●●●
「なぁ、お前のところには来た?」
「来た来た! 絶対行くよ!」
「だよな!」
からりと晴れた日のこと、いつもは少し静かな教室が熱狂に包まれていた。
彼ら彼女らが持っているのはライトブルーの封筒と便箋。
あて先は本人に対してであり、内容は。
「『見込みがありますので、シークレットイベントに招待します』だぜ!?」
「『一流のギアマスター様へ』っていうのがまたいいよね!」
自らの10cm程度の小さなロボット―――カプセルギアを頬ずりして嬉しそうに言う。
カプセルギアで遊んでいない子たちも熱狂が伝播したのか、口々におめでとうと賛辞を贈る。
「…そんなに『一流のギアマスター』っているものなのかな?」
一人から小さな不安がこぼれたが、熱狂の中にかき消えてしまう。
そのうち先生がやってきて、熱狂を諫めつつ授業という日常に身を投じていく学生たち。
●●●
日は巡り、シークレットイベントが行われるという場所にたどり着くギアマスター達。
タッチパネルで招待状をスキャンするとそれぞれの部屋へと案内されるとすでに数名が居た。
性別も年齢もバラバラで、少し縮こまるように隅に座ると部屋の一面が無かった。
その先に広がるのは少し開けた広場になっており、奥には同じような集団が見える。
「あの、これって…?」
「さぁ…。私たちもさっき来たばかりだから分からないのよね」
そうこうしていると、ピー、というノイズが走り壁一面にあったモニターが付く。
映ったのは高身長の黒髪、少し加齢を感じさせる姿の男で画面下部には『うま』と書かれている。
『よぉ! ギアマスター諸君! こういった形で挨拶になったのをまずは詫びるぜ』
気前が良さそうな優男が笑いながら言う。
『早速で悪いが、これから招待した面々とバトルしてもらう。一流のギアマスターなら受けるよな?』
そう言われ、指定された広場の入り口付近に次々とカプセルギアを置いていく。
何かしら確認する方法があったのか、よしよし、と頷く『うま』。
するとカプセルギアとギアマスターの間に透明な板が勢いよく飛び出してきて寸断されてしまう。
「えっ!?」
『心配しなくていい、上のモニターに君らのヘッド装備から見える風景を映している』
「そんなことじゃないよ!」
誰かが叫ぶが、当然返答は返ってこない。
舌打ちをしながら足を床に叩きつけると、ばしゃり、と音がした。いつの間にか水が張っている。
『誰か一人、最強のギアマスターが決まるまで、その水は増え続けるぜ』
唖然となっているギアマスター達に態度が変わらない『うま』が説明を始めた。
『それとここで倒されたギアは一生操作できなくなるからな、良く考えろよ』
ギアマスターの命を優先するか、カプセルギアの命を優先するか、さも何でもないことのように言い放つ。
他にバトルはいつも通り、透明な板や部屋に何かしようとすると水の量を増やすことなどを付け加え笑う。
『一流のギアマスターってのはギアと心をつなぎ合わせるもんだ。期待してるぜ? 未確認生物たち』
その一言を言い終えるとモニターは切れ、それぞれの風景を映し出し始めた。
「う、うわあぁああああ!」
「やめ、やめろっ! 落ち着けっ!」
文字通り生死をかけてしまうこの戦いに、発狂者が出るのは必然であった。
スマホを操作し手近のギアを攻撃し始めるのをギアとギアマスターが止める。
●●●
「…計画はここでやっと半分か。悪いが人柱になってもらうぜ」
別室の『うま』は阿鼻叫喚のギアマスターたちをモニターで確認しつつ、一呼吸入れる。
椅子をくるりと回転させ、会場となっている屋敷の監視カメラを見る。
どうやって頑丈なはずの部屋から抜け出したのか分からないが、この部屋を探している様子の者たち。
「規格外にもほどがあんだろ。絶対人間じゃねぇぞ」
軽口を一つ叩きながら『防衛』というボタンを押す。
すると隣に並べられていたものすごい数のスマホとそれをタッチする機械の手が動き始める。
その動きと連動して各廊下や部屋に人間大のノーマルギアが溢れかえり、脱走者を攻撃し始める。
一撃一撃がフツウの人間にとっては必殺の強さを誇るが。
「やっぱり突破されるか。最悪、お前の出番があるぜ」
何かしらの異形の力、感知できずとも"有る"と認識した『うま』は隣のギアを軽く叩く。
それも人間より少し大きい彼のカプギア『あーく』であった。
「俺は、絶対に俺を追い出した愛光堂のやつらに軍事利用を認めさせる…」
静かに、どこか狂気を含んだ眼差しで。
「ここで人間じゃない、未確認生物の最強のギアマスターの頭脳を手に入れて!」
高らかに宣言する『うま』。
「名実共に、最強の国日本を作り上げてやる!」
目線の先のモニターにはノーマルカプギアと戦う、『もれいび』の姿があった。
●●●
「ええいっ! そっちはどうー?」
「ダメだよー…足を凍らせれば止まるけど、強いよこのノーマルギア」
『うま』が監視室から見ているもれいび達5人は技能を合わせて部屋から出られた。
しかし、次々と出現する人間大のノーマルカプセルギアに苦戦していた。
氷や風、不可視の刃などで攻撃を繰り返すも避けられたりすでにこと切れたノーマルギアを盾にされる。
ここまでか、と思った時。
(…聞こえる? 今、ボクの力を貸すね。特別なんだからね?)
