探し求めるは虹色の桃｜リアクション

探し求めるは虹色の桃

「ふむ。光る上に場所が変わる木か……。虹色の桃というのも気になるし、探してみるか？」

　修行にもなるかもしれないしな、とそんな事を響蒼留人は考えていた。

「しかし、桃、桃か……」

　桃とは当然果物の桃の事だが、その言葉を聞いて蒼留人が連想するのは島岡雪乃教員であった。彼女は大人の女性として考えても中々に立派な胸を持っている。それ故に蒼留人は連想をしてしまったようだ。
　頭を振って浮かぶ雪乃の胸のイメージを消し、虹色の桃について無理やり思考を移行させる。
　蒼留人が聞いた噂では場所の情報はなかったが、噂の出所を探っていけばもしかしたら場所の見当がつくかもしれないと考え、早速聞き込みを開始する。
　そして――。

「おかしい、どうしてこうなった？」

　蒼留人はエノコロ岬にある灯台の丘を登りながらそんな事を呟く。

「あっ、あの、響君、どうかしましたか？」

　そんな蒼留人を妙に思ったのか横にいる雪乃が少し心配そうに尋ねる。
　そう。蒼留人の横に並んで歩いているのは蒼留人が桃と巨乳を重ね合わせて連想していた教員の雪乃だ。
　雪乃は虹色の桃を探す為に動き易いジャージで来ているのだが、どういうわけか学校で見る姿より心なしか胸が強調されているような気がするのは果たして蒼留人の気のせいなのだろうか。

「あぁ、いや、大丈夫です」
「……それなら良いんですけど」

　ついつい胸を見てしまいそうになりながら蒼留人が答える。
　すると、雪乃は少し疑問を感じている雰囲気ながらも一先ずは前を向いた。

　何故、雪乃とこうして並んで歩いているのか。
　それは情報を探っていったら雪乃に辿り着いたからだ。彼女が噂の出所というわけではなかったが一番重要な場所について知っていたという、そこまでは良い。問題は噂を聞いてから、すっかり食べてみたいという気になってしまっていたのが問題だった。
　結果として雪乃と共に虹色の桃をという事になったのは、彼女が蒼留人の横にいる事でお解り頂けるだろう。

　だいぶ高いところまできたところで肩に担いだ竹刀入りの籠を一旦降ろし、視界に見える範囲の森を隈なく見渡し始める蒼留人。
　それにならって雪乃もまた森を見始める。
　こことへとやって来たのは桃も木も虹色に輝いているならばもしかしたらその光が見えるかもしれないと考えての事だ。

「あっ。……あのっ、響君。あれをっ」
「え？」

　森のとあるところを指差す雪乃。そこには微かにだが確かに虹色に見える光があった。

　場所の見当さえつけば後はそこに行くだけ。
　蒼留人はそんな風に考えていたが、寧ろそこからが大変だった。いや、寧ろラッキーだったのだろうか。

　丘を下り森に入ってから暫くして、妙な事が起き始めたのだ。
　木の根や草が二人の行く手を邪魔なんて序の口も序の口。
　不自然な突風が吹いたかと思えば、足元に突然出現した木の根に二人とも足を取られバランスを崩す。その上、雪乃に対しては再度突風が吹いた。
　突然の事に流石に対応が遅れ、思いっきり雪乃の巨胸に顔を埋める事となった。

　その次は四方八方から襲い掛かってくる蔦の番。
　蒼留人は竹刀で何とか撃退していたが、雪乃はそうも行かず右往左往としていたら転んだ挙句にズボンが木の枝に引っかかってずり下がるという結末に。

「……お、俺は何も見ていません！」

　顔を赤くし慌ててそう宣言するも誰がどう見ても無理があるというものだ。
　雪乃のその日の下着の色は恐らく墓場まで持っていく事だろう。

　それからも沢山の大変な事がありつつも雪乃と蒼留人は何とか虹色の桃を手に入れる事に成功した。
　蒼留人の背負う籠の中には幾つかの虹色の桃が入っている。

「どんな味がするんでしょうか」

　先ほどまでの事を忘れたように味の事を気にする雪乃。
　そんな彼女に蒼留人はただ苦笑するのであった。

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