借り猫日和の運動会｜リアクション

借り猫日和の運動会

○お弁当！

「うわーい、お弁当だぁ！」　
　たくさん走ってお腹をすかせた瑠樹は、お弁当の蓋を開けて目を輝かせた。
「おにぎり・卵焼き・ウィンナー・ハンバーグ・ちくわの野菜詰め……お母さん、沢山作ってくれてありがとうなぁ！」
「どういたしまして。たくさん食べて頑張って」
　笑顔のお母さんに、瑠樹は言う。　
「皆と一緒に食べたいなぁ！　ちょっと行ってくるね！」　

　お弁当を持って駆け出した瑠樹は、校長先生の姿を見つけて立ち止まった。
　周りには子供達がたくさん集まっている。
「お邪魔するよぉー！　よかったら交換とかしないかねぇ？」
　シートの空きに入り込み、笑顔でお弁当を広げて見せる。
「おいしそう……でも交換するものがないよ」
　羨ましそうに覗きこんだ子はゼリー飲料を手にしていた。
「いいよぉ、分けてあげるよぉ。どれにする？」　
　瑠樹はその子が欲しいものを分けてあげた。
「ありがとう！」
「あ、いいな」
「他にも欲しい子いたらあげるよ」
　嬉しそうな声に、おかずの交換会が始まる。
「校長先生もまぜてくれるかな？」
　首を突っ込んできた校長先生のおかずには、子供達が好きそうなものがたくさん入っていた。
「うわあ、校長先生のもおいしそう！　から揚げもらってもいいかなぁ？」
　瑠樹の問いに校長先生はにっこり答えた。
「もちろん！　それじゃ先生はそのちくわを一つもらっていいかい？」
「いいよぉ！　お母さんのちくわはごぼうやにんじんも入ってておいしいよぉ！」
　校長先生はから揚げを二つくれて、他の子ともいろんなおかずを交換した瑠樹のお弁当は、ますます賑やかでおいしそうなものとなった。

「おかえりなさい」
　琳子は母と戻ってきた妹と共にお弁当を広げた。
　猫の顔のおにぎりに、肉巻き、卵焼き、ブロッコリーにプチトマト、サラダえび……等々、栄養と彩りを考えて作ったお弁当だ。
「見た？　さっきの玉入れ！」
　頑張って作ったのに妹はお弁当より話に夢中だけれど、話しながら楽しそうに食べている。
「見た見た。奏子すごい執念だったよね」
　周りの男子が悔しそうだった。
「あれで逆転したんだからね！」
　妹はミートボールをひょいと口に入れた。まだ玉入れ気分なのかもしれない。　
「かけっこも頑張ったよね」
「２位で残念だったけど、今年はかりねこもあるから！　午後一位をねらうね」
「初めて抽選に当たったのよね。あんまりワクワクしすぎても困りものよ、借り猫は甘くないしね」
「はーい」
　楽しそうな妹の姿に、午後も頑張って欲しいと思う琳子だった。

　お弁当を食べ終えてまもなく、放送が入った。
「ご観覧の皆さまにご連絡いたします。午後の競技、借り猫競走に若干空きができましたので、急ですが参加者を募集いたします。ご参加いただける方は入場門までお集まりください」
　放送を聞いた妹が琳子の手を取る。
「ねえお姉ちゃん、一緒に出ようよ」
「えっ？」
　思いがけないことに琳子は戸惑ったが。
「ねえ、いいでしょ？」
　畳みかけられると、せっかくだし……という気持ちになってくる。
「そうねえ……」

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