誰か、あそぼうよー！｜リアクション

誰か、あそぼうよー！

【滝原レオンと帰ってきたそっくりさん】
　その日、滝原レオンは、散歩がてら旧市街を歩いていた。
　秋の陽は穏やかで、ぼんやりと考え事などしつつ散歩をするには最適な小春日和であった。
　というか、あまりにぼんやりとし過ぎて――
「うわっ！？」
　レオンは誰かと正面からぶつかってしまった。
「……す、すんませ……え？」
　慌てて頭を下げようとして、レオンはその目を大きく見開いた。
（お、俺がもう一人いる……！？）
　見れば、目の前にはレオンと瓜二つの姿をした青年が同じように目を見開いてこちらを見つめているではないか。
　まるで鏡を見ているような気分であったが、すぐにそうではないとレオンは気づく。
　目の前のもう自分によく似た人物は、すぐに表情を一変させて、ひどく親しげにこう話しかけてきたからだ。
「あなた、もしかしてタキハラさんですか？」
「……え？　あ、ああ。っていうか、なんで俺の名前……」
「あ、申し遅れました。わたし、マイク・ジョーンズといいますデス。じつは、少し前にネコシマに来たことがありまして――」
　マイク・ジョーンズと名乗る青年は、以前、寝子島に訪れたときに瓜二つの容姿のレオンに間違われて、色々と大変だったのだという。
「……ああ、なんというか、そりゃ悪かったな」
「イエイエ、タキハラさんは何も悪くないです。それより、ここで会ったが百年目。どうか、ネコシマを案内してもらえませんか？」
　マイクはそう言って、レオンと瓜二つの顔に人懐こい表情を浮かべた。
（……俺って、こんな表情もできるのか）
　生まれつき（？）目つきが悪く、何かと誤解されがちなレオンにとってマイクの見せた表情は何とも衝撃的なものだった。
　だから、というわけでもなかったが――。
「ああ、いいぜ。別に予定もなかったしな」
「オオ、ありがとうございます！」
　あっさり了承したレオンに、マイクはとても嬉しそうに笑った。
　それから、レオンは大観覧車や旧市街、シーサイドタウンといった寝子島の名所をマイクと一緒にまわった。
「ネコがいっぱいですね！」
「まあ、寝子島ってぐらいだからなー」
　住み慣れたレオンにとってはなんてことのない景色も、マイクにとっては新鮮なようで、特に日本オタクのマイクにとって旧市街でのはしゃぎっぷりは凄かった。
「おや、レオンちゃん、分身の術でも覚えたのかい？」
「おお、タキハラさん、じつはニンジャだったのですね！」
「いや、ちげーから！」
　近所のおばあちゃんに話しかけられたときは、自分は忍者ではないとマイクを納得させるのに十分近く費やしたものだ。
　正直、慣れない島案内は疲れる部分も多かった。
　だが、
「タキハラさん！ネコシマはやっぱりとっても素敵なところですね！」
「……ああ、まあな」
　そんなふうに言われると、まるで自分のことを褒められたようで、悪い気はしないレオンなのだった。