探し求めるは虹色の桃｜リアクション

探し求めるは虹色の桃

「虹色の桃かぁ。なんだか面白そうね♪」

　伊藤美緒はある日学校にて虹色の桃の噂を耳にし、試しに探してみる事にした。
　何でもその桃を食べれば運が上がると聞いて、勝負運を是非とも上げたいと考えているようだ。

「やっぱり空から探した方が見つかり易いかな？」

　場所はエノコロ岬辺りの森のどこかとしか判明しておらず、正確な位置は現地で探す必要がある。
　件の桃が生る木自体が虹色に輝くとの事を聞き、最初からろっこんを使用する事を美緒は考えていた。
　早速と言わんばかりに拍手を打ってろっこん『金翅鳥』にて鷲の姿に変じ、空へと舞い上がる。

（それにしても、虹色の桃ってどんな味がするのかな？）

　桃とは言え虹色に輝くなんて普通ではない。未知の味にすっかり美緒の期待は膨らんでいた。
　だが、やはり一番に気になるのは運が上がるという点だろう。今度こそ、とある人物に勝つ為に何としてでも勝負運を上げてやるんだから！　と意気込む。

「……あら？」

　そうして色々と考えながら飛んでいると、不意に何かの光が見えた。
　間違いない。遠目に見えるのは虹色に輝く木だ。

「見つけた！」

　操りなれた鷲としての身体で真っ直ぐにその木を目指す。
　しかし、その直後突然強烈な向かい風が吹き始めた。

「ちょっと、進めないじゃない！」

　と、美緒が大声で文句を叫ぶもその風は一向に収まらない。寧ろ、より強くなっているような気さえしてくる。
　それでも美緒は負けてたまるかと精一杯羽ばたき少しずつ、少しずつ根気よく木へと距離を詰めていく。
　その内に美緒のその根気に負けたように風が止んだのを感じて、やった！　と喜び勇んで速度を上げればそれを見てカラスの大群が現れた。
　もしかしたら、突然現れた鷲を見て、自分達の縄張りを荒らしにやって来たと思ったのだろうか。

「え、ちょっとっ！？　何でこっちに来るのよ！？」

　幾ら鷲と言えども大群には勝てないので慌てて美緒は逃げ回る。
　このカラスの大群がいてはいつまでも木に近づけないと判断して、まずはカラスの大群を引き付けある程度木があるところから離れたら一気に加速して置いていく。
　そうしてカラスの大群から何とか逃れ、元のところに帰って来た時には既に虹色に輝く木はどこにもなかった。

「え、嘘っ！？」

　焦って周囲を探してみるもやはり虹色に輝く木はどこにも見当たらない。
　そう言えば、と美緒は思い出す。虹色の桃が生る木はある程度の時間が経つとどこかに行くのだとか。つまりこれがそういう事なのだろう。

「あ～あ。失敗しちゃったな～」

　と、残念そうに呟きながら地上へと降りて人の姿に戻る。

「もしかして、これは桃に頼らず実力で勝てという金翅鳥様のお告げかしら」

　そんな風に気を取り直す美緒。
　確かに勝つのに勝負運を必要とするというのは少し邪道と言えば邪道かもしれない。象徴たる存在ならばそんなお告げをしても不思議ではないのだろうか。

「うーん、でも味は確かめてみたかったわね」

　だけど、その一言で少し未練がある事が解ってしまうのだった。

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あとがき

担当マスター：昂祈
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昂祈です。
探し求めるは虹色の桃のリアクションをお届けいたします。

伝承とか神話とかそういうのに果実が出てくる事があります。
例えば、黄金の林檎とか仙桃とかそういうのですね。

それらには特別な効果があったりする事があるわけですが、一体味はどうなんだろうと考えた事があります。
黄金の林檎はアタランテの伝説で出てくるものだと陽動に使える程なので凄く美味しいのかもしれませんね。

さて、今回はここまでという事で。
それでは、この度のシナリオにご参加頂きありがとうございました！

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