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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
デェト デェト デェト！
●青い鳥
映画のチケットを２枚貰ったのをすっかり忘れていた。期限は今週末。このまま無駄にするのも心情的にどうかと思ったが、急な事で友人も捕まらない。仕方がなく１人で駅ビルに来てみた御巫 時子は、その人の多さに途方に暮れていた。
（どうしましょう……）
このままシネコンに上がるのもしんどくなってきた。その時ふっと視界に入った少し猫背の人影。間違えようのないぼさぼさ頭。
（こんな所で会えるなんて！）
心に恋というカンフル剤を注入された時子は人混みの疲れも忘れその人に駆け寄った。
「尚輝先生！」
時子は丁寧に、偶然出会った寝子高教師であり想い人でもある五十嵐 尚輝にお願いしてみた。「映画のチケットが２枚あるので一緒に観ませんか」と。勿論それに付随する様々な状況も。
時子の説明を聞いた尚輝はぼりぼりと頭を掻きながら「そういう事なら……構いませんよ。確かに無駄にするのも勿体ないですしね」と言い、穏やかに微笑む。
「ありがとうございます」
時子はトクンとその胸をときめかせながらお礼を言った。
時子は少ぅし浮かれていた。２人分のポップコーンを買ってみたりして。だって仕方ないだろう。「喉が渇くかもしれませんね。飲み物でも買いましょう」なんて尚輝が言ってくれるのだから。
２人分の飲み物と大きなポップコーンを載せたトレイを尚輝が持ち、その横を時子が歩いて２人で座席に向かう。状況を知らない人が見たら只のデートだ。だから、状況を知っている時子が浮かれてしまうのも仕方ない。
だから、失念していたのだ。この映画の内容をチェックする事を。知らなかったのだ。バリバリの恋愛映画だったなんて。
暗い館内で、時子は言葉を失っていた。大甘な恋愛映画。１人で鑑賞する時は「素敵だな」で済むのだが。
（ああもう手に汗を掻いてしまいます……）
好きな人が隣に座り、同じシーンを観ているというだけで、どうしてこんなに恥ずかしくなってしまうのか。主人公達の想いが通じた長い長いキスシーン。時子はこの時ほど周囲が暗くて良かったと思った。きっと今自分は真っ赤になっているに違いない。
私と尚輝先生はスクリーンの登場人物のように、２人の距離を０にしてはいないのに。肩が触れそうになるこの距離だけで、私はドキドキしてしまう。この肘掛けを越え、そっと貴方の手を握ったら。
（何を考えてるの私）
ちょっと大胆な思考に、時子はふるりと首を振る。映画の甘さにやられてしまったか。いや、これには訳がある。実は先程から何度か時子と尚輝の指先は触れているのである。ポップコーンを食べようとすると、タイミングが同じなのかちょいと当たってしまう。その度にお互いすみませんと小声で謝ったりして。
―――ちょっと、落ち着こう。
指先に残っている感触に心奪われながらも、時子は肘掛けにあるカップホルダーからジュースを取った。それを飲もうとした時、不意に耳元で尚輝が小さく囁いた。
「すみません御巫さん……それ、僕の」
「ひゃっ！」
思わず時子が叫ぶ。幸い映画は騒がしいシーンでその声は掻き消されたが、その拍子に時子がカップを落としそうになった。
「っと……！」
咄嗟に尚輝が手を伸ばす。そして時子の手ごと、カップを包み込んだ。
「落ちなくて良かった」
暗闇で尚輝がこちらを向いて微笑んでいる気配がする。
「す、すみません……」
今度こそ、時子は茹でだこになった。
時子にとって長く短い映画鑑賞が終わった。
素敵な映画だった。切ないシーンには涙が溢れてしまったり。主役俳優がイケメンというよりは味のあるかっこよさで、それがまた尚輝に被る所がありついつい隣を見て、やはり尚輝の方がかっこいいなんて頬を赤らめてみたり。
色々と心の忙しい時間だったのだ。
帰りはシネコンのショップに立ち寄った。すると尚輝が「ボールペンが切れてました」というので、映画に登場したボールペンを買う事にした。勿論時子も一緒に……彼女のボールペンが切れていたかは不問にしてほしい。
映画の重要なアイテムになったボールペン。青い鳥が描かれている。それをお互いが持っているだけで、映画で想いを交わし合った恋人達になれる気がした。
（嬉しい……）
時子は大事にボールペンをしまった。
「あの……今日はありがとうございました。とても楽しかったです。尚輝先生は……楽しかったですか？」
無理に誘ってしまったかも。少し不安げな時子の言葉に、尚輝が優しく微笑んだ。
「とても楽しかったですよ。……少々照れる映画でしたけど」
「！」
時子は思わず尚輝を見る。２人は少ーしだけ頬を染め、笑い合った。
―――青い鳥は、すぐ傍に。
