【寝子祭2nd】『Nekos・eminyas』｜リアクション

【寝子祭2nd】『Nekos・eminyas』

☆寝子祭当日にゃ！（１）

　そして、寝子祭当日。
　恵御納夏朝は、テントのように仕立てられた猫タロット占いの館の中から、喫茶店内の様子を覗き見た。
（わ、お客さん、もう来てくれてる……！）
　プチケーキどの味にしよう？　とか、タロット占いもやってるんだって！　とか。
　楽しげな声が耳に届いて、夏朝の胸をあたためた。
　休憩時間の割り振りの関係で今は接客に当たっている恵御納理沙が、
「プチケーキ、どれも可愛くておすすめよ～。占いも、興味があればぜひ～」
　と、にこやかに応対をしている声もまた、夏朝のところまで届く。
　恵御納久隆は、今は、細々とした仕事を、裏方としてこなしているはずだ。
（皆、お父さん、お母さん……本当に、ありがとう！）
　テントの中に引っ込んで、テーブルの上を見遣る。
　何度も練習を重ねた猫タロットのどこか落ち着いた佇まいが、頼もしかった。
　猫パペットのハルくんにカプセルギアのアマネも、夏朝を見守ってくれている。
（僕も、精一杯頑張るよ！）

※

「へーい、大将やってるー？」
　入口を飾る星空を思わせる布をふぁさーっとやって、店内に足を踏み入れるは旅鴉月詠。
　店の雰囲気とちぐはぐな奇抜な挨拶に店内の客の視線が集まるが、当の月詠はそれらを一向に気に留めず、
「宇宙の皆さんこんばんにゃ。どうも魔女です」
　と、至ってマイペースにご挨拶。
　クールな表情のまま両手でピースを決める月詠の姿に、ちょっとざわめく店内。
　そこへ、只今の接客係のひとりである理沙が、
「いらっしゃいませ～」
　と歩み寄り、声をかけた。鷹揚に頷く月詠。
「どうもどうも。魔女なのでくつろぎにきたよ。魔女なので」
「あらあら、あなた、魔女さんなのね～。人間の食べ物って、お口に合うかしら～？」
「ふむ。中々興味深い反応だ。これなら、クールなキャットなフェイスで来ても面白かったかな」
「まあ、猫さんにも変身できるの？　魔女さんってすごいのね～」
　フリーダムＶＳ天然。
　いや、両者とも戦っているつもりはないのだけれど。そして、めちゃくちゃ平和だけれど。
「……理沙。とりあえず、席に案内して差し上げたらどうだ」
　このままだと収拾がつかなくなるということを察してか、久隆が片付けの手を止めて言う。
「ああ、そうね、旦那様。ごめんなさいね、魔女さんが来てくれるだなんて思わなくて～」
　どうぞこちらへ、と理沙が動き出しかけたのに、
「ああいや、カフェの方はあとで堪能させてもらおう」
　と、月詠が静止の声をかける。
「あら、じゃあ、先ずは猫タロット占いをご希望かしら～？」
「うむ。私もタロット占いをする者なので、手前を拝見したい。……でも、占いの前に！」
「前に？」
「内装見させて！　宇宙色てスピリチュアル高まるよね！」
　スピリチュアル以外の何かが高まっている感じの月詠だが、
「内装に興味を持ってもらえるなんて嬉しいわ～。夏朝ちゃんも喜ぶわね～」
　と、理沙はほのぼのにっこり。
「ええっと、でも、私は他のお客さんも担当しなくちゃだから……」
「それは問題ないよ。自分で見て回れるし、勿論、他の客の邪魔にならないよう配慮もしよう」
「わかったわ～。じゃあ、どうぞごゆっくり～」
「うむ。応対に感謝する」
　かくして、理沙は接客に戻り、月詠は店内をぐるりと回り始め、
（……どうやら、無事に事が収まったようだな）
　と、２人のやり取りに若干ハラハラしながら耳を澄ませていた久隆は、密かに息を吐いた。

このページにイラストを設定する