らっかみ！新春☆初夢宝船フェア２０２０！　～白編～｜リアクション

らっかみ！新春☆初夢宝船フェア２０２０！　～白編～

　あちしパティ・ポップと申しまちゅ。
　大きなドブネズミやってまちゅ。
　星幽塔は第一階層にある冒険者の宿「赤竜亭」の地下に住まいを構えておりまちて、日々楽しく過ごさせてもらってまちゅ。
　ところであちし、こう見えて冒険というやつが大好物でちて。
　今日は今日とて赤いチョッキに小袋ひとつ抱えまちて、チーズ探しの旅に出まちた。
　赤竜亭を出て裏路地の方に進みますと、貧しい通りがあちまちて、食うに困って子を手放そうかと悩んでいる母親に出くわしまちた。あちしはその母親に、
「ちょいとそっちの通りまで出て、赤竜亭って宿まで行ってごらんなちゃい。見た目は怖いが気は優しい竜人の兄妹がいるはずだから、パティ・ポップから聞いたと言って事情を話してごらんなちゃい。きっと悪いようにはならないから」
　と言いまちた。あちしを受け入れてくれてるあの竜人の兄妹なら、きっと何か食べさせてくれ、仕事の口でも探してくれることでちょう。母親は子どもの細っこい肩を抱いて、何度も何度もお礼を言って、赤竜亭の方へ歩いて行きまちた。

　さらに行くと、通りの端の煉瓦の壁に穴が開いているのを見つけまちた。人間はとても入れないようなちっこい穴で、あちしもはじめで見た穴でちゅ。あちしの胸はときめきまちた。冒険者たるもの、見たことがない穴を見つけたら、入ってみずにはいられまちぇん。
　あちしは穴をくぐりまちた。
　入り口よりも中は狭くて、あちしは腹ばいになって進みまちた。
　穴の道は、長く長く続いていまちた。
　あちしは時々休憩して、持って来たビスケットを齧りまちた。
　それでも引き返さずどんどん行くと、ぽっかり空いた空間に、小さな祠のある場所に出まちた。
　人の使う大きさの欠けたお椀が置いてあって、いい匂いのするスープが入っていまちた。
　すっかり疲れてお腹がすいていたあちしは、それをちょいとご馳走になりまちた。
　腹がくちて気が落ち着くと、人の気配がするのに気が付きまちた。
　それと、なんだかいい匂いもしまちゅ。
　あちしは祠の屋根に上り、そこから壁を蹴って登って、地上へ顔を出しまちた。

　部屋がありまちゅ。台所みたいでちゅ。同じような服を着た若い男女が鍋や皿を持って行き来してまちゅ。
　建物は古くてなんだかボロボロでちゅ。
　若い男女は鱗もなければ耳も尻尾もなくて、誰も彼もつるんつるんでちゅ。
「星幽塔っぽくないでちゅ。ここは……？」
　呟きが聞こえたわけじゃあないと思いまちゅが、男女が歌い出しまちた。

「ここは楽しい猫鳴館♪」
「年越し闇鍋楽しいな♪」
「つーかさ、大晦日も正月もここで過ごすってどうなの俺ら♪」
「悪い成績表持ってって苦虫潰したみたいな親の顔見るより気楽でいいじゃーん♪」

　どうやらあちしは猫鳴館という名前の場所に来てしまったようでちゅ。
　そこであちしは見つけまちた。
　チーズでちゅ！
　戸棚の上の、二段重ねの白くて丸い座布団みたいなものの上に、橙色の果物と一緒に、黄金色のチーズが鎮座ましましているではありまちぇんか！
　あちしは若者たちに見つからないように床を駆け抜け柱を上り、二段重ねの白い座布団に近づきまちた。
　白い座布団は『もち』という食べ物らしく、これまた齧りたくなるようないい匂いがしましたが、あちしの冒険の目的はチーズでちゅ。
　あちしはチーズを手にしまちた。
　宝物にたどり着いた感動がこみ上げてきて、高々とそれをもちあげまちた！

　そのとき、ボーン！　と柱時計が鳴りまちた。
　その途端、若者たちが
「あけましておめでとうございます！！」
「今年もよろしくお願いします！」
　と言い合いまちた。
　だから、あちしも真似して言ってみるのでちゅ。

「あけまちて、おめでとうでちゅ！　ことちも、よろちくおねがいちまちゅー！！」

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