映画のチケットを２枚貰ったのをすっかり忘れていた。期限は今週末。このまま無駄にするのも心情的にどうかと思ったが、急な事で友人も捕まらない。仕方がなく１人で駅ビルに来てみた御巫 時子は、その人の多さに途方に暮れていた。
（どうしましょう……）
このままシネコンに上がるのもしんどくなってきた。その時ふっと視界に入った少し猫背の人影。間違えようのないぼさぼさ頭。
（こんな所で会えるなんて！）
心に恋というカンフル剤を注入された時子は人混みの疲れも忘れその人に駆け寄った。
「尚輝先生！」
時子は丁寧に、偶然出会った寝子高教師であり想い人でもある五十嵐 尚輝にお願いしてみた。「映画のチケットが２枚あるので一緒に観ませんか」と。勿論それに付随する様々な状況も。
時子の説明を聞いた尚輝はぼりぼりと頭を掻きながら「そういう事なら……構いませんよ。確かに無駄にするのも勿体ないですしね」と言い、穏やかに微笑む。
「ありがとうございます」
時子はトクンとその胸をときめかせながらお礼を言った。
時子は少ぅし浮かれていた。２人分のポップコーンを買ってみたりして。だって仕方ないだろう。「喉が渇くかもしれませんね。飲み物でも買いましょう」なんて尚輝が言ってくれるのだから。
２人分の飲み物と大きなポップコーンを載せたトレイを尚輝が持ち、その横を時子が歩いて２人で座席に向かう。状況を知らない人が見たら只のデートだ。だから、状況を知っている時子が浮かれてしまうのも仕方ない。
だから、失念していたのだ。この映画の内容をチェックする事を。知らなかったのだ。バリバリの恋愛映画だったなんて。
暗い館内で、時子は言葉を失っていた。大甘な恋愛映画。１人で鑑賞する時は「素敵だな」で済むのだが。
（ああもう手に汗を掻いてしまいます……）
好きな人が隣に座り、同じシーンを観ているというだけで、どうしてこんなに恥ずかしくなってしまうのか。主人公達の想いが通じた長い長いキスシーン。時子はこの時ほど周囲が暗くて良かったと思った。きっと今自分は真っ赤になっているに違いない。
私と尚輝先生はスクリーンの登場人物のように、２人の距離を０にしてはいないのに。肩が触れそうになるこの距離だけで、私はドキドキしてしまう。この肘掛けを越え、そっと貴方の手を握ったら。
（何を考えてるの私）
ちょっと大胆な思考に、時子はふるりと首を振る。映画の甘さにやられてしまったか。いや、これには訳がある。実は先程から何度か時子と尚輝の指先は触れているのである。ポップコーンを食べようとすると、タイミングが同じなのかちょいと当たってしまう。その度にお互いすみませんと小声で謝ったりして。
―――ちょっと、落ち着こう。
指先に残っている感触に心奪われながらも、時子は肘掛けにあるカップホルダーからジュースを取った。それを飲もうとした時、不意に耳元で尚輝が小さく囁いた。
「すみません御巫さん……それ、僕の」
「ひゃっ！」
思わず時子が叫ぶ。幸い映画は騒がしいシーンでその声は掻き消されたが、その拍子に時子がカップを落としそうになった。
「っと……！」
咄嗟に尚輝が手を伸ばす。そして時子の手ごと、カップを包み込んだ。
「落ちなくて良かった」
暗闇で尚輝がこちらを向いて微笑んでいる気配がする。
「す、すみません……」
今度こそ、時子は茹でだこになった。
時子にとって長く短い映画鑑賞が終わった。
素敵な映画だった。切ないシーンには涙が溢れてしまったり。主役俳優がイケメンというよりは味のあるかっこよさで、それがまた尚輝に被る所がありついつい隣を見て、やはり尚輝の方がかっこいいなんて頬を赤らめてみたり。
色々と心の忙しい時間だったのだ。
帰りはシネコンのショップに立ち寄った。すると尚輝が「ボールペンが切れてました」というので、映画に登場したボールペンを買う事にした。勿論時子も一緒に……彼女のボールペンが切れていたかは不問にしてほしい。
映画の重要なアイテムになったボールペン。青い鳥が描かれている。それをお互いが持っているだけで、映画で想いを交わし合った恋人達になれる気がした。
時子は大事にボールペンをしまった。
「あの……今日はありがとうございました。とても楽しかったです。尚輝先生は……楽しかったですか？」
無理に誘ってしまったかも。少し不安げな時子の言葉に、尚輝が優しく微笑んだ。
「とても楽しかったですよ。……少々照れる映画でしたけど」
「！」
時子は思わず尚輝を見る。２人は少ーしだけ頬を染め、笑い合った。
―――青い鳥は、すぐ傍に。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2019年12月22日
- 参加申し込みの期限
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- 2019年12月29日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2019年12月29日 11時00分
