寝子島と星幽塔、つながる世界｜リアクション

寝子島と星幽塔、つながる世界

●ここは星幽塔ランド
【星幽塔】
　時間は少し遡る。
　星幽塔では、異世界に迷い込んだ二宮風太と桃井かんなが途方に暮れ始めていた。
「……どうしよう？　ボク、このまま、おうち帰れないの？」
「……ちょっと怖いこと言わないでよ」
　と、そこに通りがかったのが、星幽塔にたまたまやってきた曖浜瑠樹だった。
（あれぇ？　桃井さんに二宮君だねぇ。服が変わってないけど、いったいどうしたんだろうねぇ）
　瑠樹は不思議な状況に首を捻り、やがてふと自分の姿を見て――
（……って、オレもじつは変わってなかったよぉ！？）
　と、衝撃の事実に気づいた。
　そういえば、さっきから「塔」の中なのにスーツを着たお兄さんを見かけた気もした。
（……これは夢？　それとも、また神魂のしわざかねぇ……）
　ともかく瑠樹は様子を見ながら声をかけることにした。
「桃井さんに二宮君、こんにちはぁ。今日もいい天気だねぇ」
「あ、曖浜だ」
　最初に振り返ったのは、かんな。
クールに振る舞ってはいるが、見知った顔の出現に少しホッとしているように見える。
「……おにーちゃん、ここどこ？　ボク、迷子？」
　風太はというと、状況が飲み込めず、きょときょとおどおど。
　どうやら二人は「塔」のことを知らないようだ。
（はて。いったいどう説明したものかねぇ……）
　瑠樹が困り果てていると、かんなははたと何かに気づいたようにポンと手を打った。
「ねぇ、曖浜。これって夢なんでしょ？」
「んん？　ああ、そう。そうなんだよねぇ。ここは夢の中の遊園地、『星幽塔ランド』なんだぁ～」
　瑠樹が肯定すると、
「やっぱり。だと思った」
　かんなは我が意を得たりというように得意げな笑みを見せた。
「ほら。ここは遊園地なんだから、そんなに怖がらなくて大丈夫なんだって」
　お姉さんぶって風太に声をかけるかんな。
「……遊園地？　だったら、ボク、パンダに乗りたい」
　それに、風太も安心したのか、急に元気になってそんなことを言い始めた。
　と、そこで風太とかんながじっと瑠樹を見つめてきた。どうやらパンダに載せろと仰っているようだ。
（……パンダかぁ。パンダの獣人さんに頼んだら、載せて貰えるかねぇ）
　はたしてパンダの獣人の知り合いがいただろうかと記憶の糸を辿ろうとしたとき、瑠樹はふと気づいた。
（……あれぇ。服はほとんどそのままだけど、籠手だけ残ってるねぇ）
「うーん。パンダじゃなくて、他の動物さんでもいいかねぇ？」
「「え？」」
　目を瞬かせる二人の視線を感じつつ、瑠樹がいつもの要領で星の力を発動すると――。
「わ、空飛ぶ羊さんだ！」
　幸い、無事に力が発動し、瑠樹は騎士の光で羊を呼び出すことに成功した。
「羊さん乗ってもいい！？」
　言いながら、すでに表情が乗る気満々の風太。
「もちろんだよぉ。あ、でも、危ないから一人ずつねぇ。桃井さんは二宮君の後でいいかなぁ？」
「べ、べつに私は乗りたくないけど、どうしても乗って欲しいって言うなら……」
　と、かんなはかんなで凄く乗りたそう。
（……これなら、楽しんでもらえそうかねぇ）
　思いがけない状況ではあったが、なんとか二人に楽しんで貰えそうで、瑠樹はひそかに安堵の息をついたのだった。

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