直接頭に響く知らない、しかし良く馴染む声が響いた。
もれいび達は顔を合わせると聞こえた声はそれぞれ違うようだが、力を貸すというのは共通していた。
(一回だけだからね。ボク、XXXのどれかの部位の力を貸せるのは)
その言葉で、言われた名前で気が付いた、自分たちのギアであると。
もれいびが一人、思いついたがままにその力を行使する。
「わぁ!?」
自らのギアが持っていたはずの槍が出現し、体が勝手に動くとノーマルギアを数体突き破った。
文字通り破壊されたノーマルギアから火花が散り、焦げ臭さが充満する。
驚いていたもれいびだが、ノーマルギアには関係ないとでも言うように反撃される。
「ほんとに一回だけなんだ…」
もう一度槍を出そうとしたもれいびは寂しそうに、でも少しだけ嬉しそうにつぶやいた。
『カプセルギア』とは?
『携帯戦記カプセルギア』とは、頭や腕、足などを組み替えてカスタマイズできる、
全高10cm程度の小さなロボットのこと!
スマートフォンにインストールした専用アプリで、ラジコンのように自由に動かすことができます。
詳しくは、以下の『カプセルギアとは』をご覧ください。
→ 『携帯戦記カプセルギアとは』
概要
いくつかの部屋に集められた、おおよそ50名のギアマスターたち。加えて、皆さんたちです。
場所は島外の大きな屋敷の地下。
目的は大きく二つ。どちらに参加するか、【A】【B】でご指定ください。
【A】人とカプセルギアの命を守ること
ギアマスターとして、ギアバトルを行います。
こちらに参加する皆さんは、監視室から一番遠い部屋の一つに集まっている状態です。
戦場となる広場に置かれたギアとは透明な壁で寸断され、部屋の中には水がどんどん流れてきます。
水の勢いは強く、そのままだと1時間前後で人が息出来なくなります。
『うま』の言う通りならカプギアが一体になると水が止まります。
が、自分のカプギアを倒されるとスマホのアプリが消失し、カプギアを使えなくなってしまいます。
【B】の参加者がギアマスター『うま』を倒す事で復活しますが、
彼が行方をくらますと再び使えるようになる確率は低くなります。
【B】ギアマスター『うま』の暴走を止めること
ひとやもれいびとして、人間サイズのノーマルカプセルギアと戦います。
こちらに参加する皆さんは、カプギアは広場に置いてあるものの、
何らかの要因で部屋の外からスタートすることになります。
人間大のノーマルカプギアが襲ってきますが、監視室にいる『うま』の意識を止めることで、
敵カプギアの動きは止まり、部屋内の水の流入も止まります。
こちらの目的に行動するキャラクターがいない場合、騒動は2時間後に落ち着きます。
2時間経過、または【A】でカプギアが最後の一体になった場合、
『うま』は最後の一体になったカプギアおよびギアマスターを連れ去り、行方をくらませようとします。
※なおこちらに参加する場合、後述の『カプセルギアの祝福』を使うことができます。
マップは以下のような形です。
1234567891011
A□□□□□□□□□□□ □ … 壁。鉄板が埋め込まれており、フツウでは中々壊せない。
B□┌──☆□┌脱□ポ□ ☆ … キャラクター初期位置。
C□│■■☆■■│監監□ ■ … 部屋。広場との間に透明な板が設置されている。
D□│□広広広□│監監□ 脱 … 脱走者。もれいびの5名はここで足止めを食らっています。
E□├■広広広■┤監監□ 広 … 広場。遮蔽物はなく、攻撃がしやすい。
F□│■広広広■│監監□ 監 … 監視室。『うま』と『あーく』がいます。
G□└┐□■┬─┘監監□ ポ … 脱出ポッド。『うま』が逃げるように用意した。
H□□└┐■│□□監監□ 入 … 入口。地上の玄関につながる階段とスキャンシステムがあります。
I□□□└─┴─┬監監□
J□□□□□□□└─入□
K□□□□□□□□□□□
登場人物 ※うまの性格以外はPL情報
・ギアマスター『うま』
学年・職業:-
性別・年齢:男・??歳
性格 :飄々としてつかみどころがないひと。ギア『あーく』を操り、公には行方知れずになっていた。
