三毛猫との遭遇｜リアクション

三毛猫との遭遇

　三宅葉月はいつものように自らの身体をゴシック・ファッションで飾り、スケッチブックと七十二色の色鉛筆を携えて島をぶらついていた。
　すると、どこからともなく現れた一匹の三毛猫が葉月の足元に纏わりついてきたのだ。よく見るとその三毛猫の額には石のようなものがある。しかも、その三毛猫の出現と同時に頭の中で妙なイメージが入ってくる。

「……ついて来て欲しい？」

　葉月には足元の三毛猫がそう言っているような気がしたのだ。いや、明確な言葉ではないが確かにそんな思念を感じる。
　一体、どこについて来いというのだろうかと葉月が疑問に思うと、三毛猫がこっちだというように離れる。そして、紅葉狩りのイメージが葉月の頭に浮かんだ。
　どうやら紅葉狩りに付き合って欲しいのだと葉月は理解する事が出来た。またどうして紅葉狩りにという疑問はあれど、とりあえずそのまま付いて行ってみるといつのまにか沢山の紅葉がある場所へと着いていた。

「これは……」

　見事な秋の空気を感じる空間。ここまでの景色はそうあるものではない。その空気を全身で感じるように葉月は静かに散策をし、時に足を止めてスケッチブックに色鉛筆を走らせたりする。
　その様子はどこか心が躍っているようにさえ感じられた。

「ん。何？」

　暫くそうしていたら、再び三毛猫から思念が飛んできた。その内容によるとどうも葉月をここに連れて来たのにはもっと別の理由があるらしい。
　沢山地面に落ちている紅葉。中でも特に多く積み重なっているところの下にはサツマイモがあるのだとか。この三毛猫はそのサツマイモを目当てにここにやって来たのだが、その目的を果たせずにいるらしい。
　何故か？　化け狸がその邪魔をしているからだ。サツマイモに興味が湧いた葉月はそのサツマイモ掘りを手伝う事に決める。

「ここの下に埋まっているのね？」

　サツマイモがあるらしい場所はすぐに発見する事が出来たので、葉月はまずは紅葉をどかそうとしてみる。
　しかし、三毛猫から事前に言われた通り紅葉が勝手に戻ってくるではないか。

「ふむ……」

　一体、どういう事なのか？　暫くどかしては観察するの繰り返しをしてみる事にすると邪魔の仕方に変化が訪れる。
　最初は紅葉を戻すだけだったというのに、紅葉がそれ以外の動きをし始めたのだ。
　具体的には葉月の服の中に紅葉が入り込んで着崩させようとしたり、紅葉が宙に浮かんだら妙な風が吹いてスカートを捲ろうとしたりだ。
　一度敢えて、少しだけ防ぐ手を緩めて服のボタンを外させて鎖骨くらいまで見せ、スカートを太ももが見えるというくらいまでに捲らせてみると明らかに不審な動きをしている紅葉がある事に葉月は気付いた。動き的に恐らく興奮しているのだろう。

（……なるほど）

　状況を理解した後、暫くは件の紅葉を無視して再び紅葉を取り除く作業にかかる。
　その頃になると、紅葉を戻す事よりも葉月へのエロ攻撃に夢中になっているようで紅葉を胸の間に挟ませようとしてきたりスカートの中に送り込もうとしてきたり大分大胆になって来ていた。きっと上手くいきそうだから調子に乗っているのだろう。
　そこに別の紅葉を取り除く振りして、件の紅葉へとそっと近づき語りかける。

「あなた、紅葉に化けているのね」

　ビクンと震える紅葉。それは普通ではありえない事だ。
　悪戯が上手くいっているからバレているなんて考えてもいなかったのだろう。
　紅葉をその細長く白い指で摘み、葉月はミステリアスな雰囲気をそのままに語る。

「イタズラしちゃだめ」

　そう語り、紅葉を話すと即座に紅葉から狸の姿へと戻った化け狸は一目散に逃げていった。

「これで良いわ。さぁ、サツマイモを掘る事にしましょう」

　狸がいなくなればサツマイモを手に入れる事なんて難しい事でもなんでもない。
　三毛猫と一緒にサツマイモを手に入れた後、紅葉を使って焼き芋を作った葉月と三毛猫は一緒にホカホカのサツマイモを楽しむのだった。

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