らっかみ！新春☆初夢宝船フェア２０２０！　～白編～｜リアクション

らっかみ！新春☆初夢宝船フェア２０２０！　～白編～

　鳴り響くのは軽やかなクリスマスソング。
　数多のクリスマスツリーが聳え立つ、クリスマスの世界。
　お一人様もお二人様もサンタの赤い服をきて幸せそうな顔して行き交うこの世界の中心には、ギフトボックスを積んだクリスマスツリーがありました。星柄やら水玉柄やらカラフルな模様とリボンに彩られた巨大なピラミッドみたいで、そのてっぺんでは金ぴかのお星様がピッカピッカと光っています。
　私――宮祀智瑜はそのツリーの前で、想い人である桐島義弘先生が来るのを待っていました。
　刺繍入りの赤いフレアスカートに、白いファーの付いた赤いケープ。赤いリボンにベルのついた髪飾りを両耳の上くらいに飾りつけ、待っている間寒くないように黄色い手袋を嵌めました。
　今宵は聖夜。
（ベツレヘムで夜通し羊の番をしていた羊飼いたちが神の子の誕生を聞いて駆け付けた夜のはずなのに、いつの間に恋する人がこんなにドキドキする日になったのでしょうか……）
　キリスト降誕にあたっては、東方の三博士が乳香、没薬、黄金を贈り物としてささげたというけれど、私のプレゼントはただただ義弘先生を想って選んだものです。
（先生……来てくれるでしょうか？）
　約束の時間はまだなのに、もう不安になっています。
　はらり、空から白いものが降ってきました。
　雪です。
　指先が冷えてきます。
　私は用意してきたプレゼントの箱を、しっかりと抱えなおしました。
　そうしてわたしはしばらく俯いていました。
　すると、高いところから声をかけてくれる人がありました。
「宮祀。待たせたか……？」
　顔を上げれば、背が高くてワインレッド色のスーツに緑のネクタイを締めた眼鏡の男性が、申し訳なさそうに立っています。義弘先生です！
　私ははっとして時計を見遣りました。時間ぴったり。先生は遅れてなんかいません。
　ずっと待っていた、なんて言えません。
　それどころか、来てくれただけでとっても嬉しく、浮かび上がってしまいそうな気持ちです。
「義弘先生、メリークリスマスです！」
　私は先生に、水色の包装紙にピンクのリボンを掛けたギフトボックスを差し出しました。
　先生は、教師と生徒としてどうのこうのとごにょごにょ言いましたが、そんなことでは引き下がれません。
「義弘先生、私は今、生徒である前にサンタクロースですよ？」

　先生は私のプレゼントを受け取ってくれました。
　照れた様子で鼻の頭を掻いて言います。
「開けてもいいか？」
「勿論どうぞ」
　私からのプレゼント、それは、大きな苺の乗ったショートケーキでした。
「これは……ひとりでは食べきれないな」
　そう言って先生は、にこ、と私に笑いかけました。
「一緒に食べるか、宮祀」
「はいっ！」
　そう答えない選択肢が私にあるでしょうか？
　真っ白い雪がはらはら降る中、ツリーの端っこを構成しているオレンジ色で星模様の大きな箱に腰かけて、私達はいっしょにケーキを食べました。
　とっても甘くて幸せです。
　私はちょっぴり悪戯心を起こして、ケーキの上に乗っていた大きく真っ赤な苺の実を摘まみ、
「先生、はい、あーん」
　とお口の方へ近づけました。
「な……」
　一瞬鼻白んだ義弘先生でしたが、この状況で拒否する必要もないと思ったのでしょう。
　素直に口を開けたので、私は彼のお口の中へ苺をぽいっ。
「……美味しいですか？」
　一秒だって目を離すのが惜しくて私がじっと見つめていると、先生の顔はサンタの橇引くトナカイの鼻みたいにみるみる真っ赤になりました。
「うむ。甘酸っぱくて、瑞々しい苺だな。……ああそうだ、私からもプレゼントがある」
　先生は後ろ手に持っていたものを取り出しました。
「何でしょう……ドキドキします」
「ああ。ドキドキしてくれ」
　それは白くって、赤いリボンが掛かっています。
「冬休みの間じゅう楽しめるぞ」
　白くって……赤いリボンが……え、まさか……。
「数学の問題プリントの束っっっ！？！？」
　なんて、色気がないんでしょう！！
　義弘先生らしいと思いつつ、私の気はすうっと遠のいていきました――……。