寝子島と星幽塔、つながる世界｜リアクション

寝子島と星幽塔、つながる世界

●これはバ美肉ですか？いいえ、本来の姿です。
【寝子島】
　アイオ・キャンドライトは驚いた。
「なんですのー！？」
　ふと気づくと、ネコシマ世界に本来の姿で来てしまっていたのだ。
「あ、またこすぷれーだ」
　と、小さな男の子がアイオを指さして言う。
「レベルたけー」
「今、耳動いてなかった？」
「さっきのキツネ、お金見て、尻尾をわっさわっさ振ってたぞー」
　道行く人々がそんなことを言いながら、アイオの姿をちらちら見つつ通り過ぎていく。
（……キツネ？　うーん。どうやら、私の他にも本来の姿のまま来てしまった人がいるみたいですわね）
　アイオはすれ違う人々の様子からそう推測する。
（つまり、この格好のままで行動しても、特に目下問題はないと……）
　刹那、キピーンとアイオの青い瞳が輝いた。
（――だとしたら、早速配信ですわーーー！）
　次の瞬間、アイオはいつも配信に使っている機材をかきあつめて、ネコ型獣人がたくさん集まっているという噂の旧市街でロケの敢行を決意した。
『キャンモーニン！　喜矢武あいおですわ！』
　いつもの挨拶もそこそこに、今回の動画の趣旨――すなわち本来の姿での配信を視聴者達に告げる。
　無論、本来の姿というのは多くの人にとってただの『設定』としか思われなかった。
　が、それはそれでアイオにとっては都合が良かった。余計な説明をしなくていい。
『なんぞ、このハイレベルなコスｗ』
『これ、ブイチュ－バーとかいうヤツ』
『俺の知っている喜矢武あいおと違う』
『今、別の配信者も似たようなのやってるｗｗｗ』
　視聴者数とコメント数は加速度的に上昇する。
（おおっ！　これは……これは凄い伸びですわーっ！）
　アイオは歌手志望だ。だから、できるだけ多くの人に、自分の歌声を届けたいといつも願っている。
　そんなアイオにとって、異世界でたくさんの人々に見て貰いながら歌えるというのは、まさに願ってもないことだった。
「みんな、温かいコメントありがとうですわ！　では、あいお、愛をこめて歌いますですわ！」
　かくして、動画配信サイトでは、同時多発的に物凄い特殊効果技術を持った配信者が多数出現する事件が起きる。あくまでも凄い特殊効果技術を持った普通の配信者が起こした出来事として。
　はからずも、これはこれで島のフツウを守ることに役立っていたが、
「ご清聴、ありがとうですわ！　それでは続けて、二曲目もいってみますわ！」
　当のアイオは全く気づかず、ただただ気持ちを込めて様々な「歌ってみた」を歌いまくった。

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