占い少女のクリスマス｜リアクション

占い少女のクリスマス

◆占い少女と悩める少年

「それでね、アドバイス通り告白してみたら付き合えたの！」
「うそー、偶然でしょー」
「偶然じゃないって、当たったの占いが！」

　放課後の寝子高では、女子生徒が何やらうわさ話をしていた。というのも、旧市街にはイムイムという少女がいて、食べ物を奢ると占いをするらしい。それを耳にした滝原レオンは歩きながら悩み悩み、しかしその足は旧市街へと向かっている。心を決めたレオンは、

「行ってみるか」

　と呟き、喫茶店のドアを開けた。カランカランとドアベルが鳴る。店内の一角にその少女は居た。ちょうど前の客が出たようで、カードを整えている。

「えーっと……イムイムってのはお前？」
「ん？　そうなのだ。いらっしゃいませなのだ。……座ってくれ」

　彼女の向かいに座ったレオンは、メニューを開きながら口を開いた。

「ちょっと占って欲しいことがあるんだが……何が食べたい？」
「そうだな……ドリアが食べたいのだ！」

　彼は店員を呼ぶとイムイムリクエストのドリアと自分用のクリームソーダを頼む。イムイムはカードを切りながらこう訊いた。

「で、どうしたのだ？」
「占って欲しいのは……その、俺の将来の進路についてなんだが」

　レオンはお冷を一口飲んでこう続ける。

「俺、将来なりたいものってのがよく定まってなくてさ……これかなってなんとなく浮かんでる仕事はあるんだけど、ふんわりしてるっていうか……」

　と言った後、彼は声を潜めた。

「うん？　なんだ？」
「最初はデザイナーとか服飾系の仕事かなって思ってて、高校も服飾専攻にしたんだけどさ……最近、その、いろいろあってモデルとかもいいなって……思って……」

　耳を近づけてくるイムイムに戸惑いつつ、レオンは説明した。そうしていると注文していたドリアとクリームソーダが届く。イムイムは彼の話を聞きながらドリアに手を付けた。

「……どっちに進むべきか、それともどっちでもない別の道に進むべきか、占って欲しいんだ」

　それを最後まで聞くとイムイムはゴクリとドリアを飲み込み、なんだか神妙な面持ちになり、懐からカードを取り出しては机の上に並べていく。レオンがカードを繰る彼女の手を眺めていると、イムイムは突然腕を組み、唸り始めた。

「わかったのだ！　早速占っていくのだ！　んむー……んむむむむー……」

　イムイムは何か天啓でも得たかのようにピンと立ち上がり、すぐさま座ってカードを開き始めた。彼女はＶの字に分かれたカードの中の二つ、月の絵が描かれたカードを指さして言う。

「デザイナーになった場合……不安そうにしているレオレオが見えたのだ。壁にぶつかったり、周囲の理解が得られなかったり……でも最終的に困難を乗り越えて成功するところが見えたのだ」

　イムイムは続いて、逆さの太陽が描かれたカードを指さした。

「で、モデルになった方だな……これは最初のうちはいいんだが、どこかで行き詰ってそのままになっている……みたいな未来が見えたのだ」

　レオンは彼女の言葉を黙って聞いていたが、それが途切れたのち少し考え込んでから口を開く。

「……なるほど、そう出たのか」
「うむ。でも、運命は変わることがあるのだ。未来と言ってもそんなに遠い未来まで見えたわけじゃないのだ、モデルになった後も成功が待っているかもしれないのだ。大事なことだから、参考程度に聞いてほしいのだ」

　彼はクリームソーダを飲み干すと、席を立った。

「ありがとう、なんかすっきりしたよ」
「どういたしましてなのだ！」

　イムイムは手を振りながら去っていく彼を見送った。そうしていると視界の端に新たな客が見える。

「お？　次の人、どうぞなのだー」

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