携帯戦記カプセルギア　外伝「悪、顕現。ギアの命、その重みは」｜リアクション

携帯戦記カプセルギア　外伝「悪、顕現。ギアの命、その重みは」

●●●終局にして幕引き●●●

　大きな音が各部屋と広場にも響き渡り、加えてざばざばと部屋への水量が増やされていっていた。
　損中でも広場では生き残りをかけた苛烈なカプギアバトルが繰り返されている。

　回復が得意なカプギアが突出したと見て歩みを進めた敵性カプギアは次の瞬間、
　トライアルγのLアーム、ライラプス・CWC2Lから放たれるビームの餌食となり、

　トライアルγが意図的に作った隙にカラフルなカプギアが放った矢は届くこと無く、
　FX2AR-ES/D+1のシールドに当たり、直後に召喚された攻性デコイの攻撃と別方向からの攻撃が炸裂。

　そうしてスピカが操るトライアルγは時に辛辣に、時に静謐に、敵性カプギアを減らしていた。
　もちろんトライアルγだけではなく、他のカプギアも倒されぬよう、命が尽きぬよう、行動している。
　攻撃、防御、回避、回復…それぞれの特徴を最大限発揮し、少しの睨み合いの時が訪れる。

「…」

　少しだけ吐息を吐き出したスピカは胸ポケットの端末を抱くように肩を寄せ、蒼は寒っ…と肩を震わせた。
　それも無理はない、台に出来るものはスピカに譲り、蒼の胸辺りにまで水が入ってきているのだ。
　普段からゲームをやり込んでいる蒼であってもこの状況でプレイし続ける経験は少ないだろう。

「はぁ…明らかに水量上がってるし、最終手段も考えないと…」

　そんなことを吐きながら睨み合いを真っ先に打ち破るため、蒼はDiablo Azulに指示を出す。
　高火力かつ広範囲の攻撃ができ、かつ他カプギアを盾にできる技を持つ敵性の緋色のカプギア。
　味方側の動かなくなったカプギアも増えたが、Diablo Azulに呼応するように動くカプギアも少なくない。

　緑色や黄色のオーラを授けられたDiablo Azulはボディにレーザーソードをしまい、急接近。
　最中に攻撃の正確さがオーラによって上昇した240mm中距離用無反動キャノン砲で逃げ道を制限していく。
　意図を読み取った味方カプギアは同調し、意図を汲み取れなかった敵性カプギアは誘導に乗る。

「あの攻撃はリチャージが30秒程度、直前の構えを考慮すると…」

　ぶつぶつと蒼は呟きつつ、懸命にスマホを操作する。
　Diablo Azulは臆することなく緋色のカプギアに向かい、周りにカプギアが居ない所まで追い詰めた。
　だが、緋色のカプギアは地面に両手と頭を付け、土下座のような格好になる。
　直後、地面から無数とも見える大小さまざまな岩のトゲが発生、さらにそれらから次々と火球が作られる。

「これが結構大変なんだよね…」
「…」

　うんざりと言った様子で蒼はひっきりなしにスマホを操作し、それに負けぬぐらい両手を動かすスピカ。
　空色のカプギアが範囲防御を展開するとDiablo Azul、そして同調したカプギアはの中に入ってやり過ごす。
　射程外に居たトライアルγは効果切れのタイミングを見計らい、ライラプス・CWC2Lのチャージを溜める。

　長い銃を持った味方は緋色のカプギアではなく、横やりを入れそうな敵性カプギアの牽制を行なっている。
　牽制とは言え、容赦なく体力ゲージを減らすうえ、ヘッド装備を中心に狙い、近付かせない。
　時折反撃をして来る敵性カプギアがいるが、トライアルγやDiablo Azul達には届かない。

「あーやっぱり防ぎきれないか。微妙…」

　空色のカプギアの範囲防御が解けつつあるが、攻撃はもう少し続くことが見えている蒼は呟く。
　それを聞いてか聞かずか、スピカはトライアルγにデコイの召喚を指示。
　隊列を組んだデコイは次々に火球を受け倒れていくが、1体が空色のカプギアの前に到着し、火球を受ける。

「！　ありがと！」
「…うん」

　貫通能力のない攻撃であるため、範囲防御へのダメージは1発分軽減され、ギリギリ耐えきることができた。
　それが分かった蒼は礼を言い、聞こえるか分からないほどの声の小ささでスピカは頷く。
　次の瞬間には二人とも意識を広場に移し、トライアルγのライラプス・CWC2Lからビームが射出される。

　攻撃の直後であった緋色のカプギアはトライアルγのビームを受けつつも逃げることに成功する。
　だが、逃げた先に居たDiablo Azulのレーザーソードが緋色のカプギアのボディを貫く。
　体力ゲージが僅かに残ったものの、後続のカプギアの攻撃にその活動を停止した。

　残る敵性カプギアは…と武器を構えなおしたDiablo Azul、トライアルγ。
　しかし唐突に画面に映った「Congratulation！」と共に操作不能となり、先ほどのような大きな音が響いた。

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