　だが、一度やると言ってしまったからにはやるしかない。覚悟を決めた瑠璃はそのメイド服を着てステージへと出ていく。
　しかし、そこでステージ下にいる観客がカメラやらを構えているのを見て、嫌な予感が過る。。

（もしかしてこれ、ただ歩くだけじゃダメなパターン？）

　今更過ぎるがその考えは正しい。すぐに瑠璃へとスカートの裾を摘まんで中世の貴族の淑女がしていたような礼のポーズをして欲しいという指令が下される。
　幸いな事にスカートは長いので摘まんで持ち上げてもパンツが見えるような事はないのだが、胸は相当な露出をしている。礼の為に前屈みになればそれが余計強調される事だろう。
　指示した側はきっとそれ狙いなのだろうが、ここまで来た以上はしないわけにはいかない。頭の中でイメージしたポーズを何とか再現する瑠璃。

（とんでもない店にきたしまったわね……）

　それでも何とか指令を達成してカメラのフラッシュに晒されるのを我慢して、ステージ裾へと戻っていく。
　何とかなったかと息を吐いたのも一瞬。今度は別の衣装でお願いしますと告げられる。

「えっ！？　着るのって一つだけじゃないのっ！？」
「はい。今度はこちらでございます」
「……えっ！？」

　店員が指し示している方を見てみれば、そこにあるのは驚きの衣装であった。

（んんっ。歩くのに支障はないけど……ちょっとパツンパツン過ぎない？）

　そう思いながら歩いている瑠璃が着ているのは修道服だ。それも良くある身体のラインが出るタイプである。
　一体どこがパツンパツンなのか。それは一目で誰でもどこのか解る事だろう。大きく育ったお胸とお尻に張り付くように身体のラインが出ているのだから。
　今回着ている衣装は最初のメイド服に比べれば露出度は減っている。しかし、エロさで言えばこちらの方が上かもしれない。

　瑠璃がステージの上を歩く度に興奮の歓声とあまりにもギトギトした熱が籠った視線がステージに届けられる。瑠璃の歩みと共にその巨峰が揺れるからだ。
　そして、再び言い渡されるポージングの指示。手を頭の後ろで組んで胸を強調するようなポーズと魔法の杖のような見た目の杖を持って後ろを向き、まるでお尻を突き出すようなポーズの要求だ。
　パツンパツンな修道服を着ている事からの選択なのだろうが、瑠璃からすれば恥ずかしい事この上ない。

（……終わったら本当に好きなだけ店の中探して服を選んで帰ってやるわ）

　内心の決意通り、瑠璃はファッションショーが終わった後にたっぷりと時間をかけて服を選んで帰るのだった。

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