本来は用意周到に物事を整えるが今回は焦りがある様子。
また、もれいびの存在に感づいており、『未確認生物』と呼称する。
目的 :最後に残ったギアマスターを捕らえ、その頭脳を使って新たなAIを作り出そうとしている。
・参加者たち(NPC)
人数 :老若男女50名
戦法・状況:30名がギアバトル以外の解決方法を探し、15名がギアバトルを行います。
性格 :若い人は恐慌状態に陥っているものの、大人の人は少し冷静です。
配置 :一部屋につき、10名、計5部屋に分かれています。
・脱走者たち(NPC)
人数 :5名(もれいび/同室)『うま』によってもれいびと勘付かれていたもれいびたち。
性格 :困っている人は放って置けない人達。昔ろっこんで迷惑をかけたのだとか。
戦法・状況:真っ直ぐに監視室に向かい、水の停止と部屋の解放を目指します。
ただし、人間大のノーマルギアに行く手を阻まれ、進めずにいます。
戦闘情報 ※カプセルギアの祝福以外はPL情報
・カプセルギアの祝福
声 :力を貸す旨の言葉が与えられます。これはギアごとに異なります。
性質 :一度のみ、自ら所持するカプセルギアのいずれかの技能を使うことが可能です。
デメリットのある技能の場合も反映されます。
・参加者たちの錯乱しているカプセルギア
数 :15体
種類 :装備、能力共にバラバラ。注意すべきは広域高火力攻撃を持つ2体。
回復能力を持つギアは無く、攻撃型4体、バランス型が6体。速度型が3体。
戦法・状況:連携はせず、近くのギアを襲います。
ただし、弱っている状態や攻撃を受けた直後の状態などに追撃をします。
何もしなければこのギア達が次々に他のギアを倒していきます。
・参加者たちの錯乱していないカプセルギア
数 :35名(うち15体は何らかの理由で動かない)
種類 :動けるのは火力型8体、バランス型3体、回復型2体、防御型5体、速度型2体。
戦法・状況:攻撃型と速度型は体当たりで攻撃をずらすなど、バランス型は足止めを主する。
回復型は他ギアの回復を中心に、防御型はかばうことを中心にするが範囲は狭い。
・部屋の透明な壁
戦法・状況:水族館などで使われている透明な壁。ちょっとやそっとでは壊れない。
壊された場合、各部屋に人間大のノーマルギアが乗り込みます。
・人間大のノーマルカプギア
数 :1通路につき5~10体
性質 :胸辺りに体力ゲージが存在しており、なくなると動かなくなる。
また、体力ゲージの上に特殊攻撃名が表示される。初期表示は『連携PA』。
戦術 :両腕による格闘を中心に行う。足回りが安定しており、転びにくい。
体力ゲージが20%を切ると『連携PB』に代わる。
特殊攻撃 :『連携PA』 … 『うま』以外の人間を攻撃する。
『連携PB』 … 攻撃してきた人間を捕縛し、他のノーマルギアに攻撃を任せる。
・ギアマスター『うま』
性質 :個人の戦闘能力はフツウの成人男性程度。
『あーく』の体力ゲージが50%以下になると脱出ポッドで脱出をしようとする。
脱出時、脱出ポッドの近くにある『自爆』ボタンを押すことで地下の入り口を破壊する。
戦術 :手に持つスマホで『あーく』を操り、攻撃して来る者の頭以外を狙う。
・人間大のカプセルギア『あーく』
外見 :2mほどの大きさで悪魔の羽とユニコーンの脚部が特徴的。両手には白いアクセサリー。
性質 :速度型で、防御もそこそこ。攻撃力こそ低いが、フツウの人には必殺に近い攻撃を繰り出す。
戦術 :速度を生かした一撃離脱を繰り返す。
特殊攻撃 :『ペガサスの悪魔』 … 無防備になる足踏みをするようなモーション。
その後、一定時間全身が黒くなり、速度が上昇する。
その他
Q:ギアを持っていないけど参加できる?
A:ギアの所持が前提ですので、今回の機会に相棒をゲットするのが良いと思います!
あるいはノーマルギアもございますので、よければお試しにどうぞ!
Q:年齢制限はありますか?
A:この外伝についてはございません。が、招待状の所持が前提なので、同行者というのは難しいです。
Q:年明けましたね!
A:いやほんとですよ。まだまだやり残したことが……って! クリスマスですよ!