【期末テスト】赤点？満点？？寒風、四日間の死線＜物語編＞｜リアクション

【期末テスト】赤点？満点？？寒風、四日間の死線＜物語編＞

〇四日目

　羽生碧南は、寒いのが苦手でした。
　去年の今ごろもたいがい寒かったけれど、今年はそれに輪をかけてひどいことになっています。
（テスト最終日はきっととんでもないことになってるかも……）
　と悪い予感がしましたが、それにしても。
「……朝起きたら猛吹雪ってどういうことよ？　テスト云々以前に、登校すらできないんじゃない？」
　しかしそれにもかかわらず、学校からは『今日も予定通りテスト実施します』との連絡が……。
　桜花寮の面々はそれにマジで憤っていました。
（とはいえ、行かなきゃ赤点だし、追試や補講で冬休みがつぶれるのも嫌）
　そんなわけで寝子高までの、それほど遠くはない通い路へ踏み出しましたが──
「寒い！　顔が冷たい……凍っちゃう！　もうやだ……」
　普段なら大して時間もかからないはずなのに、吹雪のせいで異様に時間がかかってしまいました。

　結局、教室へたどり着いたのは試験開始10分前。
（テスト前最後にノートの見直しとかしたかったのに……）
　満足にノートを見る余裕もなく理科のテストの時間となってしまい、碧南はもう涙目です。
（これはもう赤点覚悟か……こんなことなら日頃からもっと勉強しとくんだった……ゲームの時間を削ってでも）
　と思ったその時。
　奇跡が起こりました。
『君ならできるよ』
『大丈夫大丈夫、あー、この問題はね』
　突如脳内に、乙女ゲーで攻略したイケメンたちが現れたのです。
　自分を励ましに来てくれたばかりでなく、なんと今受けている理科のテストの答えを教えてくれるのです！
（うそ……こんなことって）
　もうこれだけで幸せ気分で、さっきまでの凍えそうな寒さなんてちっとも感じなくなりました。
（それどころか身も心も熱くなってきた……）

　吹雪の雪山で遭難した人は、マッチ売りの少女のように幸せな幻覚を見たり、寒さを感じなくなって服を脱ぎだしたりすると言いますが。
　そこまで重症でなかったのは幸いでした。
『さすが僕のスウィートハニー、楽勝だね』
『この調子で、ガンガン行こうぜ！』
（任せて、あなたたちがいてくれれば私はやれるわ！）
　脳内妄想に導かれ、そのまま一直線で最終日を乗り切るのでした。