携帯戦記カプセルギア　外伝「悪、顕現。ギアの命、その重みは」｜リアクション

携帯戦記カプセルギア　外伝「悪、顕現。ギアの命、その重みは」

●●●後日談●●●

　あれから各部屋の水を抜き、広場を隔てたアクリル板をしまい、それぞれのカプギアを回収した。
　そして、カプギア以外のネットワークや電話が繋がるようになり、消防車や救急車が到着。
　屋敷を出た人々に円と真白、蒼は声をかけて回り、カプギアを抱きながら運ばれていった。

　事情の説明に澪と凜太郎が名乗りを上げ、スピカが凜太郎の後を追う。
　詳細を聞いた隊員は半信半疑と言った様子だったが、皆が口をそろえて同意した。
　そのため、ここにいる人への追及はされずに済み、無事な人たちはそこで解散となった。

　一通りの対応が終わってから、一息つけたスピカと凜太郎は人目を気にせずたっぷりと抱擁しあう。
　蒼は協力してくれた人たちと帰路につき、円と真白は一緒に子供のフォローを積極的に行なっていた。
　澪は一人、脱出したと思われる方向を見やり、『うま』の行方と今後を思い耽る。

「倒される程度の小物なら興味はないが」

　小雪でも降りそうな夕暮れに、不敵な笑みを作りながら空に白い息を吹きかけた。

　そして、脱出に成功した『うま』はさほど人気がない所に着いた脱出ポッドから顔をのぞかせる。

「……追っては、こない…か…？」

　フツウでは扱えない力を使い、自らの計画を台無しにした者たち。
　彼ら彼女らが追ってくることは十二分にあり得たが、今のところ見当たらない。
　大きなため息を一つ。そして万が一として用意していた逃走ルートを辿る。

「拠点の構築が間違っていた…とは思えない。やはりあの地域が異常だったのか？」

　駅に着いて電車に乗り、独り言をつぶやきながら出来事を思い返す。
　人を集める所までは良かったが、集める対象が間違っていたのか？
　実証実験というのはこういった予想外のことが起きるから好んでいなかった。

「今までは他人に任せりゃよかったのに。まったく…あっ」

　考え事の整理によく使っていたスマホを取り出そうとして、拠点に置いてきていることに気が付いた。
　本当に必要最低限のものしか持っていないため、メモを取れるものもない。

「何もねぇ。あーくも」

　口に出して実感した、愛機『あーく』。それも持っていないこと。
　心配はしていない、脱出ポッドが起動すればスマホと共に破壊されるよう設定してあるから。
　機体自体もまたガチャをして当てればいい。だが。

「カプギアの声…か」

　ついぞ聞こえなかった『あーく』の声。
　ただの玩具だから当たり前という理性と、苦楽を共にしてきたのに、という感情。
　研究者から見れば理性を優先することが多い。
　だが、今の彼は最強の国日本の設立を志す者。それだけに感情は無視できない。

「まぁ、今はいいや。この島には未確認生物もいるし、もう近付きたくないしな」

　誰に言うでもなく言葉を落とし、答えの出ない疑問を考え、次第に意識を手放していったのであった。

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あとがき

担当マスター：御宮久
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おいおい、マジでやるのか？　やめておけって。お前の野望から遠のく行為だぞ、それは。

あーあ、あんな啖呵切っちゃったら後に戻れないぞ。

っておい、何だこの箱。外は見えるし声も聞こえるからいいけどよ、これと一緒にしてていいのか？

うーん…これはあれだ、ちょっと助力を求めようじゃねぇか。

あー、あー、マイクテストー。あ、聞こえてる？　悪い、うちのマスターが変な方向に走ってるんだ。

お前らが認めるならお前らのマスターに力を貸してくれ、頼む。

……すまん、恩に着る。お前らに何かあったら力になってやるからよ。

ふぅ、これで止められるか？　ってそんなに機械をたたくもんじゃねぇって。

もう少し紳士だったころのお前を…お。マスター達が止めに来てくれたか、助かるわ。

あれ、何あれ、俺じゃん。ちょっとちょっと聞いてないぞマスター、浮気か？　浮気なのか？？？

ちょっと見ない間に俺への愛がマスターを変えちまったのか、罪深いカプギアだぜ俺ってば。ははっ。

おう、マスター達よ、悪いのはうちのマスターだがそんなに責めないでやってくれ。

いや、いっそ根性叩き直してもらったほうがいいな、そうしよう。

あーなんだっけあれ、緊急のときに入るやつ。爆発で遠くに行くんだよな。俺はここで待ってればいいのか？

おー、飛んでった飛んでった。悪かったな、マスター達、お前ら。おかげでちょっとは頭を冷やすだろうよ。

ん？　なんだ？　機械が次々に爆発して、大切なデータが入ってるんじゃないか？

あ……………そうか、そういうことか。……………んだよ、別れの挨拶くらいさせろって。

悪い、お前ら、さっきの約束反故にさせてくれ。守れそうにないわ。

でかい俺も聞こえてるか分からんが、災難だったな、せっかく作ってもらったのに壊されるなんてよ。

……………じゃあな。お前らはこっちに来るんじゃないぞ。

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